見出し画像

売れない方がいいレコードの出し方があったなんて、、、

レコードにせよなんにせよ、それがメジャー配給にせよインディーズにせよ、音源をリリースする以上はどこもかしこも「売れてほしい」「売れたらラッキー」と思っているはず、、、と思ったらまさかのそうじゃないタイプのレコードがUSにはあった。

通称"Tax Scam"(税金詐欺)レコードと言われるそれは、形だけ数十枚から数百枚のプレスして、帳簿にはもっと多くの(数千枚〜数万枚?)のリリースとし、結果全く売れずに手元に残ってしまったとすると、かなりの赤字額が帳簿に残る。その赤字金額分が税金控除(免除)となるような法律が1980年頃までアメリカにあったそうだ。その方法を見つけ出した人たちが、税金控除目当てで数百種類はあろうかというレコードが作られた、そんな時代があった。つまりそれらのレコードは「売れないでいてほしい」レコードなのだ。

大抵はある種のブート盤のような、聴くに耐えないものだったそうだが、一部の「脱税レーベル」には素晴らしい作品も残されていて、レコードディガーたちが90年代以降などに発掘していく。中でもダントツ有名になった作品は"I Believe In Miracles"で有名な #JacksonSistersのアルバムだ。あんな名曲が何故リアルタイムで売れなかったんだろう?と常々思っていたが、理由はそこにあったのだ。

そしてソウルファンに最も有名な「脱税レーベル」がTSG。そこにはスウィートソウルからファンクからラテンからレゲエまで多くのブラックミュージックが、なんなら本人たちの許可も得ずに、適当なジャケットをあしらってリリースされていた。

俺が持っているものの一部を並べるとこんな感じ。ちなみにこの女性たちは全くグループと関係ない。黒人コーラスグループだったり、ラテンバンドだったりするので、なるべく内容と関係ないものにしたんだろうか。オリジナルはどれも10万円以上するようなものなので、自分は再発OKタイプなので、これらは全て再発もの。

左上から
#RicardoMarreroAndTheGroup "A Taste"
#TheUltimates "You're My Lady"
#Spice "Let There Be Spice"
#TheTopics "Giving Up"
全て1976年リリース

このどれもが名曲が入っていて素晴らしいのだ。そして俺は聴けば聴くほどに、複雑な気持ちにもなる。彼らはレコードこそこうして評価されていても結果、アーティストとしては全くと言っていいほど大したキャリアを残せていない。渾身の作品を「売れない方が助かる」レーベルから、しかも勝手に出されたりしたことで、次なる展開に進めなかったと推測され、しかもこうしてリリースされているレコードからの印税もちゃんともらえるような契約じゃないと思われ、、、曲や歌や演奏の素晴らしさを感じれば感じるほど、悲しさも同時に湧き上がるのだ。

ちなみにこれらはほとんどが現在サブスクでも聴ける。それもきっと彼らの元には届かないだろう。はした金で買取状態であろうこれらの音源は、どれだけ売れても原盤保有者には届けど、演者には届かないのだ。もちろん作曲家や作詞家には行くはずだが、、、それもどうなってるか怪しいものだ。そもそも50年近く前の演者に連絡を取ること自体が難しいだろうし。

いろんな複雑な気持ちになりながらもなお、こんな素敵な楽曲がレコードとして残ったことで、こうして今聴ける状態にあることは前向きに捉えよう。これだからレコードディグは沼なのだ。

レコードの沼からお届けしました。

最後にThe Ultimates の名曲"Girl, I've Been Trying To Tell You"をどうぞ


よろしければサポートをお願いします!収益はSWING-Oの更なる取材費に使わせていただきます!