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映画「サマーオブソウル」レビュー

楽しみにしてました。そりゃもう当然見て来ました。
「サマーオブソウル〜(or When the Revolution Could Not Be Televised)」
1969年、つまり俺が生まれた年の夏に、あのWoodstockよりも数ヶ月前にNYで開催された、「黒人による黒人のためのフェス」Harlem Cultural Festivalがあって、かつその映像が残ってた!なんて情報を聞いてSOUL大学なんて自称している俺が行かない訳が無い。ていうか正直、知らなかったことを悔しく思うくらいのインパクトですよ。

てところで感想を色々とまた記しておくわけですが、ある種ちゃんとした説明は例えば吉岡正晴さんのこういう記事をご覧いただくのが一番ですから、俺はまた俺の視点で色々と記していこうと思います。
映画『サマー・オブ・ソウル』は、1969年のカルチャーがすべて飛び出てくるタイム・マシーン by 吉岡正晴
さらに深く詳しく!と思う方は雑誌「BLUE&SOUL records」の特集号をどうぞ!

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自分はヘビーなミュージックリスナーでありつつ、演者でもあり、かつ「どうすれば中高生にこの魅力を伝えられるのか?」と常日頃考えている。そんな俺からしたら、この映画は「個人的に素晴らしすぎて楽しすぎる」側面と共に「これは中高生〜ソウル初心者、アメリカ音楽に興味ない人に伝わるものなのか?」というのがまず浮かんだことだ。なので、前半を個人的に面白かったところを記して、後半をいくばくかの疑問点、という形で記させてもらおうと思う。あ、先に言っておきますが、「アメリカンユートピア」はどちらかと言えば最終的には疑問点の方が多い映画でしたが、この映画は楽しいことの方が多かったです。ご安心を。

「アメリカンユートピア」レビュー も良かったらどうぞ

詳しい時代背景やこの映像の意味などはすっ飛ばしまして、個人的に印象に残ったシーンを列挙しよう
■Stevie Wonderのドラムソロ自体はさておき、そこから始まることで、監督がドラマーでもある?estloveであることの主張にした、というのは素敵な編集技法だね。

■The 5th Dimensionは良かったね。黒人5人組なのに白人と思われていた話からの、最後Billy Davis Jr.のシャウトするところ、そしてMarilyn McCooの美しさ、いやFlorenceも可愛いかった。ミュージカル"Hair"の曲をカバーするに至った逸話もいいし、何より未だ元気なMarilynとBillyの二人が出演してコメントしてるのもいい。ついでに新譜のThe Beatlesカバー集もいい。

■Mahalia JacksonとMavis Staplesが前年に暗殺されたキング牧師に捧げる"Precious Lord"ももちろん良かったんだけど、Mavisがマイクを奪いに来たようにも見えたね。あと吉岡さんの記事にも出てたけど、その役は実はAretha Franklinだったという話もすごいな。それをドタキャンするArethaも彼女っぽいけど、、、で、Mahaliaは2年後に病で亡くなっちゃうというね。

■Gladys Knight & The Pips良かったな、ていうかGladysが可愛い、まだ25歳くらいなのか。後ろの男たちの歌や踊りも最高だしね。こうやって女性ボーカルが沢山出てると、やはりGladysの歌は暖かくて好きだなと再確認する。Mavisとかはちょいとがなりがちで雑なんだよね。この時Mavisは30歳、姉さんもう少し余裕持って歌えばいいのに・・・ま、スタイルっちゃスタイルか。

■個人的にはラテンのコーナー、良かったなぁ。Mongo SantamariaもRay Barrettoも素敵。色々な黒人音楽がこのように並んでいる中、今でもどの世代にも伝わる楽しそうな音楽は実はこのラテンコーナーなんじゃないか?て思った。

、、、などなどかな。もちろんSly&The Family Stoneも良かったけど、音がちと悪いのと、ちょいとセッションが勢いで雑な感じはしちゃったかな。Nina Simoneはうーん、この頃になるとちとヘビーすぎるかな。そう、NetflixのNina Simoneドキュメンタリーにはこのシーンすでに使われてたね。それを見てて「こんなフェスあったんだ」てそういや思ってたな。なんにせよ1969年ていう音楽的にも最高な時期のあらゆる黒人ジャンルが出てる最高なフェスだったというのは間違いない。

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、、、で、ていう話ね

正直ね、この映画はこの史実を伝える入り口としてはいいかもしれないけど、いずれDVDとかになるときにはBOXセットとかにしてもらって、時系列で各アーティストのライブをフルで見たい!解説は無しでもいいよ。せいぜい副音声で。そっちの方がソウルファンとしては見たい。1969年のアメリカの惨状と、2021年現在の惨状を並列させていまにも伝わるメッセージを!て編集はねぇ、、、もちろん?estloveとしては最善な選択、最高な編集をして仕上げてある映画だと思う。素晴らしい編集だと思う。。。けれど必ず但し書きがつく、「アメリカで上映する映画として」の最善に過ぎないのだ。

音楽マニアな俺的にも1969年なんてどのジャンルも、ロックもフォークも含めて、素晴らしいものが沢山生まれた時期。それが生まれる理由に市民の苦しみがあるのは当然な説明だけれど、たった今も色んな惨状がある。そしてこの描かれ方だと、今も惨状が続いているということは、今も素晴らしいものが生まれようとしているということだ!とでも言いたげな編集とも言える。果たしてそうか??それはもう別問題だと俺は思っているんだ。

そもそも、昔と今が繋がっている、なんてわざわざ説明しなきゃいけないんだろうか?説明しないと分からない?いや仮に若い人がこの映画を見たとしてその解説に、「ふむふむ」と思ったとして、でも結果残るのは「説明された言葉」だけじゃないかな?俺が言いたいのは、例えばこのフェスを映画Woodstock方式でフェスレポのような映画にしたとしたら、「なんだこれ?」「何盛り上がってんの?」「この人やばい」「みんなおしゃれだな」、、、などなど各自で気づくことがあって、気づいた人がそれについて調べて、て流れがあるでしょ?過剰な解説付き、注意書き付きの社会はどんどん皆自分の頭や身体で考えなくなっていく、、、と思ってるんだけどねぇ。まぁ、現状、見に行って喜んでるのは40代以上ばかり、な印象かな。
(注:ジャーナリズム自体はむしろこれから更に必須と思ってるんですけどね)

あ、その点、Arethaの"Amazing Grace"はまんまドキュメントだったから、あれはいいんですよ。あれは一人のシンガーのパワーを目撃&体感するための映画だからね。知らない人、興味なかった人に伝えるには、「発見」させないとダメだと思うんだよな。新大陸のように。。。でも今のビジネスの在り方だとそんな悠長に構えてくれるクライアントはいないかな。。。

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では最後にこの映画にも出てくるEdwin Hawkins SingersのOh Happy Dayでも聴きながらお別れしましょう。

そう、この曲自体はもちろん知っていたけど、その出自をちゃんと確認したことがなくて、今回知ったのは、このEdwin Hawkinsのグループがフェスの前年1968年に発表して大ヒットしたんだね?しかもゴスペル界初のポップチャートでトップ5に入る大ヒット。そして更に調べたら、この曲は60年代にアメリカで大流行していたボサノバを取り入れた曲なんだと!そんな解釈したことなかったけれど、言われてみればボサノバ的と言えなくもない。この曲の入ったアルバムを聴くと、よりボサノバアレンジな曲があったりするからね。そうやってなんでも吸収していって新しいものを作り出す黒人のパワー、素晴らしいね。

そんな黒人音楽のパワー。ジャンルが何になろうとも黒人音楽は肉体的。それを確認できるという意味でも素晴らしいイベントだったんだなぁと思います。それを確認するためにも是非ご覧あそばせ。分脈や政治的な裏話はひとまずスルーしてもいいので笑

渋谷の地下にもこうやって宣伝されてます。いろんな世代の人が見てくれるといいなぁとSOUL大学的にも思います。

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