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日本を再確認できる本 #1

昔からそうだけど、最近は特に「だから日本はダメなんだ」という論調が目立つ気がするのは俺だけじゃないだろう。グローバリズム&「マネー」資本主義の現在、世界基準が色々と打ち出されているのと比較するとそういう論調になるのは致し方ないかもしれない。実際はその「世界基準」って欧米(特にアメリカ)が打ち出したものだけどね。そこを基準にばかりしていると、それは当然「それに引き換え我が国は」と自虐的になってしまうか、もしくは真逆の「何千年も同じ国体が続いてる日本は凄いのだ」という闇雲な日本賛美か?のどちらかになってしまう。どちらも俺からするとポジティブに受け止められる話ではない。

面倒かもしれないけど、今の日本がダメならば
■どこが良くないのか?それはいつからなのか?その解決策は?
というところまで掘り下げるべきだし、
■「日本は凄い!」というならば冷静にその良き部分を他国にも分かる形で分析・再確認をする必要がある。と俺は思う。

これから紹介するのは、まさにそんな「濃い日本を再確認」出来る本なのだけど、いずれも自分で選んだのではなく、他人から勧められた本というのが面白い。そういう気持ちだから呼び寄せたのかもしれないが。

まずはこちらの、「日本の良きところを、冷静に再確認できる本」を紹介しよう

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「日本文化の核心」松岡正剛 著 2020年

「知の巨人」などと言われる松岡正剛氏は何かとアグレッシブに動かれている方で、最近話題の角川武蔵野美術館の館長をされていたりもする方。ただ自分はちゃんと存じ上げてなくて、友人から勧められて、比較的新しいこちらの本に手を出してみた次第。

これは情報量が凄いです。どれだけ多くの知識を頭に入れてるのかビックリするような本ではあります。各章に分けて日本の日本らしさを、闇雲に褒めるのではなく、冷静に炙り出して行こうとする内容です。例えばこんな見出しが並んでます
■イノリとミノリ〜日本人にとって大切な「コメ信仰」をめぐる
■神と仏の習合〜寛容なのか無宗教なのか。多神多仏の不思議な国
■小さきもの〜一寸法師からポケモンまで、「日本的ミニマリズム」の秘密
こんな感じで16章ならぬ16講あります。濃いんです。

分かりやすい実例で言うと、日本はご存知のように中国から「漢字」を輸入して日常使っている訳ですが、その輸入および定着のさせ方がすでに「日本らしい」と氏は言います。中国から4・5世紀あたりに輸入する訳ですが、確かに普通なら使い方をきいてそのまま中国読みをさせそうなものですが、その最初期段階からその「漢字」を使って「日本語読み」をさせると言う形で日本人に馴染ませようとする。他国の文字をそのように輸入する民族というのは他に例がないと。氏の表現を借りると「中国語をリミックスした」訳です。

例えば「大」と言う字は中国では「ダィ」と発音するので、まず日本人が発音しやすい「ダイ」にする(音読み)。そして同じ意味で日本人が使う「おおきい」と言う表現にもこの字を使うことにして「大きい」と言う形で使うことにする(訓読み)。そのようにハイブリッドに使用しつつ、さらに日本に馴染むように「仮名」も生み出す訳です。列強国から送られてきたものを、素直にまんま受け取るのではなく、日本に馴染むように微調整して受け取る。その結果が「たらこスパゲティ」「ライスカレー」から「日本語ラップ」にまで連綿と受け継がれていると。

自分は幼少期にフィリピンに住んでたことがあるんですが、ご存知のようにフィリピンでは公用語はほぼ英語になっちゃってます。もちろんタガログ語もあるし、自分のいた島にはビサイヤ語と言うのもありましたが、完全に用途や相手によって使い分ける形で存在していて「リミックス」にはなってませんでしたが、普通はそう言うもんでしょうね。結果「訛り」くらいでしかご当地性を残せてない国や地域が多数な気がします。そう比較すると日本の独自性は分かりますよね?そう言うちょっとした「リミックスの仕方」が日本らしさなんです。

その「日本らしさ」の情報量には正直追いつけないほどでしたが、最後の章にまとめられていた言葉は個人的にすごく響くものでした。それは明治時代に活躍された僧侶であり哲学者、清沢満之についてでした。

西洋の「二項対立」によるロジックの組み立てに疑問を持って、日本人はむしろ「二項同体」と言う考え方を持つべきだ。「二項対立」ではなく「二項同体」。二つのもののどちらかを選択するのではなく、つまりどちらかを切り捨てるのではなく、あえて「二つながらの関係」に注目しようと言う態度です。

一神教的ではなく多神教的という言い方でもいいでしょう。それこそが日本人が本来しっくり来る捉え方ではなかったか?と。そう言うことを明治時代にどれだけ多くの学者が考えてきたか?を知ることは凄く面白いです。まさに現在「グローバリズム」と言う名の黒船が世界を日本を席巻してる中、我々はどうすべきかをちゃんと考えねばならないタイミングですからね。改めて明治維新の頃は、今こそ参考になる思想に溢れているんだなと再確認しました。

もちろん欧米の方が優れた捉え方の案件もあるでしょう。だからと言って闇雲な自国批判や、真逆の自国賛美はいずれも二項対立的ではないか?と俺も思います。「どちらも受け止める」ことが出来てきたはずの日本人として、標的を定める形ではなく、世界に「まぁまぁ」となだめられるような日本になれたら、それこそがこれからの日本の日本的な役割なんじゃないだろうか?と思う今日この頃ですから、そんな俺にとっては素敵な史実と実例に溢れている本でした。

近々角川武蔵野美術館にも行ってみようと思います

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