読書記録 MBA必読書50冊を1冊にまとめてみた その24 20 「トヨタ生産方式」 大野耐一

日本企業の中で、これまで最も成功した企業はどこか、と問われたら、多くの人はトヨタと答えるのではないか。
一時期、ジャパン・アズ・ナンバーワンなどと言われて、多くの日本企業が世界経済の中で大きな存在感を示したことがあったが、そのほとんどはかつての輝きを失い、いくつかの企業に至っては消滅してしまっている。
そんな中でトヨタは未だに世界の自動車業界においてトップを走る企業の一つであり続けている。
その強さの源泉は、トヨタ生産方式と呼ばれる、効率よく安定的に車をつくる能力だ。
このトヨタ生産方式を体系化した生みの親こそが、この本の著者、大野耐一である。本書は1978年出版だが、今でも世界中で読まれているとのこと。
ここまで取り上げられた本の著者は、経営学者やコンサルタントなどが多かったが、大野耐一は経営の実務家であり、技術者だ。学歴も工業高校卒で大学には行っていない。
トヨタ生産方式の基本は、ムダの徹底排除だ。ムダとは、コストがかかるだけで付加価値を生まないもの全てを指す。中でも重要なのが「つくり過ぎのムダ」だ。
ムダ撲滅のためのトヨタ生産方式には二本の柱がある。一つは「ジャストインタイム(JIT)」、もう一つが「自働化」だ。
まず、JITとは、生産の各工程で使う部品について「必要なものを、必要なときに、必要なだけ」用意することだ。最終工程から逆算し、各工程では後工程に渡すのに必要な分だけの在庫を持つ。それ以上の余分な在庫は持たない、というやり方。
これを実現するための仕組みが「かんばん方式」だ。
後工程が必要とする部品の情報を「かんばん」で前工程に送り、前工程はそれを見て部品を補充し、かんばんと一緒に後工程に送る。かんばんは常に部品と一緒に動く。こうすることで必要な部品を見える化し、余分な在庫を排除する。
もう一つの柱は「自働化」だ。「自動」ではなく、ニンベンの付いた「自働」である。ただ動くだけの機械化ではなく、問題が起こったとき、自ら判断して止める仕組みを持った機械化を指す。
そうして生産ラインが止まったとき、原因がどこにあるか、「なぜを5回繰り返して」「現場で事実に即して」徹底的に考え、再発を防止する。
このように現場主導で、上からの指示がなくとも能動的に改善できるよう、血肉化することが重要だという。それなしで形だけカンバン方式などを真似ても効果はない。
このようなトヨタ生産方式の考え方は、先に見たリーン・スタートアップなど生産現場以外のところにも大きな影響を与えている。

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