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こんな事までも 侮れぬ集団心理

■「レアケースな利用者さん」


高齢者施設で勤務していた時の話です。

誰でも多かれ少なかれ、人は高齢なってくると体のどこかしらに何らかの既往症がある。
利用者さんの食後の薬を配り終えた時に、利用者さんが薬を飲んでいると
Aさんが

「私には薬はないんですかねぇ~」

私のところにいらっしゃいました。

そうなんです‼
Aさんは、大勢いる利用者さんの中で夕食時に

薬を全く飲まなくて大丈夫な方でした。

しかし、Aさんはあたりを見渡すと

利用者の皆さんが次々に薬を飲みだしたので

「私もあるはずなのに、なぜないのか?」

と思ってしまったご様子でした。

確かに、前日の夕飯までは薬はあったのですが

体の調子がよくなったので医師の指示により薬は出されなくなりました。

ご高齢になると薬の数が

「多くなること」

は結構あるのですが、Aさんの場合は

「ごくまれなケース」

でした。

■「みんなが飲んでいるのにな…」

「みんな飲んでいるのに、なぜ私だけないの…」

とAさんは心配そうに話されていました。

そのため再度

「薬が出ないのはAさんが元気になったから、お医者さんが出していないんですよ。これってすごいことなんですよ~」

と説明するも

「薬はないのか…」



肩を落としてお部屋へ戻られました。

確かにAさんは認知機能が低下していて理解するのにご本人様自身が理解するには少し時間が必要な方でした。

しかし、

「集団心理」

と言うのでしょうか?

認知機能が低下しているとは言え
周りの人の行動を見て不思議に感じるということは
ある意味しっかりされている部分もあるとも言えます。

そう思うと、過ぎてしまった事とは言え

だったらどう言えば、Aさんにとって一番腑に落ちたのかいまだに謎です。

もしかしたら、Aさんがご自宅で一人で暮らしていらしたら

「あっそう、薬ないのね」



それはそれで済んでいたことなのかもしれません。

そう考えると

やはり

集団心理

は侮れませんね。

■「ザ・日本人」

日本人は良くも悪くも集団になるとこのような心理が働きやすいと私は感じます。(私自身もそうですが…)

特に日本はAさんのように戦争を体験していらしゃる世代の方ではそのような傾向が強い傾向があります。さらに戦時中・戦後教育を受けてきた方であると

「みんなが○○だから私も✖✖でないといけない」

とか

「みんなが○○だから私だけ(自分が少々嫌でも)できるだけ✖✖を言うのは控えよう」

だから

「そういう人が控えめで良い人」

という日本人の

「暗黙の了解」

的なスピリッツがあった。
(これが後々、令和時代の多様化世代を苦しめる集団圧力になるのですが…)

確かに日本は戦後の高度経済成長期では

アメリカに追いつけ追い越せ

という風潮があり日本経済を発展させてきて海外からも一目置かれていることもある。

例えば、それはマナーの良さだ。

例えば、阪神淡路大震災や東日本大震災など数々の災害が起こった時の海外メディアからはこう賞賛されている。

海外ではそのようなことが起こると、店を襲撃して物を盗む強奪戦になるという事件が起きやすくなる国も中にはあるとのこと。
しかし、日本人はみんなが苦しくても食べ物などの支給があるとマナーを守り

「並んで待つ」

という姿勢がとられていることに注目が集まり、リスペクトされた。

海外の中には、何かをするときには

「早いもの順」

という

いわゆる「弱肉強食」

的な風土があり

そもそもが

「列をつくり並んで順番を待つ」

という概念がない国もある。

よく言えば、個人の権利が重んじられるとでもいうのだろうか…

それとも、単なる教育水準の違いなのだろうか…

文化の違いなのか…

それにしても

話は戻るが

医師がひとり一人の個人の身体に合わせた薬であるはずなのに

他の人が薬があるのに、自分がないので心配する心理って

やっぱり

「日本人だよなぁー」

と思ってしまう部分もあります。

私自身は昭和生・平成・令和を生きてきた人間なので

時々同じ日本人でもよく言えば

「礼節を重んじる風土」

悪く言えば

「目に見えぬ集団圧力」

とでもいうのだろうか…

と思い悩む部分があります。

しかし一方で他のメディアでは(私も含めて)、日本人は世界のなかでこう捉えられている。

それは、早坂 隆著 中公新書ラクレ202『世界の日本人ジョーク集』2006年9月25日16版【集団行動】・早く飛び込めの著書の中で実に的確に示されている。

少し話の前置きを説明すとこんな内容です。

ある豪華客船が航海中に沈没しだした。
船長は乗客にすぐに船から脱出して海に飛び込むように指示をしなくてはならない事態が発生。
そこで、船長は様々な国の人にどうしたら的確に指示が伝わるか

心理学的な言い方で言うと

それは

「行動変容を意識した声かけ」

をしたのでした。

アメリカ人には「飛び込めばあなたは英雄ですよ」
イギリス人には「飛び込めばあなたは紳士です」
ドイツ人には「飛び込むのがこの船の規則となっています」
イタリア人には「飛び込むと女性にもてますよ」
フランス人には「飛び込まないでください」
日本人には「みんな飛び込んでいますよ」

早坂 隆著 中公新書ラクレ202『世界の日本人ジョーク集』2006年9月25日16版
【集団行動】・早く飛び込め より 

さすがに、これを最初に読んだ時には同じ日本人ながら私も

「そうそう、そうだよなー」

「これって日本人 ある あるだよな…」

めちゃくちゃ腑に落ちた部分があることを今でも覚えている。

そして

「くすっ」


笑えた。

まさに

日本的に言うならば

これぞ

『赤信号 みんなで渡れば怖くない』の

文化ではないか‼

いや いや いや

そんな文化は海を渡らんでもよいんだが…

何ともビミョーな気持ちでもるが

この文化が海を渡ればこんな例え話になっているとは…

この時までは誰が知ったことだろうか…

あーーーーー

それにしても日本人は生まれ育った文化が

例え、高齢になり認知症になっても
しっかりと周囲を見渡して自分の変化に気が付くとは
どこまですごいのだろうか…

『恐るべし集団パワー』

というのだろうか…
























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