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また家のなかに誰かいる

朝方ただならぬ気配を感じてガバッと起きると、映画『リング』に出ていた「頭に布みたいなんをかぶって指差しながら怖いことを言ってる人」みたいな人が足元に立っている。

ぜんぜんお見舞いムードではない。
怖すぎる。

でもどうやら身長が低く体が小さそうなので、不自由な足でも「頑張れば何とか勝てそう」な感じもする。Qちゃんならもっともっと大きいはずだし、第一今は入院している。

なんかゆうと君みたいな背格好やな。
よく見るとゆうと君やんか。

目をふせて下を向いて、発する空気がどんよりと暗すぎるからリングの人みたいに見えたけどゆうと君やんか。ゆうと君、わざわざ来てくれたんか。

うなずいてる。そりゃそうやわな。
思い切り来てくれとるわな。

ありがとう。入院中に書いてくれた手紙にはとても助けられたんだよ。痛いの痛いの飛んでってくれたよ。

が、口をへの字に結んだままダンマリとしてひと言も話さない。この様子で僕のためのお見舞いではなく、何かを強く訴えたいがゆえの来訪であることにはっきりと気づく。ひと月以上離れたスウィングのリアルを思い出す。どうしたの? 何があったの?


「旅行いけません」


ようやく聞こえた悲しそうな、か細い声。
コロナ禍の影響でこの2年間実施できなかったスウィングの恒例イベント、一泊旅行。今年こそは行けそうだったけど、え? ムリなの? 行けないの?

うなだれて再度うなずく。


「えー……そうなーん……」


がっかりして言いながら目が覚めた。
最近よく夢を見るし、よく何かを言いながら目が覚めるな。

でも夢でよかったよ、ゆうと君。
リングみたいな人になる必要ないよ、怖すぎるよ。
それにもうだいぶ古いよ、古すぎるよ。
行こうね、旅行。
来週にはスウィングに復帰しますね。

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