なんでそんなに自信があったんだろう。

なんでそんなに自信があったんだろう。

なんとかなると思ってた。なんとかなると思うので精一杯で、たぶん毎日台風みたいな自分の脳内のいろいろをやりすごすので精一杯で、いそがしくて、とりあえず深く考えずに「ほしい」と思ったら近づいて、抱きしめて、「なんとかなる」と思ってたんだろう。

将来をきちんと見越して悲観していれば、多分看護師にはならなかった。「体が不自由になるかも知れない、そしたら看護師なんてできない」とかって、思いもしなかったのだ。それどころじゃなかったから。好きな男と一緒に住む時も、「なんなら自分が養ってもいい」くらいに思っていた。わたしはずっと、台風みたいな不安定な人間だったのに、じぶんの収入と料理スキルだけでふたりぶんを養えると思っていた。

なんでそんなに自信があったんだろう。

就職して数年経ってから、やったことなかったギターを始めたり、ギターもへたくそなまま、誰ひとり知り合いのいないところに急に飛び込んで歌を歌ったり、自分の心の中をさらけ出すような詩を知らない人たちの前で披露したり、それで勝負をしたり。誰も読まないかもしれない小説を、同人誌の作り方なんて何も知らないのに見よう見まねで作って、値段をつけて売ったり。

わからない。何を考えてたのか。何も考えていなかったのかも。

こんなたくさん本を買って、読み終わるかどうかなんてちっとも考えなかった。疲れるかもしれないのに、どこまでもどこまでも真夜中に歩き、携帯電話とタオル一枚だけを持って鈍行でいくらでもひとり旅をした。ルールも知らないバレー部に入って、マネ業が全然ちゃんとできなくてもそこに居続けた。

ただ、面白いと思う方向に向かってたんだろうなあ。たぶんその当時はたくさん悩んで怖がっていたこともあっただろうと思う。

今となっては喉元を過ぎてしまった記憶たちだ。

その頃の「なんとかなる」にとても感謝している。全然きれいじゃなかったし、手作りの、つぎはぎだらけの、ぼろぼろほつれた人生だったけれど、あの「なんとかなる」たちがなかったらどうなってたんだろう、とりあえず人生を楽しむための積み重ねの時期があってよかった。

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