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スマホをいじる感じで100号の絵を描くことはできるのか?

あふる君はご飯を食べるようにスマホをいじり、スマホをいじるようにプラモデルを作り、プラモデルを作るように画用紙に絵を描き、画用紙に描くように100号のキャンバスに絵筆を走らせる。

つまり何事に対しても気負いや緊張というものがほとんど感じられず、物事への姿勢がとっても公平なんである

「いろいろなことにチャレンジしたい」とその姿勢はいたって意欲的。

これまで使ったことのない画材にも、周囲がすすめるがままにドンドン挑戦する。

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しかしその姿から僕が感じ取るのは初体験の緊張でも熱いチャレンジ精神でもうまくいかない葛藤でもなく、やはりまるで、これまでもずっとそうだったかのような、あまりにも普通すぎる「張り合いのなさ」だ。

彼は近年激増している「絵を描くのが好き!」という理由でスウィングにやって来たニューカマーのひとりなのだが、僕はそのあまりにも自然で公平な態度を見続けるうち、ひとつの疑いを抱くようになった。

この人はホントに絵を描くのが好きなんだろうか?

ちなみに彼は「ゴミブルーになりたい」と、もうずいぶん前からその一員になっているのだが、記念すべきデビューの日の驚きは脳裏に焼き付いて離れない。

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めっちゃ青くなってるのに、やっぱりめっちゃ普通だったあふるブルーは、普通に着替えて、普通に歩いて、普通にゴミを拾って、普通にコンビニに入って、普通に買い物をしていたのだ。もちろんそのときもこう疑問を持たざるを得なかった。

この人はホントにゴミブルーになりたかったのだろうか?

褒めているわけでもなく、けなしているわけでもない。でも内心スゲーなと思っている。

実際のところ彼は絵を描くのが取り立てて好きなわけではなく、ご飯を食べるのと同じくらいに、スマホをいじるのと同じくらいに、プラモデルを作るのと同じくらいに、ほどほどに好きなんじゃないかと思うのだ。ゴミブルーも然り。

本来、芸術……いや表現することが人ひとりが生きる上で必要不可欠な要素のひとつだとするならば、彼はそのことをごくごく普通に当たり前に、つまり何らのドラマ性も伴わずに、本来あるべき姿のままに表すことができる稀有な人なんじゃないだろうか。

ドラマ性や特殊性を伴わせることは意外と簡単で、実は普通がいちばん難しい。

たとえばスウィングが拠点とする京都・上賀茂において、ゴミブルーという圧倒的異物が普通になるには随分と長い時間がかかった(まあ、そりゃそうだ)。

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あふる君はおよそ1年前、2019年の夏、スウィングにやって来た。

しばらくの間は長らく出口のないままに抱え続けてきた、日々を生きる上での悩みや困りごとの数々を「誰に相談したらいいのか分からなくって」(笑顔)を合言葉のように、深町さんや僕に、フルスロットルのポルシェが狭い京都の一方通行の路地を逆走するかのような勢いでぶつけてきて(え? どういうこと??)、そりゃあまあ三者三様それなりに大変だったわけだけれど、今はもう、そうしたしんどい事々にも大方整理がついて、とても落ち着いた様子だ。落ち着いて普通だ。

来る10月30日(土)より開催する展覧会「FLOWERS Enjoy! Open!! Swing!!! Vol.7」では、そんな彼が見事に普通に描き上げた100号の絵も見物のひとつである。

ほんっとに普通だった。楽しそうでもなく楽しくなさそうでもなく、いつものように実に普通だった。

そして達成感や不全感をほとんと感じさせることなく、そこそこのお昼ご飯を食べ終わったかのように、まあまあのプラモデルを完成させたかのように、ただ描き終わり筆を置いたのだった。

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いやはや、そんな普通から生み出されたお花畑の美しいこと!!

でも僕はこれを、彼だけの仕事だとは全く思っていない。

あり余る生活上の悩みをひとつひとつ彼と一緒に解決した深町さん。制作におけるトモダさんのアドバイスやサポート。最近プラモデルを通してめちゃ仲が良いアート会長と過ごす時間。そのプラモデルを気前よくあげてしまう京一さん。そして彼が1日の大半を過ごすスウィングに集う人々が作り出すリラックスした雰囲気。

それらが折り重なり合うようにして、彼の幸福なお花畑は生み出されたのだと思う。

すべては人と人との関係性によって成り立っていて、それがあふる君の、スウィング史上初の100号のお花畑として結実したことが、僕たちのチームワークのひとつの達成のようでとても嬉しい。

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全国各地から届けられた、実に180点(推定)を超えるお花(お花畑)が会場を彩ります。

展覧会「FLOWERS Enjoy! Open!! Swing!!! Vol.7」は2020年10月30日(金)から11月3日(火・祝)まで。

幸福なお花畑にぜひぜひ遊びにいらしてください♡

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