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限界同人記~漫画苦手同人初心者オタクが2ヶ月でイベントに漫画同人誌を出すまで~

どんな話?

タイトルそのままの話です。
長らく創作でイラストしか描いていなかったオタクが版権に立て続けに沼落ちして、2年ほど拗らせたジャンルで気が狂って漫画本を出すまでの2ヶ月の動向をまとめた限界同人実録です。
それなりに大変でしたがとても充実していて楽しかったので、同じような境遇の方が本を出す後押しになればいい&自分用の備忘録も兼ねたnoteとなっています。

後押しになればいい、とは言いつつも同人漫画のハウツーやイベント参加のためのTIPSなどはあまり書いていないです。不慣れなオタクが不慣れなりにウオオオ!とやっている様子を見て「こんなグダグダでもやれるんだ!自分でもできるかも!」という方向での励まし(?)として作用することを期待して書いてます。
みんなも同人誌、作ろう!


自己紹介

これを書いてる人の創作(一次・二次)活動の略歴です。

  • 小学校高学年で某落ち物パズルゲームから『二次創作』『同人』の概念を知る

  • 中学生の時に某六人兄弟ジャンルで即売会(一般参加側)デビュー

  • 高校時代はTRPGにドハマりし、一次創作を楽しむ横で細々と版権を楽しむ→この頃からオンセ用の立ち絵などで本格的にPCでデジタルイラストを描くように

  • 大学生になってから自由にできるお金が増え、アニメのサブスクサービスやswitchを自費で購入し版権にも手を伸ばし始める

常々抱えていた本を作りたい欲求に限界が来る(1~2月くらい)

具体的なきっかけは覚えてないが

  • 仲良しのフォロワーが東京のイベントに出ることを決めた(のを雑談で聞いた)

  • 本作るならこのジャンル!と決めていた某バディアドベンチャーゲーム用の壁打ち垢の下書きネタメモがかなりの量になっていた
    これらをめちゃくちゃ頑張って1~2P漫画にしたものをかき集めたら本になるのでは?となった

  • 上記ジャンルに対する履修が終わり、熱が一通り落ち着いて、自分の中でゆっくり解釈を反芻して出力できる気になってきた

  • それとは別に某奇妙な漫画ジャンルにハマり、大量の二次創作を摂取し二次創作に対するハードルがかなり下がり、インスピレーションが高まっていた

あたりだと思う。

目についた印刷所に資料請求した(2月末)

同人誌作成の経験があるフォロワーから「まずはどこで印刷するか決めた方がいい」と言われ、「同人誌 印刷所」で検索してヒットしてピンときたところに2日かけてウワ―!と資料請求した。以下順不同

個人的にこれがかなりよかったです。 見本の紙と手持ちの同人誌(学生時代の宝物)を見比べて「これレザックろうけつかも…!」「遊び紙のチョイスうま~い!」「色刷り本文ってかわいい!」となり、印刷することに対してめちゃくちゃモチベーションが上がった。

リア友を巻き込んだ(2月末)

サークルパスでオタ友を釣った
昔から親しかった子に売り子・不在中のお店番をしてもらえないか持ち掛けた。人を巻き込むことで絶対に何が何でも新刊を出す!という背水の陣を引く意図もあった。
おおむねいい返事をもらえた。持つべきはやっぱり友である。

イベントに申し込んだ(4/7深夜)

卓(※)の終わりに見守ってもらいながらb+へのサークル申し込みを終わらせた。 たしかこの日が申し込み〆切最終日だったので滑り込んだ形だ。
本当に退路は断たれた。

※…TRPGのオンラインセッションのこと。オンゲのマルチプレイのようにネットの友人と通話を繋いでチャットをしながら遊んでいた、という認識で概ね相違はないです

4/8 本のサイズを決めよう!

まずは原稿データを作るために本の大きさを決めることにした。
この時点で候補にあったのはB6かA5。

B6:作風も内容も一番好きな同人誌がB6サイズだったので、最初に作るならかすかなオマージュを捧げる意味でこのサイズにしたかった
A5:次点。手のひらより少し大きい手頃なサイズ感が今回目指していた作風とマッチしていてかわいいと思った

今回作るのはギャグ、B6サイズのオマージュ元本はシリアス方面の本なので今回とはそぐわないかも…と思いA5で決定。
あとはB6になった途端やってない印刷所が多いのもA5にした決め手だった(だいたい体感でA4、A5、B5、文庫本)

やりたい加工や料金表・手元の印刷見本と比べて、今回ご依頼する印刷所はサンライズさんに決定。


以下はダイジェスト形式で何をやったかをざっくり日記形式で綴っていきます。
同人誌を作ろうとした時点でこのようなまとめのNote記事を作ろうと決めていたため、作業した日はそのあとにNotionで作業内容(本の何をやったか)と感想(それに挑戦してどんな気持ちになったか)の簡易記録をつけていました。
当時の私がどんなことを考えて制作していたのかをなるべくありのまま、感情を損なわぬようにあえて乱文・箇条書きで記載しております。


4/9 奥付を作ろう!

・すごい!サークル名印刷所本の名前並べるだけでなんか…「本を作っている」気になれる!奥付でこれなら本文やったときどうなっちゃうんだ!?

・奥付のレイアウトをあれこれしつつ家のプリンタで試し刷りして色々文字の大きさ試してみる
↑この作業はのちのち本文原稿やるときにも効きました

・フォントサイズ、液晶で見てこれくらいかな?って思ってる1/3くらい小さくていいかも
今回のA5サイズだと8~10で十分、15~はかなり目を引く、最大でも25くらいでいいかんじ

4/13 表紙ロゴを作ろう!

・adobe?そんなものはない
pintarestや同人のロゴデザイナーさんのアカウントを参考に必死こいてデザインを決め、商業利用可のフォントを探しまくってうんうん唸りながらやった

・デザイナーさんに外注するのも考えたけど自分でやってみたさもあったから今回は挑戦!はじめてだからこそ全部自分でやってみたかった

・完走した感想…つらかった(率直)正解がないから難しいね

↑今回実際に作ったロゴのタイムラプス動画です

見積もりをしよう!

・サンライズさんの見積もりページに仕様を入力し、表紙と本文とかPP加工とか選んでポチポチ…

・最後の搬入先選択でイベント名・搬入先を入れた瞬間送料が飛んでちょっと面白かった

・この時点で一応他1社のweb見積もりも通したが、やっぱりサンライズさんのままで継続!次があれば他の印刷所さんでも頼んでみたい

5/8 発注をかけよう!

・前の日記から気づけば1ヶ月近く経っていた
記録することがなかっただけで原稿はしてました 嘘です 原稿もやってたけど別ジャンルにややかまけていました アルティメット懺悔

原稿に飽きて無理矢理休憩とした空き時間でサンライズさんにちまちまして入稿予約をしてきた 早割が効く5/17まであと9日が締切!

・原稿はまずまずの進捗 既に完成している(とした)ページもありなんとかなりそうな雰囲気 なんとかする(使命感)

・漫画初心者の本が売れるなんて思っちゃいないから今回は出来れば1000万点です今回は クオリティ求めるなんて愚行です
出ない神本より出たクソ本のスローガンを遺伝子に刻みつけろ

当時くじけないように自作テンプレートに記載しておいた"祈りの言葉"
完成していないページのサムネイルは全部上記のようになるため、
それがそのまま自分への圧になりました


5/11

実は1Pずつ終わらせるよりまとめて線画のターン+トーンのターン+擬音のターンとしたほうが効率よくないですか?(もう既に完成としたページがあるのに今更それに気づいたのか!?)(飽き性のお前に本当にそれが実行できるのか!?)

5/16~17朝

・フォロワーと作業通話で見張ってもらいながら原稿した

・舐めきった進捗で放置してた4月の自分をアホほど呪って恨んだがもう遅い その日俺は思い出した 自分が毎年夏休みの宿題で追われるタイプのガキだったことを コツコツタスクを消化できるような人間ではない屈辱を…

・なくなく表紙だけ終わらせて本文は少し遅らせた 予算の都合もあったが早割前提スケジュールで組んでたのは良かったと思う(普通納期でやってたら確実に特急で追加料金乗ってもっとデカい悲鳴上げてたので)

・多分今これだけ苦しくても次の本出す時にはまた同じ轍を踏む学習しない自分の姿がありありと想像できるからキツい 20年も付き合ってきたから流石にもう自分の性質はある程度理解してる わかる 多分次もまた今と同じような苦しみしてる

・かといってイベントに合わせないと延々と原稿完成させない姿は見えてるからまあ…………皆こうやって苦渋を舐めながら締切と戦って本を出してるんだな……世の中の同人戦士、偉大すぎる これから本を買う時の手に取る重みが増す気がする 作り手の苦労を知れただけでも今回は大収穫だ…

5/19~20

・描きたいところ7割終わった(描きたくない3割を残していた)ところから『描きたくないところも描かないと完成できないので嫌だろうと画力が足りてなかろうと今の実力でやるしかない』と悟ってから筆の進みが早かった ヤケクソになったとも言う

・体感〜4割余裕、〜6割やや余裕、〜8割苦行、〜10割拷問くらいだった 次やる時はモチベも考えたペン入れを意識したい できるか?無理だろ

・あとクリスタに向き合うとセリフが出てこないタイプなので別で書いておく 次の本はレイヤーももっと分ける(自作テンプレの改修必須)

・ここで得た真理!原稿は孤独なので俺が手動かさないと生み出せないんだわ(残酷)

同人誌、いかにして描きたくないシーンのモチベをどうするかの『自分のテンションをコントロールする』が肝要なのでは?

・同人なんて趣味なんだから毎コマ好きな構図で描きたいだろ(それが簡単にできりゃ苦労しない、それはそう) 全てのページに描きたい構図入れるしかない ロン毛とか

5/25 イベント前日

前日 この1週間ちょい、入稿を終えて安心しきっていた 前日に押し込んでサークル準備をした
ありものの小物(小物のイーゼルやブックスタンド、マスキングテープ、ガムテープ)を揃えたのち設営用の布がないことに気づき急遽買い出し
夕夜かけて縫って形にしてたら無配作る予定がおじゃんになった 計画性が無さすぎる
↑しかしこの布が結果的にかなりきちんと使えたので功を奏した

5/26 イベント当日

売り子を頼んでたリア友が遅れて1人で設営
本の詰まったダンボール箱を開けるのが怖かった 開けてしまえばもう「本を作ったことないオタク」には戻れなかったから

開けたらやっぱり怖かったけど、その何倍も何倍も嬉しかった 2ヶ月近くかけてうんうん唸りながらもやれる時間でやれることを最大限やったから

表紙が可愛い サイズがかわいい 本文は当然私が書いたから(内容の巧拙はともかく)私の解釈に沿ってていい

かなり妥協したこともあったし、できた本を見て「こんな拙い出来の本売りたくない」になるのが怖かった
でも実際は見れば見るほど誇らしくて楽しくて愛しかった 売れても売れなくても嬉しかった

あとがき

最後になればなるほどひどいものだったが(特に〆切間際は感情の極まり方がヤバく、それが文章に顕著に出ていたと思う)、こんなんでもなんとかイベントに本を持ち込めたので何とかなると思います。

当たり前だがいいね数の多い同人ハウツー記事などはとても読みやすく、出典がきちんと記載され動線がきちんとしており、ありていに言うなら「ちゃんとして」いる。
だがそれゆえにイベントに出る側は「ちゃんとしていなければならない」という心理的なハードルができてしまってはないだろうか。

今このノートを読んでいるそこのあなた!絵が上手く内容のしっかりしたいい本を作らなければならない、そんなことを考えていないだろうか。イベントに参加した私の答えはこうだ。「そんなわけがない」!

誰だってはじめは右も左もわからない初心者だ。
この記事の主旨なので何度でも繰り返しますが、こんなんでも出れたし売れた(※)のでどうか自信を持ってイベントに申し込んでほしい。
※近隣の同カプサークルの方や一般参加の方に何冊か手に取っていただけました。本当に嬉しかったです。この場を借りて最大級の感謝を申し上げます。

また、イベント当日の思わぬ収穫としては『全ての創作物に対する見方が変わった』ことでした。
売り子の友人にサークルを頼んで、一通り当日出店していたすべてのサークルを見て回ったがその全てが多かれ少なかれ原稿や創作の修羅場をくぐり抜けてその人が作った「想いのかたまり」だと思うと、全てが尊く輝いて見えました。

ハンドメイド・アクセ系サークルは「パーツの選び方がすごい!元キャラの外見がちゃんと思い浮かぶ!」となり、小説サークルは「表紙の凝りよう・文庫風のデザインがすごい!分厚い!」となり、コスプレ系サークルは「衣装作成から撮影・レタッチまでするのすごい!写真集の原稿作成もすごい!」となり、たとえジャンル元を知らなくても(一次創作でも)「こんなものを自作!?!すごい・・・」と胸いっぱいに畏敬の念が溢れてきました。
これはサークル側で参加することでしか得られなかった感情だと思います。

何事もはじめの一歩というのは勇気がいることだし、多くの気力を必要とする。でもそれを乗り越えた先にはきっと喜びがあります。非常にありきたりな主張に落ち着いてしまいましたが、少なくとも私は今回の同人作成→イベントでそれを深く実感として受け止めることが出来ました。
他の作家さんもそれを知っているからこそ、同人イベントが今日まで絶えずにいるのではないでしょうか。

ちなみに筆者はあまりにも楽しすぎたので、当日の帰り道にそのままスマホから9月のイベントにサークル参加申し込みをしました。


次の目標は新刊2冊!クリスタくんと二人三脚で原稿、がんばりま~~~~~~~~~~~す!!!!!

これは汎用性の高すぎる好きなゲームのスクショです
© SQUARE ENIX

~完~

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