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【SVJPイベントレポート】WHILL 杉江さん Ask Me Anythingセッション

2020年10月20日〜10月22日にシリコンバレー・ジャパン・プラットフォームと世界最高峰の起業家育成プログラムを提供する米国アクセラレーターであるY Combinatorが共催した、シンポジウム「Road to Silicon Valley-世界から求められる日本のテクノロジー-」。YC出身の起業家2名と海外で活躍する日本人起業家がホストとなって、参加者からのさまざまな質問に答えるAMA(Ask Me Anything)セッション。ホスト1名に対して参加者を20名に限定したセッションで、WHILLの創業ストーリーから始まり、参加者の悩み、質問に対して考えやアドバイスについてお話いただきました。

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杉江 理
Satoshi Sugie
WHILL株式会社 代表取締役社長CEO

WHILL株式会社 代表取締役社長 杉江 理
1982年生まれ。日産自動車入社。2009年に日産を退社後に世界各地を放浪し、2012年にWHILL株式会社を創業。2017年、米国Silicon Valley Business Journal’s 2017が選ぶ40歳以下の経営者40人の一人に選出。


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Q1. WHILLを創業することになった背景を聞かせてください。

"次世代型のモビリティとしてのWHILL"

WHILLを創業したのは2012年です。当時、10人程度のグループで色々なプロダクトを作って遊んでいましたそのうちの1つが次世代型の電動車椅子「WHILL」でした。その後、色々な方々から製品に関する反響を頂くことができて、じゃあ10人のうちの3人でWHILLを起業してみようかと話し合ったのがきっかけです。

"自分はどちらの起業家タイプか?"

多くの場合、起業を志す人は2つのタイプに分類できると思っていて、1つ目は、起業する際に色々なジャンルや分野から勝てそうなカテゴリーを見つけていくタイプ。2つ目は、これがどうしてもやりたい。と思って起業するタイプ。僕は2つ目のタイプの起業家だったので、やりたいことが先にあった感じです。なので、事業を成立させるためには何が必要かを考え、やれることを実行してきた感じです。

Q2. 創業パートナーの見つけ方や、パートナーとの関係性はどうすれば良いでしょうか?また日米で投資家との関係に違いはありますか?

"担当するファンクション・役割を明確化する"

そうですね。身近なスタートアップの創業者の中でも仲違いしているケースもあるので何とも言えませんが。少なくとも、自分が得意とする分野は創業者間で被らない方が絶対良いのではないでしょうか。例えば、3人で創業する場合は2vs1のように創業者同士が分裂し対立してしまうケースは、起業したてのスタートアップには良くある光景だと思います。そういった意味では、担当するファンクションが被らないような相手を創業パートナーに選んだ方が良いのかなと思いますね。お互いが創業者というよりは重要なファンクションの一部で欠けたら困る!という認識で理解していたほうが、創業者同士の関係性は長続きしやすいかもしれません。

“日米のVCに大きな違いはない”

日米のVCとの関係性は、個人的にはあまり変わらない気がします。ほとんどの場合、起業アイデアを投資家に向けてピッチする際は資料を読みませんし、ピッチ後すぐにディスカッションが始まりますね。後は知り合いや著名な人からの紹介等の伝手がないと、VCと直接対面することは難しいかもしれないです。敢えて日米VCのコミュニケーションの違いを出すとすれば、日本のVCは一ヶ月毎に取締役会を行う場合が多いんですが、米国のVCは四半期毎にやるいったところでしょうか。投資先の企業に対するモニタリングは日本の方が細かい、という印象がありますね。

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Q3. 次世代型電動車椅子「WHILL」を創業する上で、大変だったこと・意識したことは?

"困難だった資金調達"

やっぱり、起業時に大変だったことはお金がなかったことですね。補助金等含め様々な機会を模索しましたが全て落選し、当初はかなり苦労しました。資金調達で解決していかないといけなかったのですが、電動車椅子の市場サイズは日本だけでなく世界全体のマーケットを合わせてようやく4000~5000億円規模近くになるんです。だから、資金調達をする上では、どうしても当初から海外市場を視野にいれなければならない状況でした。そこで一番市場の大きい北米でやります、という流れになりました。そこから、今の海外市場への進出がつながっていて、プロダクト開発もしているという状況です。必要だったから世界へ出るしかなかったという韓国の人が自国のマーケットが小さいから海外市場を狙うのと同じ理由ですね。

“プロダクト開発で意識する各国のニーズ"
"ハードとソフト"

確かにベースと呼ばれる根本的なニーズの部分ではグローバルで対して違いがない場合もあります。一方で、やはり国ごとに被る消費者ニーズと被らないニーズというものは存在します。プロダクトを企画するときも、その国ごとに変わらない部分、変わる部分は意識してましたね。そういった国によって異なるニーズに関しては、ローカライゼーションという形で製品開発に反映させていきました。共通のコア部分とローカライズするオプション部分を作るということです。またそれと同時に、創業時からハードウェアとソフトウェアの両方で強みを作り出すということは創業時から重視していたことでもあったので、次世代型電動車椅子というハードウェアと、次世代型モビリティのソフトウェアといった両分野で勝っていくためにどうすれば良いのかという点は常に意識をしています

Q4. ビジネスモデルがマーケットにフィットしない場合、海外で起業する上で、日本人としてのアイデンティティーをどれだけ意識するべきなのか?

“分野と国によって異なる”
“できたら日本の利点が生きるような分野と国に絞る”

分野と国によると思います。例えば一般的なWEBサービスを日本人がアメリカで起業するとなった時に、個人的にはあまり利点がないのかなと思います。一方で消費財や日用品などのクオリティが高いと思われる日本ブランドが生きるようなものを中国で展開するのは利点があるように思います。他にも日本起源の文化である必要なカテゴリーは日本というのを生かしてグローバルに持って行きやすいと思います。例えば、漫画やラーメンなどといった食事分野など。国と分野で日本であるメリットがあるかないかかなと。

ちなみに余談ですが、今は米中貿易摩擦で中国で米国製品が上手くいきにくい中で、中国にて日本の製品は注目されている傾向があるんです。中国向け製品のマーケティング手法の1つとして「日本」発の製品という点を誇張しているものもある。そういった点では、特に今の環境下においては日本という強みを活かすことができるのかなと思っています。

最後に
“起業家へのメッセージ”

起業されている人々は日々頑張っているでしょうし、特にいうことはありません。僕も頑張りますのでお互い頑張りましょう。

※本記事は、2020年10月22日に参加者を限定開催したのAsk Me AnythingでのQ&Aのやり取りの一部抜粋です。

SVJP Entrepreneur Program “シリコンバレーへの挑戦“のイベント全体のレポートはこちら


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