SOCIAL WORKERS LAB
まちづくりと福祉 | SOCIAL WORKERS TALK 2020 | Vol.1
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まちづくりと福祉 | SOCIAL WORKERS TALK 2020 | Vol.1

SOCIAL WORKERS LAB

2021年1月16日、オンライントークイベント「SOCIAL WORKERS TALK 2020」を開催しました。2年目となる今年のテーマは「福祉の周辺」。「福祉の周辺」とも呼べるような位置に立って活動しているゲストたちが、まちづくり、建築、デザイン、家族、シェアなど多様な観点から「福祉」と「福祉外」という線引きを問いなおします。

第1回目は「まちづくりと福祉」と題して、東京都墨田区の喫茶店「喫茶ランドリー」を運営する田中元子さん。長野県軽井沢の診療所「ほっちのロッヂ」の紅谷浩之さん。滋賀県大津の交流拠点「HOURAI SHARE FARM」を企画運営する建築家の岡山泰士さんの3名をゲストに迎え、学生から社会人まで250名が参加するなか、福祉の境界線を溶かすようなクロストークが繰り広げられました。

多様さ、豊かさ、新たな関係が生まれる場にある貴重なエッセンスに触れることができた。そんな言葉が交わされた時間でした。約1万字のレポートです。どうぞじっくりとお楽しみください。

登壇者のプロフィール

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岡山 泰士(おかやま ひろし)
一級建築士事務所STUDIOMONAKA 共同代表

1987年生まれ。京都・沖縄を拠点にして、人びとの日々の営みの背景となる建築・空間づくりを手がけ、町家再生、住宅、エリアリノベーション、企業ブランディングなど多種多様なプロジェクトを推進。自らが暮らす滋賀県大津市では、地域団体シガーシガの共同代表として、福祉施設に隣接する耕作放棄地を開墾して地域交流拠点HOURAI SHARE FARM を企画運営。二児の父。まちの営み、ひとびとの営みをつくる建築家。

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田中 元子(たなか もとこ)
株式会社グランドレベル代表取締役社長

ライター・建築コミュニケーターとして活躍後、「1階づくりはまちづくり」をモットーに株式会社グランドレベルを設立。エリア価値と住民幸福度の向上に取り組む。2018年、東京都墨田区に洗濯機やミシン・アイロンなどを備えた、まちの家事室付きの喫茶店「喫茶ランドリー」をオープン。属性を問わず、多様な住民が能動的に集まる公共空間のモデルとして注目を集める。わたしたちの公共をつくる、グランドレベルの伝道師。

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紅谷 浩之(べにや ひろゆき)
医療法人社団オレンジ理事長

福井医科大学卒業後、救急・総合診療を中心に研修し、地域の診療所にて在宅医療・地域診療を学ぶ。2011年、福井県内初の複数医師による在宅医療専門クリニックを開設。住み慣れた場所で自分らしく幸せに生きていくことを支えるため、地域づくり・まちづくりにも取り組む。2020年春、新たな挑戦として長野県軽井沢町に診療所「ほっちのロッヂ」を開設。自分らしく幸せに生きられる地域をつくる、越境する医師。

1、まちづくりってなんだろう

自分が生きたい場所をつくる

今津:みなさん、こんにちは。本日はお越しいただきありがとうございます。ソーシャルワーカーという概念を介して、さまざまな人が出会い、関わり、学び合う社会実験プロジェクト「SOCIAL WORKERS LAB」。ディレクターの今津新之助です。

2021年1月から月イチで開催していく「福祉の周辺」シリーズ。今日は「Vol.1 まちづくりと福祉」ということで、3名のゲストをお迎えしています。お話しいただくゲストのみなさんは、それぞれ専門分野は異なりますが、多様な人びとが集まり、日々新たな関係が生まれる場づくりをされています。

そこで生まれる関係の多様さや豊かさが、プライベートとパブリックのあいだを生み出したり、人が自分らしく幸せに暮らせる地域をつくることにつながるかもしれない。そんな可能性に満ちた場づくりは、どんな思いから、何を大切にして生まれるのか。そういったところをベースにクロストークをはじめたいと思います。まずはゲストのみなさんより、一言いただければ。田中元子さんからお願いいたします。

田中さん:はーい、こんにちは。東京都墨田区で「喫茶ランドリー」という喫茶店をやっている田中元子といいます。よろしくお願いします。

紅谷さん:みなさん、こんにちは。今日は軽井沢の「ほっちのロッヂ」から参加しています。もともと福井県で在宅医療や地域医療に携わっていました。紅谷浩之です。よろしくお願いします。

岡山さん:STUDIOMONAKAの岡山泰士です。建築の仕事がどんなふうに福祉とつながったのか、ということを含め、今日はみなさんといろいろお話できたらと思っています。よろしくお願いします。

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今津:よろしくお願いします。では早速なんですが、まずは「まちづくり」とはそもそも何か、ということからお聞きしたいと思います。それはきっと行政のものではないと思うし、「パブリック=公共空間、公共施設」でもないはず。自分が欲しい公共を自らの手でつくり、「1階づくりはまちづくり」を掲げて活動をされている田中さんから、お話しいただけますでしょうか。

田中:そもそもわたしのまちづくりの出発点は、「自分がこの人生を送るんだったら、こんな環境で生きていきたいよね」という自分発信でした。そうじゃないと嘘のような気がしていて。社会がこうあるべき、まちがこうあるべき、と机のうえで言っているようなものは信じられない。ぼくは?わたしは?自分はナニモノで何がしたいの? そんなふうに、自分がこんな生き方をしたいって思うことを実践するのが、まちづくりだと考えています。

今津:「これからの生き方や老い方を、自らがつくる取り組み」と捉えられている紅谷先生の活動も、田中さんがおっしゃったことに通じると思いますがいかがでしょうか。

紅谷:そもそも医者の仕事は専門性が高いので、人の病気を見つけてあげるとか、治してあげるとか、「〜してあげる」という上から目線の言葉がどうしてもついてきます。そこに、ぼくは違和感があるんですね。田中さんのおっしゃったことにはすごく共感していて、誰かから「こうあるべきだ」と言われるものではなく、自分がどう過ごしたいかが大切だと思っています。
病院のなかで医師は、患者さんを病気かそうでないかでラベリングしていく。でも、その手前で出会っていればもっと違う関係ができるでしょう。病院に来る前に出会っていれば、たとえば病気のことは医者のぼくのほうが詳しいけど、畑での野菜のつくり方だったら「あのおばあちゃんが詳しいから聞いてみよう」という自然な関係が生まれる。つまりは、その人にとっての健康を考えたときに、病院の建物のなかだけでの対応で本当にいいのだろうか、ということなんです。
人間は誰でも最後は死ぬし、どこかのタイミングで腰が曲がったり、膝が痛くなったり、車椅子が必要になったりする。だから、医療的ケアが必要な子どもを見て、「かわいそう」とか「そこに携わる人はやさしい」と言うことには違和感を感じるんですよね。
ぼくは医療的ケアが必要な子どもたちとと関わることで、より幸せに生きていけるエネルギーをもらっていると思っています。そもそも「ケアをしている」という発想ではない。医療や福祉に対する「かわいそうな人を助けてあげる仕事」というイメージも、ちゃんとアップデートしていかないといけませんよね。

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医療では測れないカラフルな幸せがある

今津:紅谷先生は医師としての専門家でありながら、「その人の人生にとって、本当の幸せとは何なのか」をずっと考えていらっしゃるように思います。在宅医療や地域医療の経験も含めて、そのあたりはいかがですか。

紅谷:医者は、診察や問診をして、科学的なアプローチで白か黒かを判断していきます。ぼくもそういうトレーニングを受けてきたし、もちろんその判断を求められる仕事でもあります。
けれど、人間の生活って白か黒だけじゃなくて、実際はものすごくカラフルな考え方や生き方がありますよね。ぼくたちは本当のところでは、病気を治すことだけじゃなく、人の生活をハッピーにしたいと思っている。それは、ぼくたち医者のモノサシでは決して測れるものではありません。自分の専門性をちゃんと自覚したうえで、その人の鮮やかな生き方に対して、「この色もいいね」とか「きれいだね」っていう気持ちをちゃんと大切にするバランス感覚が必要だと考えています。

今津:岡山さんが運営する地域交流拠点HOURAI SHARE FARMも、学生や障害のある人、農家の方々など、さまざまな人が自然に集まってくる場になっているんですよね。今のお二人の話から、どのようなことを感じられましたか。

岡山:まちづくりは、自分たちの環境を自分でつくること。ぼくもそう思います。ぼくは今住んでいる滋賀県大津市旧志賀町というまちが好きなんですが、田園エリアでもあって仕事の場が少なく、若い人たちは街へと出ていってしまいます。ぼくは、この地域の雰囲気や時間の流れが気に入っていて、ここに居続けるためにどうすればいいか、という思いを出発点にHOURAI SHARE FARMをはじめました。
福祉施設の隣にあった耕作放棄地を開墾したりするなかで、施設の人たちとも自然に交流が生まれていきました。そのなかで感じたことは、福祉の仕事はケアワークというより、いろんな人が居続けられる居場所づくりだということ。それって、まちづくりだと思うし、自分も意識せずにそうしていたんだなと後になって気づきました。

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2、まちづくりと福祉の関係

思えば、あれは福祉だった

今津:みなさんの取り組みに共通して言えることは、その場に集まる人が多様で能動的であることだと思うんですね。自然と人が集まってきて、結果的に居場所やつながりが生まれる場になっている。そんな場をカタチにできるのは、なぜなのでしょうか。基本的な姿勢として大切にされてきたことは何でしょうか。

田中:2015年から、わたしはいろんなところに出ていって、道ゆく人たちに「コーヒー飲んでかない?お金はいらないから」とコーヒーをふるまっていました。「フリーコーヒー」をしていたんです。それで気づいたのが、世の中で一般的に言われている「かわいそうな人」というのが、「お金のない人」や「病気になった人」というふうに、はっきり線引きされ、記号化されていることでした。
でもね、実際には、たとえばいろんなところを流転して生きているような人がとても幸せそうだったり、お金を持っていそうなビシッとしたサラリーマンが今にも死んじゃいそうだったり、悩みを抱えていそうで、こわばった表情をしていたり。正直言って、誰から助けるべきなのか、わからないんです。わたしは、誰もが心身良好な状態であることが自分自身の幸せにつながると思っているし、フリーコーヒーは学ぶことも多くて、とってもいい経験でした。そして、今思えば、それが私にできる福祉だったんですよね。
あと、岡山さんや紅谷さんの活動もそうですし、わたしの喫茶ランドリーも大切にしているんですが、みんな、デザインがかっこいい。ここめちゃめちゃ大事。いくらいいことをやっていても、デザインに配慮がされていない場所には人は来ないんです。やさしくない人だって、やさしい雰囲気の空間にいたら心がほわっとあたたかくなるだろうし。逆にやさしい人が殺風景なところにいると、いつまでも朗らかではいられないでしょう。それくらい人は物理的な環境に左右されて生きているんですよね。だから、人が来たくなっちゃうデザインがとっても大切。いい人がいるからとか、楽しいからというだけでは、思い描いたような場にはならないと思いますね。

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目に見える風景に、いきいきとした「ひと気」をつくる

今津:田中さんは喫茶ランドリーや株式会社グランドレベルをはじめられる以前、街や建物などのさまざまな空間の捉え方やおもしろさを、専門家の枠をこえて伝える活動をされていました。そしてグランドレベルが変われば、もっと生活に豊かさを感じられるんだと、ぼくたちに提案してくれています。そんな考えのもとで取り組んでいらっしゃることについて、お話しいただけますでしょうか。

田中:グランドレベルという会社では、喫茶ランドリーのほかにも、人の目にふれる場所をよりよくしていきたいという活動をしています。人の目の高さは、どれだけ高い建物が建てられても変わらないので、この高さの風景をよりよくすることが社会を良くする。ひいては世界をよくすることにつながってくると思っています。「よくなる」ってどういうことかというと、便利になるとか植物があるとか以前に、人がいきいきと活動してるさまが見えるかどうかだと思っているんですね。楽しそうな人を見るとこっちも楽しくなっちゃうのと同じで、ひと気や誰かの存在って、自分に直接関わりがなさそうでも大きな影響をもたらしています。そういった意味で、まちの風景にもっとひと気があって、そのひと気がいきいきとした状況をつくっていきたい。だから今日、岡山さんと紅谷先生のお話を聞いていて、まちの中に畑があったり、カフェでいろんな人のさまが見えたり、ステキだなと思う。そして、そんな場所や風景がもっと増えたらいいなと思っています。

今津:田中さんの書籍「マイパブリックとグランドレベル」には、たくさんの事例が紹介されています。家の前にベンチを置いてみるだけで人々が寄りあえる空間は生まれるし、たったそれだけのことで、まちの景観や居心地が変わってくるんですね。

紅谷先生が取り組まれている「ほっちのロッヂ」では、近くにある学校施設「風越学園」の子どもたちとシニアのみなさんとがある種入り混じった時間を過ごしていて、医療施設というよりは、果樹園のような場をつくろうとされている。きっとそうしたコンセプトに場の豊かさが生まれるヒントがあるんじゃないかと思うんです。そのあたりの取り組みの背景や、多様な人たちが入り混じってともに生きていける場づくりについてお話しいただけますでしょうか。

3、まちや居場所のつくり方

「誰でも来てね」は、誰も来ない

紅谷:「ごちゃまぜ」や「多様」と言っているのにもかかわらず、医療職や福祉職って、自分の存在を消す人が多いんですよね。医療職はあまり自分の感情を出さないように、っていう教育を受けちゃう。「患者さんのために」とか「利用者さんのために」と言ってね。看護師だって、みんながみんな同じことを同じようにできることを目指すんですが、それって違うんじゃないかって思うんですよ。食べるのが好きな看護師もいれば、裁縫が好きな看護師もいれば、ライブが好きな看護師もいるでしょう。みんなそれぞれ違う人なのに、同じことを同じようにしようと自分を消してしまう。患者さんに対して「私は食べる話には興味がないので、今日は料理の話はしません」と言ってしまってもいいんじゃないかなって思う。できるだけこちらの主語をしっかり出していくことで、本当の「ごちゃまぜ」や「多様」に近づくのではないでしょうか。一人ひとりの好きなものを許していった先に、「ごちゃまぜ」で「多様」な場があると思う。
あと、「ごちゃまぜ」や「多様」という言葉は、言うのは簡単なんですけど、はじめから「誰でもどうぞ」っていう場をつくっても誰も来ない。人が来たくなる仕掛けをつくり、その仕掛けにどんな人がどれくらい来るのかを、ある程度考えたうえで発信していかないといけないと思ってるんです。それについて、岡山さんや田中さんのお考えを聞いてみたいですね。

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お互いが初めてのチャレンジをしていく

今津:一人ひとりが自由で多様でありながら、ごちゃまぜにともに生きていくという場をつくるには、ある程度の仕掛けや、こちら側の主語を大切にすることが必要。それは補助線を設計するとも言えそうです。この点について、岡山さんはどうお考えでしょうか。

岡山:集まった人の「こんなことやってみたい」という気持ちをいかに引き出すかと、いかに異なる思考様式の人同士が共存する状況をつくるかを大切にしています。そうして、何かをやりたい人の「やってみたいこと」に周辺の人を巻き込んでいく。そして、いっしょに楽しむ!(笑)
「わたしは、夏至の日にカレーを食べることを広めたい。だから、わたしは夏至カレー大使になる!」と言い出した人がいたんですが、そのときもとにかく「やろう、やろう」って。最終的にナイトパーティーまでやってしまったんですが、どんなに根拠のない「やりたい」でも、まずはやってみることが大切だと思ってるんです。自分の知っている答えに落としこむのではなく、どこに辿り着くのかわからないところへ、一緒に飛びこんでみる。お互いが初めてのことをやる、というのがポイントかもしれません。

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それぞれが私設のパブリックをつくる

今津:田中さん、いかがですか。

田中:紅谷先生の言われたこと、とてもよくわかります。でもわたしは、全員に対して平等に両手を広げているつもりです。でも、平等に両手を広げているんですが、すごくフィルタリングされているとは思います。なぜなら、わたしが両手を広げているから。
誰が両手を広げているかって、大切ですよね。生理的にイヤな人っているんですよ、金髪が。そういう人っていますよね、金髪なだけで(笑)。なので、わたしが両手を広げて全員が来ることはない、ってことはわかってるんです。
で、建物や施設というのは人間と似ているんです。どんな人かわからない人と友だちにはなれないように、その施設もどんな性格で何をするところかが色濃くわからないと人は来れないんです。わたしが喫茶ランドリーという「私設公民館」をつくりたくなったのはソコなんです。どこでもすぐにイケてない変なタイルを貼った、ぼやっとした感じの公民館とかつくっちゃうでしょ。誰にも文句言われないために。全員が30点出すようなやつ。私は30点なんて出してほしくないんです。10人のうち一人でいいから、5000万点だしてほしいし、それが「公」でいいじゃないかっていうのがわたしの考え方です。
私設でパブリックをつくる遊びが増えていけば、「Aの公」「Bの公」「Cの公」って、セーフティネットがレイヤーになっていく構造ができる。いろんな人なパブリックな何かをつくることを楽しむ世の中になればいいなと強く思っています。

紅谷:いいですね。よくわかりました。「私が手を広げるだけで来ない人がいる」という当たり前のことなのに、「そうならないようにどうしよう」という話し合いを始めちゃうのが公的なチームの落とし穴ですよね。

田中:そうなんです。文句を言われたらどうしようとか、起きてもいないことを怖れる人が多いように思います。気づいたときに改善すればいいし、何か起きたら話し合えばいい。問題が起きる前からあれも禁止これも禁止、あの角もこの角も削っておこう、ってやってるから誰にとっても顔なしみたいな、よくわかんないやつになっちゃってることがあるじゃないですか。そこが何かをつくるときに肚(はら)を決めなきゃいけないところ。嫌われることを怖れていては熱狂されない。そこを肚を括って、人のことを愛していくしかないんじゃないでしょうかね。人の能動性が発揮されて自由で多様であるということは、うまく立ち回ってリスクを回避することなんてできないってことなんです。そういう場で人がいきいきと存在していることに喜べるかどうかだと、わたしは思っています。

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4、まちづくりと福祉の可能性

福祉施設がまちづくりの拠点に

今津: まちづくり、医療、福祉というものは、ぼくたち一人ひとりのことであるのに、気づけば専門化が過ぎて、そこから出られずに自らを閉じ込めてしまっているのかもしれない。みなさんのお話を聞いていて、そんなことを思いました。最後に、これからの社会のあり方とも紐付けながら、これからのまちづくりと福祉の可能性についてお聞きかせいただけますか。

岡山:福祉は日常の身近な背景にあるもの。自分が思うがままにまちづくりに関わっていくと、結果的に福祉につながっていることってとても多いと思うんです。ぼく自身、気づけば福祉の周辺にいましたし、「福祉」という言葉の先入観によって、福祉と自らを切り離す必要はないのかもしれませんね。
HOURAI SHARE FARMをやりながら感じたのは、福祉のもつ許容力の大きさです。福祉施設そのものがいろんな人を受け入れることが前提としてあるからこそ、今後はもっと地域に活力を生みだすハブ的存在になるんじゃないかと思っています。とりわけぼくが暮らしている大津市旧志賀町などの中山間地域においては、福祉施設はまちづくりの拠点として大きな役割を果たせるんじゃないか。人の居場所が生まれ、交流が生まれ、新たなビジネスが展開していくような。福祉をハブにしたステイローカルは、まだまだ面白くなるし、伸びしろが十分にあると思います。

福祉の外から福祉が生まれる時代へ

紅谷:福祉の現場に入ってくる人というのは、人を幸せにしたいと思う力が強い。それは、ものすごく大きな可能性だと思うんです。ただ、医療や福祉の業界全体が、まだまだ制度や仕組みや建物に引っ張られている気がします。しかし一方では、医療、福祉の内側から制度に縛られない新しいやりかたを実践する動きも次々と生まれてきている。ぼくは令和時代の福祉へと生まれ変わっていくことを信じたいし、信じています。そこでは、福祉を学んだ人だけでなく、生きている誰もが福祉に関わっているという意識になっているはず。建築やまちづくりという世界からも福祉が生まれてくる時代になってほしい。ぼくはその可能性を信じています。

自分がどう生きたいかを深掘りすれば
福祉もまちも身近になる

田中:すごく共感します。喫茶ランドリーやフリーコーヒーのことを話すとき、わたしくらいの世代から上の人はすごく不思議そうな反応をするんです。「ただでコーヒーなんか配って、何になるんだ」とか「お金とらないと持続性がないだろう」とかね(笑)。でも若い世代ほど「楽しそう」といった反応で、ごく自然なこととして受け入れてくれる。若い人たちはやさしくなったし、福祉的な性格というのか、許容力のある人が多くなってきているのを実感しています。
私たちの身のまわりには、福祉的な要素や、事実上福祉なものが溢れていると思うんですよね。かわいそうな人を助けるとか、机上の論理でまちを良くするということではなく、みんなが自分はどう生きていきたいのかを深堀りすることで、福祉というものがもっとカジュアルダウンしていけばいいんじゃないかなと思っています。自分に興味をもつということと、世界に興味をもつことは同じこと。なので、福祉についても、いっそう楽しく考えていきたいものですね。

今津:どうもありがとうございました。本日は「まちづくりと福祉」をテーマに、岡山泰士さん、田中元子さん、紅谷浩之さんと対話を重ねてまいりました。まちづくりも福祉も、ぼくたちのすぐそばにある、とても身近なものなんだと感じていただけたのではないでしょうか。
本日のイベントをきっかけに、福祉の世界というものを、もっと広くおもしろく捉えていただいて、少しでも自分ごとにしていただけたら嬉しいです。ゲストのみなさん、また、オンラインでご参加いただきました大勢のみなさん、さまざまにご協力いただきましたみなさん、本当にありがとうございました。今日は、ぼくたちSOCIAL WORKERS LABにとってスペシャルな一日になりました。次回も元気にお会いしましょう、さようなら!

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私たちSOCIAL WORKERS LABは、ソーシャルワーカーを医療・福祉の世界から、生活にもっと身近なものにひらいていこうと2019年に活動をスタートしました。

正解がない今という時代。私たちはいかに生き、いかに働き、いかに他者や世界と関わっていくのか。同じ時代にいきる者として、その問いを探究し、ともに歩んでいければと思います。

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ソーシャルワーカーズラボは、これからの社会をつくろうとするソーシャルワーカーどうしが出会い、関わり合い、問い、学び合う社会実験プロジェクトです。noteでは、人口減少社会を生きるわたしたちに必要な社会観や働き方の先駆的な探求と実践についての記事を掲載しています。