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それ、誤嚥性肺炎かもしれないです!

■そもそも熱がでるとはどういうこと?

特に入所施設の介護職員の仕事をしていると、利用者さんの熱発に遭遇することってありませんか?

そもそも、人が熱を出すとは体にとってどんなサインなのか?

よく、朝の申し送りなどで

「○○さん、昨晩から今朝にかけて熱が××度あります。」

というようなことを良く耳にすると思います。

熱が出るという事は、簡単に生理学的に言うと

体に炎症反応が出ているサインなんです。

■それ、誤嚥性肺炎の可能性大です

通常では様々な病気のサインで発熱症状が現れますが、高齢者の病気で最もメジャーなのが

誤嚥性肺炎です。

特に、高齢者施設では常にむせ込み症状が出ている利用者さんは
スタッフの誰もが注意深く様子観察が行われる対象という認識が強いです。
そのため、介護記録などに経過観察の様子を記載される介護員が多いです。
しかし、ノーマークの利用者さんは見た感じでは残さずお食事を自力で全量摂取されているため

「大丈夫」

スルーされてしまいがちです。

そして、実際に利用者さんが熱発された時は

「おやっ?珍しい」

と誰もが感じます。

なぜなら、普段から普通に何もなく自力摂取されて

「まさか熱なんか出ないだろう?」

と思っているからです。

よほど慣れたスタッフが夜勤に入らない限り、
熱発されていた利用者さんの食事摂取量のチェック表に記載されている

データを見る

ここから何がおこっているか予測する。

利用者さんの体の状況を判断をして医師や看護師などに連絡

救急搬送の用意を行う。

救急搬送

という判断には時間がかかります。

実際に、そうならないにこしたことはありません。

ぜひ、普段食事を自力摂取されている方がいて夜間に熱を出された場合は

⑴介護記録や食事チェック表を見る。
⑵日付をさかのぼって食事量がどうであったか再確認。
の手順で誤嚥性肺炎かもしれないと疑う目を持ちたいものです。

ちなみに、このあたりの判断は特にユニット型のワンオペ夜勤をしている介護スタッフは必須の知識です。

実際に食事介助での事故は

様々ある介助業務の中でも最も訴訟が起きやすくスタッフや事業所にもスタッフサイドにもハイリスクです。

そのため過去には新聞などのメディアでも取り上げられています。
今後は引き続き、あらためて食事をテーマにした回を取り上げて行きたいと考えいます。

■とにかく、体が食べ物を受け付けなくなる‼


通常、利用者さんが高齢になり終末期になっていくにしたがって若い頃と比較すると食事の摂取量は徐々に減り体が受け付けなくなってきます。

若いスタッフはまだピントこないかもしれませんが、強いて言うならばこんな感じです。

例えば、みなさんの中で焼き肉やスイーツ、お寿司など
何かの食べ放題に行き

元手を取ろう!



張り切った後で
めっちゃ気持ち悪くなって後悔した事がある方はいませんか?
(少なくとも食べる事が大好きな私は過去には結構ありました。)

またまた、そもそも論ですが
食べ過ぎて気持ち悪くなるとは

食べる時は

「うまいーーーーー」

とか

「もっと食べたーーーーい」

「おかわりーーーー」

という感じで

脳から快楽物質がドバドバっと放出され
じゃんじゃんと食べられる状況でもあります。

しかし

脳が食べ物を欲していても

胃や腸が

これ以上体だに食べ物を受けつけたら

ダメです!
ちょっと待ったーーーー!

気持ち悪くなることでストッパーを出す
いわゆる防御反応であります。

さらに
嚥下ができると言うこととは

きちんと喉の筋肉を使えているということ



⑵小腸に生えていて消化吸収が行われる細胞(絨毛)が機能していること

です。

当然ですが、高齢になるにつれていつかはその

筋肉だって

絨毛だって衰えていきます。

認知機能が保たれていて、ご自身の体の主症状を伝えられる方はまだしも
認知機能が低下して、自力摂取が困難でありなをかつ意思疎通が困難な利用者さんはどうでしょうか?

想像してみてください。

特に、入所施設で夜勤や遅番の時間帯に夕食の事介助や就寝介助をした経験がある介護スタッフならばお気づきと思いますが

めっちゃ、ドタバタとした時間です。
猫の手も借りたいぐらいに業務が押せ押せになり、めっちゃフロアの空気がピリピリとした状況です。

強いて言うならばこんな感じです。
かつて土曜日の夜8時に放送されていた某公開録画のバラエティー番組で、コントが終了すると同時にスタッフが一斉にセット早替えをするようなドタバタ感です。(ちなみに、私自身ですが就寝介助をしていると勝手に頭の中でセット早替えの音楽が鳴り響いていました)

私自身、特養や老健の入所介護施設では8年ほど勤務をしてきましたが

中には残念ながら

「今日は食事介助が○○分で終わった」

など言うスタッフがいる施設もゼロではありませんでした。

きっと、日曜日の夕方に放送される全国で最も有名なアニメの親父さんなら

「ばかもーん‼」

と言わんばかりでしょう。

そんな職員の勝手な都合で食事介助の手を早められて
ぐいぐい口に入れ込む光景を目の当たりにして憤りを感じました。

確かに、仕事なのである程度の効率や時間配分は否めません。
しかし、

事故があってはもともこうもありません。

ある意味、スタッフ自身も

避難訓練のスローガンではありませんが

「焦るな」

「落ち着け」

と自分自身に暗示をかけて

いかに平常心を保てるかが己との戦いでもあります。

業務上過失に問われて加害者にもなりかねる立場にもあります。

今となっても非常に複雑な心境ですし
最もこのような事故は起きてほしくないというのが正直なところです。

■くどいようですが
「吐き出せる」とは嚥下機能が機能していることなんです。

再度嚥下の話にもどりますが、利用者さんも嫌いな者や食べにくいものもあれば、その日の気分や体調もあります。

そのため

「ペッ」

勢いよく吐き出され、制服に飛び散ったこともあります。

かつて、私は歯科衛生士による嚥下のレクチャーを受けています。

その時の内容を皆さんと情報共有していきたいと思います。

利用者さんが

「ゴホゴホっ」

とか

勢いよく「ペッ」

と吐き出せたら、嚥下機能がまだ残っていると教えて頂きました。

ここで、問題なのは

むしろ嚥下ができている方です。
特に「トロミ」をつけている方で嚥下できている方です。

なぜならば、嚥下の過程で気管に
「トロミ」がべったりとこびりついて
そのとろみが知らず知らずのうちに肺に落ちてきている状況が
ゼロではないからです。

具体的にはこのような状況です。


嚥下を可視化した様子

よくいませんか?
このような利用者さん。

食後数時間経つと、痰が絡み出す方。
そうなると、利用者さんも苦しい思いを強いられる。
スタッフも吸引のために看護師を呼ぶ。
特に、ただでさえドタバタしやすい就寝介助時では

スタッフが混乱する。

焦る

周りの空気がピリつく

周りの認知症の利用者さんの不穏行動が勃発

これでは、利用者さんにとってもスタッフにとてもお互いに負のスパイラルに陥りやすくなります。

そのためには、定期的にケアプランや個別支援計画のなかに嚥下できるできない利用者さんにかかわらず食事量に関するチェックをしてプランに組み込んでしまうという必要性もでてくると私は考えます。

次回はそのような状況の早期発見と予防についてお伝えして行きたいと思います。よろしければ、併せてことらも参考にどうぞ。

参考文献
・2017年 幻冬新書 中村仁一著
『大往生したけりゃ医療とかかわるな【介護編】2025年問題の解決をめざして』

・2013年 講談社 監修 島田達夫
講談社の動く図鑑WONDER MOVE
『人体のふしぎ』

・平成26年 一般財団法人 長寿社会開発センター
介護福祉士養成 実務者研修テキスト
編集 介護職員関係養成研修テキスト作成委員会
第8巻 こころとからだのしくみⅠ・Ⅱ

・平成23年 オーム社開発局
監修 田中越郎
作画 こやまけいこ
制作 ビーコム
『マンガでわかる基礎生理学』

・2014年 中央法規出版
編集 黒沢貞夫 石橋慎二 是枝祥子 上原千寿子 白井孝子
介護職員実務者研修(450時間)テキスト
【第4巻】こころとからだのしくみ 第3版




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