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Herbie Mannが再評価される時は来るんだろうか? #1

 Herbie Mannというflute吹きのレジェンドがいるのをご存知だろうか。1930年生まれの2003年に召されたNY生まれのアメリカ人。20代すなわち1950年代からリリースキャリアを重ね、彼がリーダーのオリジナルアルバムだけでも100枚前後はあり、レコード屋に足を運ぶ者なら大抵は知っている人だろう。なにせ、300円とか500円とかの廉価コーナーの常連だからだ。

 flute奏者は俺の周囲にも多くいるけれど、なかなかに難しい楽器だ。saxほど目立てないというのもあってか、sax吹きが「fluteも出来ますよ」というスタンスでやっている方がほとんどな印象。例えばHip Hopネタとしても有名な"Love Theme From Spartacus" #YusefLateef もジャケットを見て分かる用にメインはsaxの人。 

 そんな中Herbie Mannはfluteメインでキャリアをやり切ったという稀有な人ということができるだろう。唯一対抗馬は #HubertLaws ぐらいか。もう一人女性に #BobbiHumphrey という人もいるが、この人はそこまでfluteが上手くはなく、実際途中からそのキュートな声で歌メインに転向していくキャリア。そのHubert LawsとBobbi Humphreyは俺がどうこう言うまでもなく #レアグルーヴ 文脈で既に大きな再評価を得ているアーティストなんだが、ふとHerbie Mannは?と考えると、実に微妙なキャリアなのだ。

 どう微妙かというと、ジャズ文脈でもレアグルーヴ文脈でも評価されにくいと言うこと。演奏はなんなら今あげた4人の中でもずば抜けてfluteは上手いと思うが、音楽性の欠如とでも言えばいいんだろうか。筋が通ってないと言うべきだろうか。カメレオンのようにというか、その都度、時代の流行に乗っかってカバーをしたり、そのご当地のミュージシャンとコラボしたりと言うキャリアの羅列。一本筋が通ってるのは「fluteが上手い!」と言うだけで、買うアルバムによって音楽性が全く違うのだ。

 とは言え、一つレアグルーヴ文脈的に評価できるのは、 #RoyAyers を育てた先輩のうちの一人ということか。60年代後半からHerbie Mann名義の作品やツアーで彼を積極的に起用して、色々と教えたらしい。(HerbieはRoyの10歳年上だしね)。この曲なんてストレートアヘッドなジャズ曲だけど、演奏のクオリティは二人とも素晴らしい。ちなみにこれは曲はRoy Ayersによるもの。

 あとはボサノバ初期から積極的に演奏してきたし、と思ったらレゲエもやってたし、果てはディスコにも積極的に手を出すという雑食ぶり(笑)。で、シングルチャートだけで言うなら、1975年のそのディスコ曲 "Hi Jack"がBillboardダンスチャート1位というのがキャリアベスト。ジャズ系ジャーナリストにはもちろん酷評の嵐だったそう。

 この後1978年にも再びディスコに向かう。組んだプロデューサーがなんと #PatrickAdams というディスコシーンの精鋭プロデューサー、ビートこそ立っているんだけど、うーん、このジャケットと曲はなんともB級感が否めないなぁ、、、

 こんなキャリアなもんだから、廉価盤コーナーに数多レコードが置かれている理由も想像がつくだろう。そしてその「なんでもあり」な感じはついに日本にも触手が伸びてきて、こんな作品も作られていた。

 当時日本で大ヒットしていた #小坂明子 「あなた」をご本人も呼びつつのカバーをしてしまうという。。。しかも時間のない中の急遽セッションみたいな雰囲気で、まずfluteでメロディを奏で出して、意味不明の曲の終わりがけのところから突然スタジオに到着したかのように小坂明子が歌い出す。ちなみにドラムは #SteveGadd ベースは #TonyLevin 、なかなかの精鋭。どうやら来日ツアー中の1日にスタジオを押さえて急遽取られたものだそうで、その際に録られたアルバムがこれ。

#ハービーマン 「日本の印象」 1974

 もうこれは営業セッション以上のものではないね。なにせ #かぐや姫 「神田川」 #フィンガー5 「個人授業」なんかまで取り上げていて、グルーヴィーでもいい感じのラウンジー〜ジャズ感もなく、まさに営業演奏。これはあんまり売れなかったのか?レコ屋ではあまり見かけないね。 

 こんな適当セッションを、fluteの上手さだけでこなしてリリースしちゃう感じは、そりゃあ微妙としか言いようがないよねぇ。。。

 やはりHerbie Mannは再評価には程遠い、ただのセッションマンだったんだろうか?

#2 につづく

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