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陶器の家の火事_四悪党

そんなにいつもしょっちゅう、言い争いだの殴り合いだのしている四悪党なのに、それでも離れず一緒にいるのだから世話がない。

糸かなんかで繋がれて、お互い引っ張り合って、蹴つまづき合って、ひっくり返ってケンカになるのだから、それこそ因縁と言うものか、四者は違って似てもないのに、一緒にいることをやめられない。


四悪党は悪党であるのだから、今日も今日とて悪事をなす。

四悪党の仕業は放火である。
放火で動転した住人が逃げ転ぶ合間を狙い、家の金品を奪うのだ。


真夜中の火付けは、背筋に痺れが走る。

もっと

たくさん火付けするほど、痺れが脳みそに届く。



四悪党の狙いは御聖堂だ。

どこまでも天に高く、尖塔は霞んで見えない。


人の好い司祭は知らず、御聖堂の地下には埋蔵金が潜む。

背筋が疼く。


忍び込んだ四悪党は、暗い聖堂に独り残っている司祭を見た。

長椅子の列に潜む四悪党に気づかない司祭は、御明の下で懺悔をしている。

いや

懺悔のように俯いて司祭は、御明の御御足の指先を剣で削っているのだ。

誰にも見られない深夜の聖堂で、司祭は御明の足先を削っている。


四悪党は、聖堂の天井を見上げた。

司祭の頭上、はるかに高む天井のステンドグラス。


いちばん小さな四悪党が、そのステンドグラスに向かって、駆け登った。

猿のように身をこなし、いちばん小さな四悪党は抜き足で素早く駆け登る。
一心不乱の司祭は気づかない。


やがて尖塔にたどり着いたいちばん小さな四悪党から、火が放たれた。

火の粉が舞い、司祭の頭に降ってきた。


ようやく四悪党に気づいた司祭は、しかし、そのことを事の前に知っていたかのように、ひとつ頷くと、


御明の足元に火を付けた。

先ほど削った御明の足先の木屑を火種にして。


御聖堂は煌々と燃えた。

天に届くほどに高い尖塔の先まで。




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