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発動型能力の概念整理 ― イジンデン ルール理解


 イジンデンのルールを体系的に理解していくこのシリーズ。今回は「発動する」能力に関する概念を整理して理解を深めたいと思う。具体的には、過去に書いた次の2つの記事を、発動する能力に絞って再編、加筆する。

 この記事(および以前の記事)を書いた理由は、公式のルール文書では概念が単語分けされていなかったり(特に「条件」が複数の概念で使われている)、名前がついていない概念があったりするためである。カードのルールテキストを注意深く読むと、異なる概念は異なるテンプレートの文言で書かれていることがわかる。であれば、それらを区別して名前付けすることが概念の整理に役立つと考えた。

 この記事では整理のために非公式の単語も使うことがある。このような単語には本文での初出時に「いわゆる」をつけていることにご注意いただきたい。

発動型能力

 いわゆる発動型能力とは、典型的には「~とき~(発動)する/できる。」または「~たび~(発動)する/できる。」のように書かれた能力である。発動型能力は何かをきっかけに発動し、ゲームに影響を与える効果をもたらす。

 例えば《栄西》の1つ目の能力は〈自分が1体だけでアタックしたとき発動する。〉と書かれているので発動型能力である。

 また、発動型能力の中には「~(発動)する/できる。」ではなく、文末が動詞の終止形で終わるものもある。例えば《杉田玄白》の能力〈能力によって手札から墓地にイジンでないカードが置かれるたび、そのカードのプレイヤーの山札の上から1枚を墓地に置く。〉は「~(発動)する/できる。」で終わっていないが、「~たび~」と書かれており、かつ「~置く。」と終止形で終わっているため発動型能力である。

遺業能力

 すべての遺業能力は「戦場から墓地に置かれたとき発動できる」発動型能力である。

マホウ使用や冥府発動

 マホウのマホウ使用や冥府発動は、マホウ使用の際の魔力コストの支払いを除き、発動型能力に準じて処理をする。

参考:発動型能力でない能力

 発動型能力でない能力はいわゆる常在型能力である。常在型能力は発動するわけではなく、常に、または一定の条件下で、ゲームに影響を与える効果をおよぼし続ける。典型的には「~間」「~に際し」と書かれているが、これらに限らない。「即応」「アタック+」「スタンド」など、いわゆるキーワード能力の一部も常在型能力である。

 常在型能力の詳細はこの記事では省略する。

契機 ― 「~とき」「~たび」

 発動型能力のいわゆる契機とは「~とき」または「~たび」の前に書かれた事柄であり、その能力が発動するきっかけとなる、ゲーム中に起きるイベントを指す。前述したものでは、《栄西》の発動型能力は〈自分が1体だけでアタックした〉ことを、また《杉田玄白》の発動型能力は〈能力によって手札から墓地にイジンでないカードが置かれる〉ことを契機に発動する。

 「~とき」と「~たび」の違いは重複した発動の有無である。「~とき」と書かれたものは重複して発動せず、「~たび」と書かれたものは重複して発動する。

 これについては「~たび」の方が直感的だろう。例えば前述の《杉田玄白》の発動型能力は、手札から墓地にイジンでないカード2つが同時に置かれた場合には2回分発動する。

 「~とき」能力が重複して発動しないことの例は《徳川慶喜》の発動型能力〈戦場の能力によって相手がドローしたとき、相手の手札のカード1つを墓地に置く。そのカードは相手が選ぶ。〉が分かりやすい。戦場の能力1つによって同時に2ドロー以上したとしても、慶喜の能力は1回しか発動しない。

参考:発動が重複する事例

 より複雑な事例については次の記事を参照されたい。

強制的・任意的 ― 「~(発動)する」「~発動できる」

 発動型能力がいわゆる強制的・任意的であるとは、その能力が発動しないことを選べないか・選べるかである。「~発動する。」または動詞の終止形で書かれたものは強制的であり、「~発動できる。」と書かれたものは任意的である。

 ここまでに例に挙げた《栄西》《杉田玄白》および《徳川慶喜》の発動型能力はいずれも強制的であり、発動しないことを選べない。

 任意的な発動型能力には、例えば《神剣眠る氏社》の能力〈自分の赤のイジンが破壊されるたびに発動できる。そのイジン1体を裏にして魔力ゾーンに置く。〉がある。赤のイジンが破壊されるたび、発動することを選んで魔力ゾーンに置いてもいいし、発動しないことを選んでもいい。後者の場合、他に能力がなければ、そのまま墓地に置かれるだろう。

発動する・しないを選ぶタイミング

 任意的な発動型能力であっても、契機を満たした場合、その能力はひとまず「発動を待っている能力」(公式用語)になる。そして、1つ以上の「発動を待っている能力」の中からその能力を選んだ際に、いわゆる「実際に」発動するかしないかも選ぶ。

 複数の発動型能力を解決する順序は次の記事を参照されたい。

追加条件 ― 「~なら」等

 発動型能力のいわゆる追加条件とは、典型的には「~なら」の前に書かれた事柄であり、契機とは別に、その能力が「発動を待っている能力」になるための条件を示している。契機を満たしても追加条件を満たしていない場合、その発動型能力は「発動を待っている能力」にならず、ゆえに実際に発動することもない。

 例えば《衛青》の発動型能力の〈自分の戦場のイジンが2体以下なら〉の箇所は追加条件である。3体以上の場合、衛青が戦場に置かれても、この能力は「発動を待っている能力」にならない。

「ターンに1回しか発動しない」

 発動型能力で「この能力はターンに1回しか発動しない。」と書かれた箇所は追加条件であり、その能力が各ターンで(「発動を待っている能力」になった後で)実際に発動した回数を参照する。まだ1回も実際に発動していない場合に限り、契機を満たすことで「発動を待っている能力」になる。もし「発動を待っている能力」になった後で実際には発動しないことを選んだなら、それは実際に発動した回数として数えない。

 例えば《鴨長明》の2つ目の能力〈執筆 - この能力はターンに1回しか発動しない。ハイケイが戦場に置かれたときに発動できる。そのハイケイ1つを裏にしてガーディアンにする。〉は任意的な発動型能力であり、ターンでまだ1回も実際に発動していない場合に限り、ハイケイが戦場に置かれたときに「発動を待っている能力」になる。その後、その能力が実際に発動することを選んだなら、同じターンでは以降、ハイケイが戦場に置かれても、その能力は「発動を待っている能力」にならない。

典型的な書き方でない追加条件

 追加条件の一部は典型的でない書き方で書かれている。例えば《ハリエット・ビーチャー・ストウ》の発動型能力の〈この能力は、このターンにバトルしているなら発動しない。〉の箇所は追加条件であり、(発動する場合ではなく)発動しない場合を示している。

 同様に、《虎狼痢》の発動型能力の〈この能力は、自分の手札が0枚でも、相手の手札が0枚でも発動しない。〉の箇所も追加条件であり、発動しない場合を示している。

追加コスト ― 「~して発動できる」等

 任意的な発動型能力のいわゆる追加コストは「~して発動できる。」または動詞の連用形+「て」+「発動できる。」の前に書かれた事柄であり、その能力が実際に発動するために行うべき指示をあらわしている。このような能力は契機を満たしたらひとまず「発動を待っている能力」になるが、実際の発動に際して追加コストの指示を満たせない場合、実際には発動しない。

 例えば《中臣鎌足》の発動型能力の〈自分の山札の上から5枚を墓地に置いて〉の箇所は追加コストである。もし自分の山札に4枚以下しかない場合、追加コストの指示を満たせないため、実際には発動しない。

マホウの追加コスト

 発動型能力だけでなく、マホウも追加コストを持つことがある。追加コストを満たせなければ、そのマホウはマホウ使用できず、また冥府発動であっても実際には発動しない。

 例えば《カタストロフィ》の〈自分の戦場のガーディアン1体を指定して〉の箇所は追加コストである。自分の戦場にイジンがいない場合、追加コストの指示を満たせないため、マホウ使用できず、また冥府発動であっても実際には発動しない。

追加コストでないもの

 「~して発動できる。」等と書かれていない事柄は追加コストではない。例えば《ロイヤリティ》の能力〈自分の戦場の「剣術」イジン1体を破壊するか、自分の戦場のガーディアン1体を山札の上に戻す。3ドローする。〉について、「剣術」イジンを破壊したりガーディアンを山札の上に戻したりすることは追加コストではなく、能力が発動することによってあらわれる効果の一部である。したがって「剣術」イジンやガーディアンが1体もいなくてもマホウ使用や冥府発動できる。このような場合は「発動した能力に解決できない効果や効果量が含まれるなら、できる限りで行います。」(公式用語)のルールに従うこと。

まとめ

 非公式の単語を導入しつつ、発動型能力なるものと、その契機、強制的・任意的、追加条件、および発動コストの概念を整理した。公式のルール文書では説明し尽くされてはいないものの、カードのルールテキストでは様々な概念が区別され、テンプレート化されて書かれている。その区別を慎重に読み解くことによって、ルールをよりよく理解できるようになるだろう。