向井久夫とQ
スウィング公共図書館(=スウィング)にて開催中の「詩人・向井久夫 -愛と苦悩と下ネタの往復ビンタ-」展。
連日懐かしい人、はじめてスウィングを訪れる人、たくさんの方々にご来館いただいている。
今日は朝から僕が高校生の頃の同級生が愛媛から来てくれて、約30年ぶりの再会に懐かしいやら恥ずかしいやら。
お土産に愛媛の魂・ポンジュースをもらい、そのお返しにスウィングのグッズをたくさん手渡した。
午後1時半。Q氏と向井さんに会いに行く(病院と相談の上、2日に一度、代わる代わる2人ずつ面会させてもらっている)。
実はQ氏は向井さんの「師匠」とも呼べる存在である。
2013年、Q氏のあまりにも自由な、心の内をそのまま垂れ流すような表現に感服した向井さんは「なかなかこんな風には書けんなあ」と首をかしげながら、楽しそうに詩作をはじめたのだ。
やがて向井作品の人気が出てくるにつれ、Qは嫉妬の鬼と化したそうな。
そして何かと難癖をつけ、向井にキツく当たるようになったそうな。
困った村人たちが「いやいや、あなたが師匠なんですよ、あなたの影響で向井は詩をかきはじめたんですよ」と説明すると、鬼は瞬く間に心を鎮め、菩薩に姿を変えたそうな。
これは今も語り継がれるスウィング奇譚集の名エピソードだ。
そんなQ氏がベッドの傍らで向井さんの詩『いきる』を朗読していた。
十余年の付き合いとはいえ、あまり言葉を交わすことはなかった2人。詩人同士の美しい光景だった。
向井さんは前回会った10日前よりもずっと弱り、話しづらく、聞きづらそうだった。時折、意識の混濁もあるようだった。
それでも自身に比していつまでも元気なお父さん(九十代?)のことを、「あれはおかしい。僕がこんなんやのにまだ健康体や。A型かB型か知らんけど」と、冗談とも本気ともつかない向井節を一撃炸裂させてくれた。
僕もQ氏も笑った。「また来ます」「ありがとう」。手を握り、そうして病室を後にした。