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絵と言葉の小さな奇跡

小さな町の端にあるアパートに、ウサギとカメが暮らしていた。ウサギは繊細な心で物語を綴る小説家で、彼女の言葉は読む人々の心にそっと寄り添い温もりを与えていた。しかしある日突然、病気が彼女の身体を蝕んだ。彼女の世界は文字を失ってしまった。

一方、カメは同じアパートの一階で静かに絵筆を動かす日々を送っていた。彼の絵にはウサギが紡ぐ物語と同様に、誰かの心に寄り添う温かさがあった。カメは文字を失ったウサギのために、彼女の窓から見える大きな木をゆっくりと描き始めた。彼は新しい葉を毎日一枚ずつ描き加え、ウサギの心に小さな希望を与え続けた。

月夜のもとウサギは窓辺に座り、カメが描く木を眺めていた。その木は季節が変わっても葉を落とすことがなかった。彼女はカメの想いが込められたその絵に心を動かされ、再びペンを手に取った。書き始めたのはカメの絵に触発された新しい物語である。

ウサギの新しい物語は、小さな希望がいかに心を変えることができるかというストーリーだった。ウサギとカメの間に生まれた深い絆は、二人の才能を世界へ届ける力となった。月の光のもとで二人の心は静かに、しかし確かに結ばれていた。

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