見出し画像

画人たちの仏教絵画 --如春斎、再び!--

西宮市大谷記念美術館で「画人たちの仏教絵画--如春斎、再び!--」を見ました。大谷記念美術館は、阪神神戸線の香櫨園駅から歩いて5分ほどの閑静な住宅地の中にある美術館です。

西宮市大谷記念美術館の看板

勝部如春斎は西宮の酒造業の名家で生まれた江戸時代中期の狩野派絵師です。大谷記念美術館には地元ということもあり如春斎の展覧会を2017年にも行っていて(もちろん見に行きました)、今回は彼の「三十三観音図」を始めとする仏教絵画に焦点を絞り、関連した他の画人の絵画も同時に展示をして江戸時代の仏教絵画がどんなものであったのかを眺めるような内容になっていました。

美術館自慢の庭園を眺められるロビー

「三十三観音図」といえば東福寺の明兆筆のものが有名ですが、仏教絵画というのはこうした古い偉大な画人の描いたものを学びながら描くもののようで、如春斎も明兆の描いたものを参考に三十三観音図を描きました。今回は、如春斎の三十三観音図を全三十三幅、そして同じ明兆筆を参考に描いた原在中の三十三観音図も三十三幅ずらりと1室ずつ使って堪能できる贅沢な展示でした。現在、京都国立博物館で東福寺展が開催されていて(前売りを買っているのですがまだ行けていません。そのうち必ず行きます)、そこで明兆の絵画、三十三観音図の一部も見られるようになっているので、このタイミングでの内容ではないかと思います。

フライヤーより原在中と勝部如春斎
三十三観音図のうち 《中尊 比丘比丘尼優婆塞優婆夷身》

上の図はフライヤーから拝借したので鮮明ではないのですが、左が原在中、右が勝部如春斎の《中尊 比丘比丘尼優婆塞優婆夷身》です。同じ明兆のものを参考にしたとはいえ、それぞれの流派も違い、個性も違うということでかなり差異が出てくるものだなあと思います。如春斎のほうは、観音様の表情が優しく柔らかいように感じました。

原在中 三十三観音図のうち 水月観音(現辟支仏身)
絵ハガキより

原在中の他に、狩野派からは狩野探幽、清原雪信や林丘寺光子内親王の女性画人など、円山派を中心とした大坂画壇からは池大雅の般若心経の書かれた白衣観音図、呉春、田能村竹田、耳鳥斎の《野菜涅槃図》もありました。
いただいた作品リストの用紙には、主な仏教画題についての解説が書かれていて、それを読むのも勉強になりました。池田継政の《稚児文殊之図》は、文殊菩薩が年若い稚児の姿で描かれていて、こんな二次創作みたいなものを描いても大丈夫なのかなど思いながら見ていたのですが、画題の解説によると日本の中世に成立した特殊な形で神仏習合の所産であると書かれていました。

11月26日まで開催されています。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?