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【冒険ファンタジー長編小説】『地下世界シャンバラ』11

六、ツォツェ村
 
 ルミカたち一行は、シャンバラへの入り口である洞窟の前に着いた。ラパタ城を出て七日目の夕方だ。そこには村があり、ツォツェ村と言った。人口数十人の小さな村だ。白いドーム型の建物がいくつかあるだけだ。周囲は樹木がなく、畑もない。広場の中央に饅頭型に石を積んだ白い仏塔がある。その広場の西側に断崖絶壁が聳えていて、緑色の瓦をいた七重塔ななじゅうのとうが絶壁にめり込むように建っている。その左右に巨大な崖仏がいぶつがひとつずつ彫られてある。
レンは言った。
「こんなところに村があるんだね」
ルミカは言った。
「シャンバラへの入り口を守護するための村です」
ライは言った。
「そういえば、ここまで来るのに、道があったね。道があるということは人の往来があるってこと?」
ルミカは答えた。
「ええ、ここはラパタ国の秘密の領土です。ここは食物を確保できる環境にありません。ラパタ国から食料は届けるようにしています」
ライは言った。
「なぁんだ。じゃあ、ルミカの霊感とかに頼らなくてもここまでは来られるってことか」
ルミカは言った。
「霊感がものを言うのはここからです。洞窟は迷宮です。一度入ったら二度と出られないとも言われています」
 そこへ村長が現れた。僧服を着た、痩せた老人男性だ。
「ようこそ、ツォツェ村へ。シャンバラを目指しているのですかな?」
ルミカは答えた。
「わたしはラパタ国の王女ルミカだ。シャンバラへ降りる前に一夜の宿を提供していただきたい」
長老は言った。
「よろこんで。ここは、シャンバラへの旅人が最後に地上の享楽を甘受する場所」
ルミカは言った。
「享楽はいらない。寝床と少しの食事を用意していただくだけでいい」
長老は言った。
「わかりました。旅人の菩提ぼだいしんは尊重しなくてはなりません」
 四人は宿泊所に案内され、質素な食事を振舞われた。それから眠った。



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