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ぼくはかれらをしらない

あの頃、恋をしたように惹かれた曲の話をしよう。それはとあるオルタナティブバンドの曲だった。僕が知った頃にはとうに解散していたけれど、彼らが遺した僅かな残響がファンの声となってネット上に浮かぶからそれを見ていた。1度聞いただけでも頭に強い衝撃を受けたのだけど考察や本人の綴った文章を漁るうちに本当に心臓を鷲掴みされてしまった。(鷲掴みという言葉がこれほどに似合う他の話を僕はきっと持っていない。)脳が溶けてしんでいないことが幸いと言えるだろうが、今の僕は銃を額に、耳に、心臓に充てられていて、いつ撃たれてもおかしくないのだ。彼らの綴る童話のような現実逃避が、不規則な音が、僕の両手を操って死肉を無性に貪らせる。大袈裟かもしれないけれどそんな感覚がする。

でも、僕は知らない。
あのころのかれらを知らない。

何を思って書いた曲なのか、何がかれらを"そう"させたのか、ぼくには分からない。

かれらもぼくを知らない。
ぼくがアナタの曲を貪り続けていることを知らない。

彼らは今どうしているだろうか。続きが見たかったな。

《the cabs》

the cabs 僕たちに明日はない

the cabs 二月の兵隊

the cabs  わたしたちの失敗

《urema》

urema ピアノのある部屋

urema 笑う

urema さむいさむいこおりのなか


どれも僕にとっては、幼少期の初夏の追憶に溺れるような素敵な曲たち。

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