[ʃ iː / síː]
深い海の中にいるんだ
深くてまだほんのり夕陽が差し込む蒼色の中
沈んでいく僕らを無数のプランクトンが眺めている
ここは陸じゃあないから僕らの吐く息は泡となってゆらゆらと上昇するだけだ
それを見てプランクトンたちは楽しそうに笑った
彼女の頬には光が伝ったが
見えるはずもない
ここは海なのだから
そんなことを知る由もないプランクトンたちは
右へ左へ、前へ上へと
同じ方を向いて漂う
僕らだけが、下へ、下へと堕ちてゆく
僕だけが知っている
彼女の笑顔も嗚咽も、怒りも貪りも
全部僕のものにしたかったから
だからどうか、そんなに苦しまないで
ここが嫌なら逃げてしまおうよ
もっと深い、誰も知らない深い海底へ
あまりにも無謀だって?
大丈夫だよ、何があったって僕ら手を繋いでいよう
君がゆるすなら僕は決して消えたりしないから
夏の暑さで揺らぐ頭は
夢幻の思考を巡らせる
ある筈もないくらい深い海底で息をする夢
何故だろうね
眩むような夏の気温が僕らをそうさせるのだろうか
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