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ざっくりとした「将棋20級の認定基準」

(注:私の教室は2019年に閉鎖したので、教室の話は過去形です)

また日が空いてしまいました。(最近将棋ニュースを作るのが楽しくて)

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さて、今までこのような昇級規定を公開しておりましたが、続きをご覧いただきましょうか。

20級までの昇級基準

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はい。20級までは単純明快です。何回負けてもとにかく勝てば昇級を重ね、最後に20級昇級テストとして10枚落ちで勝てば昇級=中級入りとなりました。

「既に20級の実力がある子」に25級の昇級テストを受けてもらっていました。
具体的には、「10枚落ち100戦99勝レベル」ですね。

と以前にも書きました。この一見するとおかしな昇級規定について、ここで解説します。

中級への準備期間

25級から20級までは、中級に移る準備期間と捉えていました。
2つの目的があります。

1つ目は、講師の認定というあいまいな基準から、はっきりとした勝ち数での昇級に慣れること。
20級以上は「●連勝か●勝2敗」という道場でおなじみの規定になります。
(道場に行ったことがない方は、奨励会や研修会のような規定と思っていただければOK)
その手前の段階として、何回負けてもいいから既定の勝ち数(それも2勝、3勝という、諦めずに通い続ければいつかは達成できそうな勝ち数)を目指していきます。

2つ目は、将棋に対する考え方を中級のものに変化させていくこと。

初級は自力で将棋を指せるようになって、対局開始から序盤、中盤、終盤という流れがあることを知って、最後に1手詰を詰ませられたら勝てる、という一局のあらすじを把握できるようになるのが目標です。

これ、もしかしたらようやく将棋を習い始めるスタートラインに立った状態かもしれません。
初級はほとんどの場合が王手放置で終わるし、二歩や駒の動かし方を間違えても勝敗をつけるので、そういった基本的なルール違反をしない子が自然と勝つようになります。

でも中級では相手の反則や王手放置で勝つことがほとんど起こらないので、ミス待ちの姿勢ではなく、自力で勝つ戦略を考えることが求められます。
もちろん、自分が王手放置やそのほかの反則をしないのは大前提です。

だから25級になった時点で、中級への移籍を勧めました。
もちろん他の習い事との時間の兼ね合いもあるので、都合がついたら、ですけど。

私の教室では25級になると駒落ち上手を持つようになって、例えば25級vs30級だと25級の子の飛香落ち、21級vs30級だと4枚落ちになります。
でも王手放置をする子としない子の対決なので、大抵上手が勝ちます。
だから初級ではいい勝負になるように上記以上の駒落ち(10枚落ちもやりました)を当てるんですが、それでもほぼ上手が勝ちます。王手を受けないから。

それを繰り返していると、初級にいたらほとんど反則勝ちで20級になってしまいました。
味をしめて毎回それを狙う子もいて、そのほうが20級になるのは早いのですが、そこで中級に行ったところで全然勝てないです。
勝つ戦略が「王手をかけて、ばれなければ玉を取る」しかないと、通用しないです。

それよりも25級の時点で中級に移って、20級の子と飛香落ち、15級の子と6枚落ち、10級の子と8枚落ちを指して、下手で全ての駒をしっかり使って勝ちきる方法を覚えたほうが上達は早いです。

これは、100人も200人も生徒さんがいるような教室だと気にしなくていい部分かもしれません。似た級の子が何人もいますので。

私の教室の場合は1クラス多くて20人、大抵8人前後、少ない時は1人とか2人なので、生徒さん同士の駒落ち戦を日常的に行っていました。

また20級になりそうな棋力で初級にいると、自分が一番強いと錯覚しちゃうのもよくないなぁと思っていました。
初級と中級行ったりきたりでもいいので、中級に参加してもらうようにしました。

反対に、他の習い事の都合などで中級の実力の子が初級に通うこともありました。
それはお子さんご本人にもほぼ全対局が駒落ち上手になってしまうことを了承してもらった上で、通ってもらっていました。
(講師陣の指導対局はありましたが、その子だけ極端に増やすわけにもいきませんし)
それでも昇級は認めていましたが、初級のみの受講で上がれるのは15級までと決めていました。そこまで初級しか通わなかった子はいなかったですが。

実際に将棋教室を運営すると、いろいろ規定を決めていても例外が必要になってしまうことがあります。
受講者ご本人はもちろん、他の生徒さんにも不公平感が出ないような配慮が必要だなと思います。

20級の人にできてほしいこと

26級の認定基準のときに「26級レベルの子に教えていたこと」を書きましたが、20級の子がどの程度のことができていたのか、同じリストを使って紹介します。「ほぼ全員が完璧にできること」を◎、「できる子が多いこと」を○にしておきます。無印は「教えたけどできるとは限らないこと」です。

*   *   *   *

◎駒の動かし方を覚える
◎対局開始前と終わりに挨拶をする。(床の場合は挨拶だけでも正座。対局中は崩してもいいが、机より上にひざが出ないこと)
◎対局開始から終わりまで、座ったままで対局する
◎対局中は口を閉じる(しゃべらない)
◎駒を数えて片づける
◎指したら手はひざの上(手番じゃないときに駒を触らない)
◎指す手を決めてから駒に触る(待ったをしない)
○かっこいい駒の持ち方
○大橋流・伊藤流で並べる
◎駒箱を開けたら玉(王)をまず置く
◎将棋盤を「Z」に見る(四隅の香車を見る) 下図参照

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◎駒を強い順番に並べられる(駒の価値を知る)
◎王手をかける
◎王手を受ける
◎タダの駒を見つけて取る
◎タダで取られそうな駒を守る
◎歩を垂らしてと金を作る
◎と金を作られそうなところを守る
・歩で桂頭や角頭を狙う
◎歩がぶつかったら取る
◎大駒は成れるときにすぐ成る
◎頭金・腹金の1手詰を必ず詰ませる
○”頭竜”、”頭馬”の1手詰を見つける
◎「1手詰があるよ」と言うと1分以内に見つける
◎相手玉を向こう側(すみっこ)に追い詰める
 (中段玉に真上から竜、馬、金などで押さえて下段に落とす)
・相手玉の2マス手前に持ち駒の金や銀を打つ
◎1手詰ハンドブックをひとりで解き進める
◎1手詰ハンドブックを10分で80問解く
 →「できないと話にならない」というレベルです。
○1手詰ハンドブックを10分で300問(1冊)解く
 →20級になるまでにできるように、とは言っていましたが、家でやらない子はできないです。
○3~5手詰をゆっくり解説されて、まあまあ理解する
○両取りをかける
○駒をどんどんとりかえっこする
◎とりかえっこした駒は、できるだけ向こう側で使う
◎初手に飛車先の歩を突いたり、角道を開けたりして大駒の働きをよくする
◎相手が△8五歩と飛車先の歩を伸ばしてきたら、▲7八金と受ける
◎△8六歩を▲同歩と取る
◎△8六同飛に▲8七歩と打つ
・△8五歩に▲7七角や▲7七銀で受ける
 →これは20級でも△8八角成と取られる事故が起きます。
◎金銀4枚を、攻める班と守る班に班分けする
○玉を、守る班の金銀のほうに動かしておく
 →20級になるまでにどこかで自分で「囲い」を覚えてくる子が多かったです。教室では中級まで囲いを教えないので、教室で習ったこと以外を学ばない姿勢だと中級に入って苦戦していました。
○1枚で守られているマス目を2枚で攻める (数の攻め、棒銀)
○駒をタダ取りするための歩の手筋いろいろ
◎対局が終わったあとに、初手から覚えているところまで再現する
 →2人がかみ合えば終盤の入り口までできるようになっています。
◎自分が指した手の、選んだ理由を説明する
◎先生に教えられたことと違っても、自分で指した理由を説明できるなら違うことをやっても良い
◎上記の技術を総合して、10枚落ちは(上手が無理やり負かそうと思わなければ)だいたい勝てるようになっている
◎10枚落ち上手を持って終局まで指す
◎対局中に作戦を立てる
◎対局待ちのときに、他の人の対局を見て「どんな作戦を狙っているのか」「自分ならどう指すか」を考える。
 →やはり、空き時間に急いでマンガを読みにいく子はなかなか大変でした。でもそこで強制してもあまり効果がないので、自主的に他の人の対局を見るようにならないとしんどいです。

○上記の習ったことを、友達や弟・妹に説明する。
 →特に初級に居残っている子には「先生役」として大盤で問題解説をしてもらうこともありました。

*   *   *   *

今回も初級の子同士の対局を紹介します。正確な記録は残っていませんが、恐らく22級前後の子だと思います。

開始日時:2017/06/27 18:49:13
▲2六歩 △3四歩 ▲7六歩 △8八角成 ▲同 銀 △3二金
▲2五歩 △2二銀 ▲3八銀 △8四歩 ▲2七銀 △7二銀
▲7七銀 △8三銀 ▲7八金 △8五歩 ▲9六歩 △8四銀
▲2六銀 △9四歩 ▲1五銀 △9五歩 ▲同 歩 △同 銀
▲同 香 △同 香 ▲9七歩 △1四歩 ▲2四歩 △同 歩
▲同 銀 △8三香 ▲2三銀打 △同 銀 ▲同銀不成 △同 金
▲同飛成 △2二銀 ▲4三龍 △5二金 ▲4一金 △6二玉
▲5一銀 △7一玉 ▲3二龍 △7四歩 ▲4二金 △同 金
▲同 龍 △同 飛 ▲同銀成 △2八飛 ▲3八金打 △2三飛成
▲5一飛 △8二玉 ▲9四歩
まで57手で後手の反則負け

棋譜再現はこちら (将棋アルバトロスさん作成のページを利用)

最後は二歩の反則ですが、二歩じゃなければいい手です。
そうそう、20級前後の子は二歩の質も高まって(?)、「好手、ただし二歩」が増えてきます。
いい手を見つけて、うれしすぎて二歩か確認するのを忘れるんですね。

先手の子は私の教室が終了する頃は1桁級で、その後小学校低学年のうちに初段になったそうです。

教えるスピード

20級になるまでは基本的に初級のクラスなので、教えるスピードもこれまでとさほど変わりません。

もし20級手前の子しか出席していない場合は、「△8六歩と飛車先の歩を突かれたときに放っておくと△8七歩成とと金を作られてしまうでしょう。と金を作られてしまうと、次に角を取られそうで……」と言った入門者向けの説明を省略できる分、教える内容が増えます。
それでも、「おさらい」で同じ講座を2回やるのは同じです。2回目は生徒さんにやってもらうこともありました。

おわりに

次は15級を目安に書こうと思いますが、実はここからは言語化するのがすごく難しい。また気長にお待ちください。

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