画鬼河鍋暁斎×鬼才松浦武四郎
遠征2日目は静嘉堂文庫美術館へ。「画鬼河鍋暁斎×鬼才松浦武四郎」を見に行きました。
東京駅から歩いて美術館に向かいました。静嘉堂文庫美術館は国宝の曜変天目(稲葉天目)を所蔵しており、この日も展示が行われていました。案内の方に、「今の時間なら人が少なくて、ゆっくりご覧になれますよ」と仰っていただき、いろいろな角度でじっくりと見ることができました。
河鍋暁斎は江戸末期から明治にかけて活躍した絵師、松浦武四郎は所謂好古家(コレクター)や探検家、著述家など様々な顔を持つ人で、なんと「北海道」の名付け親でもあるそうです。
上の「地獄極楽めぐり図」は、小間物問屋の娘・田鶴が14歳の若さで亡くなり、彼女の追善供養のため暁斎が頼まれて描いた画帖で、亡くなった田鶴を阿弥陀三尊が迎えに来る来迎図に始まり、彼らに導かれて冥界を巡って歩く田鶴の姿が35の場面にわたって描かれています。とても長い画帖なので、これを4期に分けて展示していたようです。私が見たものは最後の4期でした。以前、他の美術館でも一部が展示されていた時に見て、亡くなった娘が極楽往生できるように願う親心、それに応えて精緻な絵で大作を描いた暁斎の優しさも感じ、絵の中の田鶴さんが可愛らしく、そして楽しそうに描かれていて胸打たれる作品だと感じ、思いがけずまた見ることができて良かったです。
そして今回の展覧会の目玉が「武四郎涅槃図」です。上の図を見ても、何のこっちゃと思われるかもしれません。これは、松浦武四郎が自分の収集したコレクションたちに囲まれて安らかに眠っている絵なのです。自慢の「大首飾り」を首にかけて、真ん中で横たわっているのが武四郎です。
上の写真は武四郎が集めた古物のコレクションで、これらが涅槃図に一つ一つ描かれているのです。ご丁寧に、それぞれが嘆き悲しむ姿になって描かれており、実物を見て作品を探し、「あった、あった」と楽しめるようになっています。コレクションの中には白衣観音の絵画などもあり、暁斎がそっくりに描いているのが面白かったです。通常の釈迦の涅槃図だと、釈迦の横たわる上空には母親の摩耶夫人が天空からやってくる様子が描かれるのですが、武四郎の上空には、彼のコレクションの浮世絵の美女が3人いたりして、考えてみるとかなり馬鹿馬鹿しいというか、無茶なテーマというか、笑えるというか、武四郎さんの足元に黒い着物を着て嘆き悲しむ奥さんが描かれていて、それを見たらもうダメでした。
暁斎は自分の日記に武四郎のことを「いやみ老人」などと書いていたりして、そういう軽口を叩いても許し合えるような仲であったようです。
「武四郎涅槃図」、非常に面白いですし武四郎のコレクション自体もなかなか味があるものが多く、これはとてもおすすめの展示です。
静嘉堂文庫美術館のあとはアーティゾン美術館で「ブランクーシ 本質を象る」を見て、ああブランクーシは自分にはかなり難しかったなと思ったり、そのあと東京駅の中のステーションギャラリーで「どうぶつ百景」を見たりしました。
JRの駅の美術館だけあって、明治期の馬車鉄道の描かれた錦絵の特集があったりもして面白かったです(馬車鉄道って馬車がレールの上を走るやつなんですね、初めて知ったかも)。
帰りの飛行機が遅れたりもして(羽田を離陸するまで時間がかかったのと、伊丹のゲートが埋まっていてなかなか入れなかったりもした。多分神戸の胴体着陸の影響?)、疲れ果ててしまい記録が翌日になりました。東京遠征は疲れるなあ。