広がるBlack Lives Matter。ファッション業界の4つの取り組みとは?
2020年5月25日、アメリカのミネソタ州で、黒人男性のジョージ・フロイドさんが、警察による不適切な拘束の末、命を落としました。
このことが発端となり、今日まで世界中で広がりを見せている、Black Lives Matter(以下、BLM)運動。
フロイドさんが警察に首を押さえつけられている様子を捉えた動画は、SNSなどを通じて瞬く間に拡散し、現在もアメリカのみならず、世界各地で人種不平等の是正を訴えるデモ活動が白熱しています。
日本でも、6月に渋谷で行われたデモには、3500人もの人が集結しましたね。
こうした世の中の動きに伴い、様々な企業もSNSやウェブサイトを通じて人種不平等な扱いに賛同しないという旨を表明しています。
ファッション業界も例外ではなく、ブランドを通じて、様々な支援や発信を行っています。
BLM運動を支えるため、各国のファッションブランドが果たそうといしている役割とは? アメリカ版VOGUEを参考に、世界各地のファッションブランドが行っている4つの取り組みを紹介します。
1. 商品収益の100%を、黒人コミュニティを支える団体に寄付!
大企業だけではなく、多くの小さなインディペンデントブランドが、大規模な支援を行っているのは、注目に値するでしょう。
ニューヨーク拠点に12人程のメンバーで運営しているインディペンデントレーベル、ピーター ドゥ(Peter Do)は6月のEコマース売上の100%を、黒人コミュニティへの支援を行う、「Color of Change」、「Black Youth Project 100」、「Black Visions Collective」に寄付すると発表しました。
クリエイティブ・ディレクターのピーターは、VOGUEのインタビューに
ジョージ・フロイドさんの死は、私たちに言葉だけでなく、行動を通して、抗議を表すことへの義務感を感じさせた。今回のブランドの決断は、人種的に平等な世界のために戦うという私たちのコミットメントだ。
と語っています。
ほかに、商品収益を寄付しているのは、カリフォルニア初のブランド、ロダルテ(Rodarte)や、ジュエリーブランドのセレンディピタス・プロジェクト(Serendipitous Project)。
ロダルテは、7月31日まで、オンラインショップ上の売上の100%を全米黒人地位向上協会 (NAACP)の法的防衛基金に寄付し、セレンディピタス・プロジェクトも、6月の間、2週間にわたり得た利益の100%をミネソタ州のフリーダム基金に寄付しました。
他にも、ケプラー(Kepler)、コムシー(Comme Si)、アゼーザ(Azeeza)、オットリンガー(Ottolinger)、メデア(Medea)、Asai(アサイ)などが、期間限定で売上の100%を黒人コミュニティを支える団体に寄付しています。
ロンドン出身で、アサイのデザイナー、A Sai Taは、自身のInstagramにこう投稿しました。
今は、黒人コミュニティのサポートが第一優先。ブランドの寄付額のパーセンテージは、思いやりの反映だ。正直、どのブランドも、この問題が解決する前に、ファッションのために資源を使い、世界を汚すべきではない。
2. BLM運動を支援する限定品を発売
一部のブランドは、BLM運動をサポートする、新プロダクトを打ち出しました。こうした限定アイテムは、人々の意識を高めるだけでなく、人種的な不平等と戦う団体に売り上げの寄付にも貢献。
アメリカのストリートブランド、フィアオブゴッド(Fear of God)のデザイナー、Jerry Lorenzoは、パイアー・モス(Pyer Moss)や、ノア(Noah)、オフホワイト(Off-White)、ユニオン(Union)など、8つの人気ブランドとコラボレートしたTシャツをリリースしました。
Tシャツは数分で完売し、売上金の10万ドル(日本円で1千50万程)は、すべてジョージ・フロイド氏の6歳の娘、 Giannaさんを支援するために設立された「Gianna Floyd基金」に寄付されました。
アメリカは ブルックリンが拠点のストリートブランド、キッド・スーパー(KidSuper)の Colm Dillane(コルム・ディレーン)も、近年、警察に殺された人々の名前と顔をプリントしたTシャツを制作。集めた50万ドルを、Black Lives Matter関連の運動に役立てるため寄付しました。
そのほか、「speak up」と書かれたフェイスマスクや、背中に「システムを変えたいのなら、声を上げよう。沈黙は、差別の手前だ("If you want to change the system, speak up, white silence is pro racism.")」と書かれたパーカーなども販売し、最終的に100万ドル近くの募金を集めたディレーンさん。VOGUEのインタビューにこうコメントしています。
Tシャツに名を連ねているのは、警察に不当に扱われ、命を落とした人々のほんの一部。気づかれなかった人もたくさんいると思う。このTシャツが、人々の目を覚ますよう希望を込めた。
それぞれの被害者の笑顔や、顔のディテールを描いているうちに、事件の重みが、リアルに自分に迫ってくるようだった。近年、こうしたニュースを目にすることは、ほとんど日常になりかけている。こんな状況を続かせるわけにはいかない
3. オークションや抽選で限定品を販売
6月、話題になったのは、ネット上で販売されたKiko Kostadinov(キコ・コスタディノフ) が、アシックスとコラボしたスニーカー。このスニーカーは価格は250ドル程で、通常、販売からすぐに完売してしまう人気商品です。
ブルガリア人デザイナーのコスタディノフさんは、黒人コミュニティをサポートするため、Instagramでこのスニーカーのサンプルをオークションに出品。これまでに3足の靴を1万5000ドル近くでオークションにかけ、そのお金はBlack Minds Matter、Black Table Artsなど、7団体に寄付しています。
4. 消費者へ売上額を返金
売り上げをそのまま寄付するのではなく、販売金額の数パーセントを客にキャッシュバックして、そのお金を黒人が運営しているファッションブランドなどで使用するように呼び掛けているブランドもあります。
そのひとつが、ニューヨークが拠点のエシカルハンドバッグブランド、ベホ(Behno)。125ドルの財布も、700ドルのバッグも、販売金額の40%をキャッシュバックをし、黒人が経営するビジネスに再分配することを奨励しています。
(behno 公式HPより)
返金した分の資金の用途を客に委ねるという珍しいケースですが、創業者のShivam Punjya氏には、この方法を選ぶ考えがあったよう。
私は、黒人が経営している企業を支える持続的な意識付けが大切だと考えた。売り上げの40%を寄付するのは簡単だが、人々の間に黒人ビジネスをサポートする意識が根付くためには、各自が主体性を発揮する必要がある。
そこで有効なのが、黒人が運営する企業の商品を、自ら選んで購入すること。そのためのお金を消費者に還元し、黒人コミュニティにに再分配する選択肢をもっていただく事にした。
この活動は、社会という大きな文脈や枠組みの中で、私たちの役割を認識する、大切な機会になった。
◆私たちも、ファッションで世界を変えられる◆
ファッション誌でもSDGsの達成が叫ばれるようになった昨今、ファッション業界の社会的な貢献への関心は、日本でも高まりつつあると言えるでしょう。
BLM運動にはメジャーブランドだけではなく、多くの小規模なインディペンデントブラントが連携を示しました。彼らは、自らの大切にしている倫理や価値観を、ブランドを通して世界に発信し、行動することで実際に社会に貢献したのです。
BLM運動に限らず、近年は、環境保護やフェアトレードなどを考慮した、エシカルなブランドが多数存在します。
私たちも、これから買う商品の5つのうちの1つでも、そうした商品を選び、自らが大切にしている理念を、ファッションを通して表していくことができるでしょう。
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