【小説】オサムが死んだ(イノウエさん)
オサムが死んだと聞いて、それが誰だったか思い出すまでに少し時間が必要だった。
聞いたと言うよりは聞かされた、伝えられたと言う方が正しい。それも今、目の前にいる風体の怪しい男からだ。
両手をポケットに入れたまま窓の外を見ている。
俺にそれを聞かせてどうしようと言うのだ。
もう20年も会っていないような人間の死を、見も知らぬ他人から聞かされてなんと返せば良いのか。
オサム。
同い年の男だ。死んだのなら同い年の男だった、と言うべきか。
至って普通の、ノンポリで頭の鈍