個展開催は今週金曜日。

今週金曜日に迫った個展。

制作動機からいま一度、発表意図を整理してみます。

というのも、動機は明確なんですが扱いが難しいと考え、説明から除外していたので。


制作は明確に意図を持っていました。

「認知症要介護者のケアを兼ねる」という意図です。

当事者は作家の実母ですがプライベートの問題もありなかなかうまく説明できない状況ではありました。

ざっと概観すると

独り住まいの状況から発症、長女の家に引き取られた当事者は、回復傾向にありましたが、実家に戻ることで状況はさらに快方に向かいました。

その中で作家はケアする立場にあり、そのケアの効果の有無は知れませんが、とにかく当事者の活力を促す意図で、当事者周辺の花鳥風月を描いて家に飾るというシリーズを制作しました。

花鳥風月は日本人に最も馴染みのある芸術表現です。古来の日本画のほとんどは自然観察による花鳥風月を題材にしていると思います。

偶然にも制作当初、田舎にしては貴重な日本画巨匠たちの展覧会がありました。
あまり絵画に知識のない当事者でも、作家が一枚一枚説明すると、その鑑賞の愉しさをすぐに理解しました。

なぜなら、普段から自分が愉しんでいる自然観察、季節の花を愛でるなどと同じことだからです。

里山環境の良いところは人と自然(環境)との連関が一望に垣間見えるところです。そしてそこには自ずと生命力を感じるもので、生きる活力をいただくことになる。

当事者はかつてそうしていたように、すぐに自分で花を生けるようになりました。何が奏功したかはわかりません。よかったね、というだけの話です。

ただ、花を生けることもしなくなっていた頃に比べれば、世界に対する好奇心が回復したようです。



そのことはとてもよかったことですが、当事者の回復もあり、半年を過ぎた頃なんとなく「制作はケアの役割を終えたな」と感じました。

そもそもがケア効果のほどなど計りようもありません。

ともかく認知症の症状は進行するのみと考えていた当初の心構えは変更を余儀なくされました。

ここで制作は足元を失います。

より大きく確かな足元を探す試行錯誤が始まりました。


たまたま絵日記方式に描き連ねたので「絵日記本」という最終形態は明確になりましたが「なぜ絵日記本か?」が説明できません。

ただ、
展示では作品群をグリッド状に密集して展示するイメージラッシュ方式なんですが、絵日記が”暮らし”を綴るものであろうこともあってか、イメージラッシュからはやはり”暮らし”が浮かび上がる内容にはなりました。

”暮らし”がテーマということになります。
(鳥や花などの暮らしも含む)
そして、「なぜ”暮らし”を描いたのか?」が問いになります。


「なぜ”暮らし”を描いたのか?」

きっかけは明確に”介護ケア”ですが効果が曖昧かつ役割を半ば終えた段階で扱いが難しくなってしまいました。

シリーズ内で若干の画風の変化はありますが作品性(があるとしたら)にブレはないと思います。

最終形態である「絵日記本」に関しても満足のいくものが仕上がったと作家自身は思っています。(印刷がうまくいっていればの話ですが)

けれど、「なぜ”暮らし”を描いたのか?」は取り残されたままになっています。

それが拭いようもなく作家の根底にあります。


この作業を”説明責任”と考えてしまうとまさに蛇足です。鑑賞者に任せれば良い。

しかし、これは作家の制作中つねに心にかかったモヤでした。
そして、その追求はある程度創造的だと判断しています。

そこで窮した作家は髑髏を置こうと考えました。それは制作が終わった後もその問題を整理しきれず考え悩んでいる_傍観者の一人となって作品群を眺める作家自身なのです。

しかし髑髏のさまざまなメタファーが大きな誤解を招きそうです。


なんとか糸口を見つけたく、文章にして頭の整理をしてみました。

運がよければ明日糸口が見つかるか??

猶予が迫って焦る作家の今日でした。

ここから先は

0字
ご購読いただくと、その購入額をポイントに換算し、等価の発表作品と交換していただけます。 たとえば一年間の購読で、定価6,000円の作品が手に入ります。

THE SKYSCRAPER

¥500 / 月 初月無料

”火事の家”をモチーフにしたシリーズ作品とその制作ノートを発表します。 作品画像は一日一点、ノートは週一度のペースを想定していますが、不定…

よろしければご支援よろしくお願いいたします。 購入金はポイントとして換算させていただき、作品と交換していただけます。