【column #27】 散歩ドラッグは自由にする / 押方広大
遠くの稜線も綺麗に見えた日。気付けばお昼になっていた、「今日はお散歩日和や!」と早朝からご機嫌で散歩をはじめたが、健全にお腹が空いた。
しばらく歩くと、どこからともなくスパイスの香りがした。
私は迷う事なく「よし、カレーを食べよう。」と、細い階段を上がって扉を開けた。
そこが私とカレー屋さんとの出会いで、禁断?の世界への入口だったとはその時の私はまだ知る由もないのであった…
この度は、カレー食い終わったと思えばラストまで本を読むような若僧に、コラムを書く機会を下さってありがとうございます。
そんなSVBCが私は大好きです。
今これを読んで下さっている皆さまともお友達になれる日を楽しみにしております。
普段はよく延岡をうろうろと歩き回っております。
散歩は必要な道具とかも特にないし、場所も選びません。老若男女誰でも可能なので、趣味としては最強です。
私は、早朝に家を出て晩に帰ってくることもある程の散歩好きで、歩いてる最中は景色を眺め、自然の音に耳を傾ける日もあったり、クラシックからテクノまで、気分に合わせて音楽を聴きながらルンルン歩く日もあります。
他にも、意識を内面に向けて、思考を整理する為に散歩を利用したりもします。
学生の頃は、まわりから見るとおかしいと思われるような散歩もよくしてました。
当時どこまでもいける気がして、散歩仲間を2人連れて40kmの散歩したり、それはまあ狂ってたかもしれないですね。
熊本から福岡まで歩いて行けたら面白いと、俺らならやれるとか根拠のない自信もって。
22時から次の日の10時まで歩くとは思わなかったですけど、、まず感じたことは歩いているとお腹が空くということでした。
10km通過した頃には、お腹空きすぎて、セーブ地点を探す勇者の眼差しでコンビニを探してました。ようやく見つけたコンビニで軽食を補給します。
疲れてないと言えば嘘になりますが、しかしこちとら深夜テンションです。軽快なステップだって踏めます。伝説の1日になるとか思うと余計に楽しい。
20km、足の裏に出てきたマメが着々と肥大してきた頃、普段は落ち着いている友達が急に笑いだしました。この調子で歩くことの途方もなさ、無謀さに気付いて、おかしくなってしまったのでしょう。でも引き返せる距離じゃない、歩ききること以外に道はありませんでした。「知らない夜道で爆笑して歩く友達」という非日常さに何だかこっちも楽しくなってきますが、疲れは溜まっています。またコンビニで栄養補給し、歩き始めます。
30km、虫の死骸だらけの奇妙な山を越えます。虫嫌いの私は大きな精神的ダメージを被りましたが、辛うじて歩けています。だけど二度とこの道は歩かないでしょう。ほんとに辛かった。
空は明るくなり、日照りという別の敵が顔を出した頃、丁度おはぎをつくっていたおばあちゃん達に声をかけられます。
今思えば、早朝に大きな声だして下山してくる若者なんて珍しがられて当然ですね。
そこで会ったばかりのいわば他人の自分達に、休憩していきなと、おはぎとお茶をご馳走して下さいました。
それはもう感動です。中学生と間違えられたのは悔しかったですけど、、
空腹、疲労とそして人の温かさ、全てが相まって世界一美味しいおはぎでした。
あの甘さが体と心に染み渡ってたまらなかったです。
思い出したらまた会いたくなってきました。
荒尾のおはぎ、皆さんも是非食べてみてください。
心が満たされ、元気になった私たちには希望しか見えなかったです。
その後もひたすら散歩し続け、ようやく40km歩ききることができました。私も友達もはしゃいで喜ぶ!そんな気力は残っていませんでした。
しかし、とてつもない達成感で脳汁出まくりでした。
一緒に散歩した友達とは今でもよくこの時の話で盛り上がります。
またしようかと言ったらそれは断られました。
この思い出はだいぶ尖ってますが、これも散歩で日常的な気軽に歩くのも散歩です。
つまりは自由!私たちは既に自由を手にしていたんだと気付かせてくれます。
他には、大雨の深夜に尾崎豊爆音で散歩、なんてこともありましたね。
どれもいい思い出です。
皆さんも1度試してみることをオススメします。
後先考えさえしなければ、すごく新鮮で楽しい体験になります。
気分次第でおかしなことでも簡単に、自由に出来ちゃうんです。
散歩を続けて、散歩仲間もできたし、散歩による出会いも生まれました。
ですがそれが目的ではないですし、目的無く自由に散歩するからこそ周りの景色に目を向けることができて、不自由だと感じていた事は自分の行動によって自分を縛っていたのだと気付かせてくれます。
いまの私には自信を持って熱く語れるようなことはありません。
唯一、延岡を散歩しております。
最近は随分と暖かな空気になって、何か始めるには最適な季節になりましたね。
春の日差しに、「いけないルージュマジック」でも感じながら歩いてみるのはいかが?