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全天決行、全然結構!

「旅先の空はやっぱり青天が良い」、と思い始めてしまったのはいつからだったか。

先日、僕は友人と旅行計画を練っていた。僕とその友人は同じ日程のインターンシップに参加する予定だったので、インターンシップの合間に行けるような旅行プランを作っていた。旅先は僕ら史上初上陸となる地。否応にも旅行計画の議論は白熱する。

そんな中、僕は無意識に「当日晴れだったら良いんだけどなあ」と呟いていた。何の変哲もない、ごく普通の心情だ。どうせ遊ぶなら晴れの方が良いに決まっているし、実際僕も僕の友達も晴れることを望んでいる。だから、別に変なことを言ったわけではない。

だけど僕は、自分が無意識に青空を望んでいることに気づいたとき、何とも形容しがたい寂しさを覚えてしまった。

「ああ、いつの間に僕の心は、青空しか求めないようなつまらない情緒になってしまったのか」と。


幼い頃は、雨中の街、履きなれない長靴、ペタペタする髪、泥々の土、あじさい、カエル、カタツムリと、雨に生きる情景全てに関心を持っていたはずだった。ある日はなんとなく寂しい雨音に耳を傾けて心を落ち着かせ、またある日は降り注ぐ雨の中でバカみたいに躍り狂っていた時代が確かにあった。

そう、僕は間違いなく雨が好きだったのだ。それがいつの間にか、天高く巨大に聳える青空に毒されて、旅先でも日々の何気ない日常の中でも快晴を望むようになっている。

こう言葉にするとなんだか気恥ずかしいが、世界は僕が求めているよりももう少し色とりどりなのかもしれない。「灰色なんて心が塞ぎ混むだけだ」「雨なんて周囲の色をかき消してしまうだけだ」、本当にそうだろうか。色を色メガネで見ているだけではないだろうか。

好きな色は心に留めておいて、好きじゃない色は視界から排除したいと願う。どこまでも自分勝手で貧乏な心であるなと、僕は少し茫然としてしまった。

……。


さて、そんなことは露とも知らない友人は、「じゃあ雨天延期にしちゃうか!」と無邪気に提案してきた。

僕は苦笑した。インターンシップがあるのだから、雨天を理由に延期することなどできない。僕らの冒険は「全天決行」、例え雨が降ろうが風が吹こうが間違いなく決行されるのだ。

僕がそう言って友人をからかうと、「じゃあ俺様が腕によりをかけて、てるてる坊主を作っちゃるでぇ」と声高に宣言をしてきた。

「心強い笑 で、何個作る予定なん?」

「……10個ぐらいで勘弁してほしい笑」

「10個じゃあ、神様は見向きもしてくれんやろなあ」

……。



さて、僕らは全天決行で少し遊んでくる予定である。
友達は晴天を望んでいる様子だが、もとよりいつでもギャアギャア楽しんでいる奴だから雨が降っても大丈夫だろう。

だから一緒に行く友人には申し訳ないけど、僕はあめあめ坊主を11個作ることにした。
そして、たぶん友人は自信満々で傘を忘れるだろうから、念のため傘を二つ準備しておこうと思う。


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