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陶器の家の火事_こびとのR

「こびと」と言うからには、Rはだいたいの知り合いよりも小さいわけで、見上げてばかりの毎日。

Rは、まあまあだいたいの時には燃えている。かつらかなんかのような炎が頭の家で鳴っている。

その炎部分を考慮するとすれば、Rと同じくらいのやつらもいたりして、
どんぐりの背比べ、とは言うものの。


小さいRを小馬鹿にするものは多かったが、決まってみんなの先頭を歩くのもRであった。

Rの先頭を行くの理由は、頭に乗っかる炎のためである。

照らす炎の明るさの先導、といえば聞こえはいいが、しかし照らす炎はいつも騒動のタネでもあった。


ある日のRの、や、その炎の目の前に、大きな木が立ちはだかった。

大きな木は道を譲ろうとしない。


ただただ地面から生えて動かないだけの大木は、実は動きたい。


来る日も来る日も道の真ん中に立ち続けて、脇を平気ですり抜ける旅人たちを見やっては、大きな木は思った。

「次にこの道を通るやつにはこの自分の大きな手で、握りつぶしてやる」

そこに現れたのがRと一行であった。


Rは自分に伸びてきた、大きな木の大きな手に捕まって宙に浮いた。

頭の炎が消えかかったその瞬間、

Rは”こびとの呪文”をつぶやいて、

炎を大きな木の、頭のてっぺんに自分の炎を飛び火させた。


大きな木は、頭についた炎に焼かれて燃えた。

燃えた木の葉は昇天し、

細かな枝も消え失せた。


丸裸になった大きな木は、しかしそこで気がついた。

地面にへばりついた自分の脚の根が、浮き上がって、飛び上がり、

今や自分は自由に歩けるようになったことを。


大木の大巨人となった大きな木は、今や炎をRに移し戻し、一行とともに歩いている。



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