「~とき」/「~たび」能力と発動の重複 ― 発動と解決の順序(上級編・改訂版) ― イジンデン ルール理解
改訂版まえがき
この記事は過去に書いた次の記事(以下「元記事」という。)の改訂版である。
新たな裁定共有により、元記事には正しくない内容が含まれていることが分かったため、今後はこの改訂版を参照いただきたい。
はじめに
イジンデンのルールを体系的に理解していくこのシリーズ。今回も引き続き、発動と解決の順序を見ていく。前々回および前回の記事は以下を参照されたい。
今回は上級編として、同一の能力の重複した発動がある場合を見ていく。
例:《徳川慶喜》と《緒方洪庵》の相互作用
まずは準備として、この記事で例として用いる《徳川慶喜》と《緒方洪庵》の相互作用を確認しよう。慶喜はいわゆるハンデスする(相手に手札を捨てさせる、すなわち墓地に置かせる)能力を、洪庵は相手に1ドローさせ得る能力を持っている。そして、各能力は条件付きながらお互いを発動させる契機にもなっている。慶喜の能力によって相手がイジンを捨て続ける限り、慶喜と洪庵の能力は反復横跳びのように何度も発動し続けるのである。この組合せは「紫単医術ハンデス」デッキで用いられるシナジーであり、同デッキはノーマルカードや構築済みデッキのカードが多くて組みやすいため、実際に使ったり使われたりしたことがある人もいるのではなかろうか。
では、自分の戦場に慶喜1体と洪庵1体がいるとして、能力がどのように反復して発動するのか、このシリーズの記事で導入している『棚』(上図)を用いて見ていこう。反復のスタートとして、戦場の何らかの能力(例:自分が戦場に置いた《本居宣長》の能力)が棚の1段目に積まれ、相手が1ドローしたとしよう。このドローによって慶喜の能力が発動を待っている状態になるので、ふたつの能力は「入れ子」を作ることになり、慶喜の能力は(1段目ではなく)2段目に積まれる。相手はイジンを捨てたとしよう。さらに洪庵の能力が同様に入れ子を作って3段目に積まれ、相手は1ドローする。これにより、慶喜の能力がまた4段目に積まれる。
こうして、結果的にふたつの能力は反復「横」跳びのように発動するが、正確にはこのように棚の上方へと能力が積み重なっているのである。
反復のスタートをハンデス(例:自分が戦場に置いた《マリ・キュリー》の能力)にして(かつ相手がハンデスでイジンを捨てていくとして)も同様(上図)である。1段目にハンデス、2段目に洪庵、3段目に慶喜、4段目に洪庵……と積み上がっていく。
さて、ここまでの話はまだ簡単な方である。本当に複雑なのは、慶喜と洪庵の少なくとも一方が戦場に2体以上いる場合だ。
《徳川慶喜》が2体いる場合
次は、自分の戦場に慶喜2体(慶喜A、B)と洪庵1体がいる場合を見ていこう。事前に押さえておきたいポイントは、慶喜の能力が「~とき」に発動するもの(上図左)だという点である。
1ドローから始めて、能力が積みあがっていく様(上図)を見ていこう。2段目では慶喜A、Bの能力とも発動を待っている状態になるが、先に慶喜Aの能力を選んで実際に発動させ、相手はイジンを捨てたとしよう。同じ名前であっても別々のカードなら、能力の発動もこの(慶喜A、Bの)ように別々に考えることに注意せよ。3段目には洪庵の、4段目には慶喜の能力が積まれる。
ここで注意すべきは、4段目には慶喜Aの能力しか積まれず、慶喜Bの能力は積まれない(上図最右)点である。「~とき」と書かれた能力が発動を待っている状態であるなら、その能力は重複して発動しない。慶喜Bの能力は2段目で発動を待っている状態のため重複しては積まれず、慶喜Aの能力は既に発動済みのため新たに発動を待っている状態になって4段目に積まれる、ということである。
さらに進んで(上図)、慶喜Aの能力で相手はイジンでないカードを捨てたとしよう。5段目に洪庵の能力が積まれることはなく、反復は途切れて、能力の解決は2段目の慶喜Bに移る。ここで相手がイジンを捨てたとすると、3段目に洪庵の能力がまた積まれる。そして先ほどとは異なり、4段目には慶喜A、Bの能力とも新たに積まれる。これは慶喜A、Bとも発動を待っている状態の能力がなくなったためである。
このように発動が複雑になると、能力を正しく解決することが難しくなるため、目印となるマーカーを使用することを勧めたい。「~とき」能力については、最初に発動待ちになった時点でその能力のカードの上にマーカーを置き、1枚のカードの上に2個以上のマーカーは置かない。そして、同名のカードのうちひとつ(例では慶喜A、Bのいずれか)が含まれる反復が途切れるまで連続して解決するものとし、解決しきったらカードからマーカーを外す、といった方法が考えられる。
《緒方洪庵》が2体いる場合
今度は、自分の戦場に慶喜1体と洪庵2体(洪庵A、B)がいる場合を見ていこう。ポイントは、洪庵の能力が(「~とき」ではなく)「~たび」に発動するもの(上図右)だという点である。
イジンのハンデスから始めて、能力が積みあがっていく様(上図)を見ていこう。2段目では洪庵A、Bの能力とも発動を待っている状態になるが、先に洪庵Aの能力を選んで実際に発動させたとする。また、3段目の慶喜の能力で相手はイジンを捨てたとしよう。4段目には洪庵の能力が積まれる。
ここで先ほどと異なるのは、4段目には洪庵Bの能力が積み直され、またその能力は2回分(上図最右)という点である。「~たび」と書かれた能力が発動を待っている状態であるなら、その能力は重複して発動し、さらに改めて発動の契機を満たしたときに「最近発動するようになった能力」になる。つまり、2段目で発動を待っている状態だった分と新しく発動の契機を満たした分を合わせて、洪庵Bの能力は2回分になった、ということである。この例では2回分だが、場合によっては3回分、4回分と重複することもある。
あわせて大切なのは、この2回分の能力はひと塊になって実際に発動することである。言い換えれば、1回目と2回目の間に別の能力が割り込むことはなく、連続して実際に発動する、ということである。特に、1回目の実際の発動によって別の能力が発動を待っている状態になっても、その別の能力よりも先に、2回目が実際に発動することに注意せよ。
さらに進んで(上図)、洪庵Bの能力2回分を先に解決したとしよう。1回目の解決(灰塗り段階)で慶喜の能力が積まれるが、先に洪庵Bの2回目を解決する。その後、ようやく慶喜の能力の解決に進む。ここで相手がイジンを捨てたとすると、4段目のときと同様に、6段目には洪庵Bの能力が新たに積まれ、また洪庵Aの能力は4段目から積み直されて2回分になる。
こちらも正しい解決のためにマーカーの使用を勧めたい。「~たび」能力が発動する毎に、それらの能力のカードの上にマーカーを1個置く。1枚のカードの上に2個以上のマーカーを置くこともありうる。そして能力の解決は、カードの上からマーカーすべてを取り除きつつその回数分だけ行えばいい。
複雑な発動を正しく解決するために
今回の例に限らず、発動の順序が複雑な場合における解決のコツは、一段階ずつ発動の有無と解決の順序を確認しながら進めることだ。慣れてくれば少々のマーカーを用いるだけで解決できるようになるだろうが、不慣れなうちは紙に書き下すくらいの気持ちで進める方がトラブルになりにくいだろう。本当に困ったときにはジャッジを呼ぶことも覚えておきたい。また、複雑な発動があり得るデッキを自分が使う場合は、少なくとも典型的な発動と解決の順序は事前に一人回しするなどして理解し、対戦相手にも説明できるようになっておくべきだろう。
おわりに
発動と解決の順序に関する記事は、今回の上級編でひとまず完結である。次回は、いわゆる発動型能力が発動する「条件」を細かく整理する(以前に書いた記事の更新版とも言える)記事を予定している。
ソース
この記事での解説内容は次の裁定、および天草サーバーの「ルール裁定共有」チャンネルでの議論を拠り所にしています。裁定に関する問合せをされた @yahagi_ijinden さん、そして裁定をスプレッドシートにまとめられている天草サーバ管理人の @Ree00241 さんに感謝いたします。
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Rotate by Michel Demers from Noun Project (CC BY 3.0)