読書記録 MBA必読書50冊を1冊にまとめてみた その15

第2章 「顧客」と「イノベーション」
12 「ネット・プロモーター経営」 フレデリック・F・ライクヘルド
 前節に引き続き、ライクヘルドの著作。顧客ロイヤルティを具体的に把握するNPS(ネットプロモータースコア)という方法を提唱した本。
 NPSの計算の仕方は、まず、「その商品やサービスを他の人に勧めるかどうか」を10段階で評価してもらい、それを「推奨者(10・9)」「中立者(8・7)」「批判者(6以下)」の3つに分類、次に、推奨者の割合から批判者の割合を引いた数値を出す、この数値がNPS。評価が6点でも「批判者」となるのは厳しいように思うが、実際はそういうものとのこと。
 顧客の商品・サービスへの評価を把握する方法としては、商品・サービスの色々な要素の満足度合いを100点満点で把握する「顧客満足度調査」が広く行われているが、これでは点数が出ても、それがどういう意味を持ち、その内容を踏まえてどうすれば良いのか不明確である。それに対して、NPSの場合、推奨者を維持し、中立者と批判者を出来るだけ減らせば(中立者を推奨者に、批判者を中立者にしていけば)良い、という具合に、やるべきことが明確になる。なお、NPSは日本語訳では「顧客推奨度」となるそうだ。
 NPSを用いる場合のポイントがいくつかあり、
 ・数字はありのまま把握する
 ・回答率を高める
 ・設問数は絞る
 ・継続して実施する
ことが大事だという。
 売上には満足した顧客が繰り返し買う「よい売上」と不満な客が仕方なく買う「悪い売上」があり、後者は他に良いものが出たらそちらに移ってしまう。
 NPSを計測して顧客ロイヤルティを把握し、継続性のある「良い売上」となるよう改善を図ることが必要だ、とのこと。
 確かに事細かに製品やサービスの色々な点について満足度を問うよりも、シンプルに他の人にお勧めできるかどうかを聞いたほうが指標として分かりやすいとは思う。
 しかし、本当にNPSの計算の仕方が妥当なのかどうかは疑問が残る。評価8点だと中立者で9点だと推奨者だというが、8点とつけるか9点とつけるかなんて(10点はよっぽどのことがないと付けないだろう)人によっても違うし、同じ人でもその時の気分で変わってくるのではないだろうか。実際はお客様からの評価の把握とそれを踏まえた改善の活動については、中々、単純化できない要素が色々あると思う。
 NPSを測る際の質問については、10段階評価と併せて「その数字を選んだ理由」も併せて聞くこととなっていて、そちらの分析の方がおそらく重要なのではなかろうか。そして、その分析とそこから改善策を導き出す方法は一様ではないだろう。

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