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コレクション大航海 蝦夷発→異国経由→兵庫行

昨年の9月から臨時休館していた神戸市立博物館がようやく開館し、コレクション展が始まったので見に行きました。

入り口左側
入り口右側

「コレクション大航海 蝦夷発→異国経由→兵庫行」と題されたコレクション展ですが、まず最初の展示室には古地図がたくさん展示してあり、16世紀から19世紀にかけて、北海道が地図にどのように描かれてきたかに着目した展示になっていました。
オルテリウスの世界図やタルタリア図に描かれた日本列島には北海道らしい島は描かれていません。ていうか東北地方も無いみたいに見えます。ヨーロッパの人たちからすると、アジア大陸と北アメリカ大陸の間にある小さな陸地くらいの認識だったことが分かります。これが、少しずつ日本列島の形が正確(に近い)に近付いていき、それでも北海道は実際よりも小さい形に描かれたり、変な形に描かれたりしていました。

林子平『蝦夷国全図』天明5年(1785)

日本国内で北海道の調査がされたのは江戸幕府による国絵図編纂事業、1644年が初めてのことだったそうです。蝦夷地の地図を命じられたのは松前藩でしたが、正確には程遠いものでした。
18世紀末になり、ポーランドがロシアの千島・北海道進出の野心を持つようになったことが知られるようになると、国内でも北方への関心が高まりました。幕府の「蝦夷地探検隊」による測量調査が行われ、次々に地図が作製されるようになったようです。上の林子平のものもその頃のものです。

伊能忠敬「伊能小図 北海道」文政4年(1821)頃

上の地図は伊能忠敬のものですが、伊能は実際には南岸のみ測量をしていて、その後は間宮林蔵が受けついで沿岸測量を担ったそうです。その正確さには驚きます。急に、この図で北海道の形が明らかになった感があります。
蝦夷の測量や探検で、アイヌの人たちに聞き取った文化の様子や、生活の様子を描いた松浦武四郎の「蝦夷漫画」など、とても興味深く面白い内容でした。

南蛮屏風 狩野内膳 (重要文化財)

上の南蛮屏風は博物館に入ってすぐ右側の展示ケースに展示されていました(コレクション展ではないです)。
蝦夷の地図の次は江戸時代の異国趣味の美術の数々でした。神戸市立博物館には池長孟氏の南蛮美術コレクションがたくさん所蔵されているので、その中からの展示が多かったです。面白かったのは歌川豊春・北尾政美の「浮絵付き のぞきからくり」で、レンズのついた覗き穴から絵を見る仕組みです。残念ながら絵をセットしていなかったらしくて、白黒の線画の提灯みたいなものが見えるだけ(でも遠近感が分かった)でしたが。

谷文晁 「ファン・ロイエン筆花鳥図模写」

上は谷文晁による西洋画の模写ですが、元の絵のサインまで模写してあり、面白いと思いました。その他、司馬江漢の異国工場図(司馬江漢大好き)や反射式のぞき眼鏡、洛中洛外図など、こちらの博物館のお得意な分野だけあって面白いものがたくさんでした。

月岡芳年 「芳年武者无類 平相国清盛」

最後のコーナーは「読み直す、兵庫津」ということで、神戸市兵庫区に位置する兵庫津に関する資料の展示です。奈良時代に整備された大輪田泊が、平安時代の末に平清盛によって修築され(福原遷都の時ですね)人工島「経ヶ島」が築かれ、日宋貿易の拠点となりました。その後、大輪田泊は兵庫津と呼ばれるようになったそうです。

国宝 桜ヶ丘3号銅鐸

コレクション大航海を見終えたら、通常のコレクション室で銅鐸やザビエル(今日はレプリカでした)を見て、その奥のコレクションも見ました。
上の写真は桜ヶ丘3号銅鐸で、先日出雲に行った時に島根県立古代出雲歴史博物館で見た銅鐸(加茂岩倉31、32,34号銅鐸)の兄弟銅鐸です。

安全吸入器 白井松之助製 明治時代中期

そして面白かったのが江戸時代から明治時代にかけての医療に関する展示です。有名な解体新書から、外科手術図、解剖図などが展示されていて、それに対応する形で、びいどろ・ぎやまん・ガラス展示室にはその頃のガラスの理化・医療器具の展示がされていました。ガラスの吸い玉や吸入器、そして義眼サンプルなどです。ガラスの義眼は綺麗でした。

今回の展覧会ではオールカラーの8ページのパンフレットがいただけて、きれいな図版と丁寧な解説が嬉しかったです。

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