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【感想118.1】トラペジウム のまとまりきらない話

 今回はオタクと2人で見に行ったのもあって見終わった後にいろいろ話はしたけれど、徹頭徹尾吐き出しておかないと収まりがよくないのでとにかく見て感じたことを全部書き下ろすことにした。

 タイミング合わずで公開1週目の平日木曜という、公開から6日目になる日に見に行ったので周りの友達やSNS(というかTwitter上)での声は一通り目を通してから見に行くことになった。
正直、否の感想を持った人はキャラクターの感情理解や行動原理に対して自己ベースで考えるかつ他人からの影響や反論に対して柔和に受けない傾向があると東ゆうみたいな人間は好きになれないし、多少の理解を示すことなく突っぱねてしまうから致し方ない出来事なのかもしれない。男がいる事を匂わせることになりかねない真司君との喫茶店での会合にガヤを飛ばすような奴じゃないとマイナス寄りの話は身になるものはないと思う。

以下からモリモリとネタバレしていきます。


東ゆうをすべての主軸に据えている

 パンフレット内のインタビューにもあったけれど、話の軸には東ゆうを置いて展開しているおかげもあって94分という比較的短めな時間で展開で来ている。
ここは特に上手だなと思ってて、演出上がりの監督によるあの手この手で仕草や景色で感情表現をしてくるしキャラクターの頭の中を寸分違わずに言語化して出力するような野暮さの方が強くなるシーンもそうないおかげで、東ゆうに没入する形で物語にのめり込みやすくなってた。と感じたし、実際見てハマったなーって人はそういう人が多いと思う。

 OPでも作品内時間に追いつくまでの成長過程をダイジェスト形式で見せていたり、明確に語られはしないものの東西南北(仮)の4人の物語ですよというよりは東ゆうというアイドルになることを切望する少女の物語という印象付けをしている方が納得いきやすい。

 序盤から打算的な性格であったり目論見がないと自発的に行動しない所だったり、ほか3人の気持ちを考えずに自分優先で話を裏で進めてしまうところが隠されもせずに中盤まで行く。なんだけれど、この”けろりらさんこんにちは”シーンから一転する。本当に大事なシーンで何しとんねんコイツ。

 露骨に3人の前で態度に出した後に学校内での扱われ方をはじめとして、実際はこんな見られ方してますよコイツと言わんばかりに怒涛の答え合わせ編が始まる。
そもそも下にあるシーンでもアイドル目指して諦めているような女の子に対して「アイドルになれるよ」なんていう応援じゃなく「私がなるよ」という、車いすユーザーということを差し引いてもかなり攻めたパンチを決めてくる。

 こんな唯我独尊女ではあるんだけれど、そんな(いい意味で)ヤバ女は間違いなくタレントとして頂点を狙える器。その器に対して、アイドルというものになって何がしたいのか?どうして憧れたのか?を再認識させる物語になっている。

東西南北(仮)の中での対比

 ここはかなり強めで、メンバー内の中の良さとかは個人的にわかりやすいなーって思いながら見てた。
くるみと蘭子がべったりする程距離を縮めているのに、幼馴染と言えなくない美嘉とゆうは距離があるし最初に仲良くなったゆうと蘭子くるみの友達以外に何か別の要素があるからこその隔たりを感じる(ここはゆうがビジネスライクなことを通したこともあるけれど)部分もあって、『スタンドバイミー』の4人みたいな、大人になっても会っていそうな空気感とかがないのは中盤であったアイドルデビューさせられるタレントグループっぽいのがハマってたと思う。

 最後に答え合わせされる3人がゆうに対してお礼を言っていくところも、ゆうとのアイドルという要素を通して違いを示してくれてるなーって感じた。
それぞれがアイドルに相応しい個性を持っていても、アイドル自体への適性がないのは行動の軸がない蘭子や自身を偽りきれないくるみに立ち振る舞いが至らない美嘉と描写してる。
そんな中でも適正という意味でもトップを目指す素質としても抜きん出てる、いわゆるセンターに立ち続けられるのが東ゆうだけであってそんな彼女に与えられたものが3人それぞれにあることが判明してからラストのインタビューシーンに移行するのはかなり痺れる演出だった。

勧善懲悪にしない、というよりできるわけがない

 初動でイメージを固められてしまった口コミの中で「ゆうに対しての仕打ちが甘すぎる」とあったけれど、上記でのほか3人と比べて人気がいまいちそうなことを悩んだり、目論見が基本全くうまくかみ合わなかったり、特に下のシーン直前までの件でゆうにとっては二度と会いたくなかっただろうオーディション全落ちの時以上に現状でのアイドル適性のなさを思い知らされる瞬間は当人にとっては禊として十分すぎるとは思う。

 そんな中での「嫌な奴だよね」に対して母親からもらう肯定と承認はちょうどいい強さの平手打ちになってる。ゆうがアイドルになるために唯一無二の強みになり得る素質なのでここを矯正することはアイドルをあきらめることとイコールになるし、それをすることでこういう子にはなってはいけませんよ、という製作からの説教になることを避けて短所でも見方によっては長所になることとそれを後押しする3人からの言葉があって、再スタートを切るところで一度話を〆るのが何よりいい形だなっていうのは見終わった後により思った。


終わりに

 この話自体、作者が当時現役でアイドルをやっていた中で描いた物語が自伝的であったり自己投影をしているようなシーンがない、一時期あったラノベ作家が主人公のラノベ作品でやっていた現場あるあるの披露みたいな臭みがないので純粋に第三者の歩みを見届けるというスタンスで見るのがちょうどいいっていうだけでもかなり凄いことだと思う。
なんだかんだで天空地下アニメ声優と4種のアイドルものでトチ狂わされていた時期が長くあってかなり熱のあるアイドル像の話を持っているのはあるけれど、そういう人ほど東ゆうの持つ輝きの強さを理解するだろうしこの映画でウンウンと唸り続けるんだと思う。

 改めて思うけれど、東ゆうって天下取れるアイドルの人格なんだよな。

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