続・華麗なる手抜き
スウィングの詩作の歴史は長いが、常日頃の活動にしている人は少ない。
亡くなった向井さんとかQちゃんとかnacoさんくらい。
nacoさんは元々「詩が書きたい」とスウィングに入った人だけれど、すぐに絵の方にハマってしまって、これまで詩を書くのは時々だった。それが昨年の「第28回NHKハート展」に初入選したこともあってか、最近はモーレツに書きまくっている。
しかも冗長になりがちだった言葉がどんどんシンプルになって、短い表現の中で感情を表せるようになったり、長い詩であっても推敲が重ねられて、やはり感情が真っ直ぐに伝わってくるようになった。
詩というのはもちろん何を書いたって自由だが、「コンクールに入選したい」といった明確な目的がある場合はそれなりのトレーニングというか、方向性を持った創作姿勢が必要になる。
というわけで、「NHKハート展に入選したい!」という5人と先日詩作の時間を持ったのだが、増田さんはおふざけや下ネタを禁止して照れずにマジメなテーマで書く、Qちゃんは同じテーマで10作品くらいに取っ散らかってるものをひとつにまとめる、たいと君は何を言ったって聞いちゃくれないし何が飛び出すか分からないからいつも通りフリー、nacoさんはほぼ完成しているいくつかから2作品に絞って推敲……といった具合に方向性を定めて、各々集中した時間を過ごした。
ひさしぶりの真面目モードに入った増田さんなんて書く前から感情が溢れて泣いてしまって、その日の帰り道も涙が止まらなかったらしい。そんな姿を見てもらい泣きしてしまったことは言うまでもない。
僕は詩のワークショップを稀に頼まれることがあるのだが、1度も受けたことがないのは、その人のキャラクターをよくよく知らないと無理だからだ。 初対面の人から言葉を引き出す自信はないし、たぶんこれからもない。
ところで5人目の西谷君は開始時間になっても姿を現さなかった。
沼田君は「スケジュール把握がうまくいかなったんじゃないか」なんてマジメ顔で言っていたが、「書く気があれば参加するんじゃないでしょうか?」というあやちゃんの意見に全面同意。
10日前のブログに「前に受かったやつ、もっかい出せるか?」という異次元の手抜きについて書いたところだが、西谷君はその後も変わらず「ただ入選したい」だけで、「書きたいことも書く気もない」らしいのである。
書かなければ絶対に入選できないのに。ていうか応募資格すら持てないのに。頭が混乱してしまうが、実に西谷君らしい。
<結果ではなくプロセスが大事>ってよく言われるし、僕もそう考えがちだ。
が、<プロセスゼロで最高の結果だけ欲しい>という考え方だって、怠惰だろうがなんだろうが普通にあるものだし、「そんなんでホンマにええんか? それでホンマにオモロいか?」なんて疑問もただの思い込み。聞いてないけど西谷君ならば平気な顔して「ええよ、受かったら」と答えるに違いない。僕だって空から大金がパンパンに詰まった小包が降ってきたら迷いなくいただく。わがままを言えるならば新札は馴染みがなくって落ち着かないから全部旧札でお願いしたい。
そんなわけで西谷君は、他の4人が真剣に黙々と詩作に集中したその翌日、「書きたいことも書く気もないがただ入選したい」状態そのままに、ものの数分間で一篇の詩を完成させたのであった。
さあ、どうなる「第29回NHKハート展」(2025年度開催)。
結果はどうあれ、2日間の詩作を通じて人間の奥深さというか、ややこしさを垣間見まくれて僕は楽しかった。
言葉は人を深く傷つける危ない武器になることもあるけれど、使い方にさえ気をつければ安心や平穏や笑いや感動や希望をもたらしてくれる。詩に自分自身の中にある何かを表そうとする姿に接するだけでも十分に面白い。
やっぱりいいなあ、詩は。
思うに任せぬ人生だから「うまくいく」なんて稀なこと。
むしろ失敗、基本やん(Shippai Kihon Yan=SKY)。
けれどなぜか失敗に対して異常に冷たかったり、
過剰に失敗を恐れなければいけない残念な社会です。
株式会社NPOおよび福祉施設<スウィング>は、
そんな窮屈で息苦しい世の中のセーフゾーンをジワジワと拡張すべく、
ギリギリアウトを狙ってさまざまな活動を展開しています。
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