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オバマは大人の政治家だ、イラン映画『君は行く先を知らない』を推薦するほどに。

そりゃ誰だってあの映画を観れば3粒の涙を流すでしょう。だって、善良なイランの一家族がなけなしの財産をカネに替え、命の危険を顧みず押しつぶされそうなほどの不安を隠しながら、おんぼろのクルマを運転し、長男の青年をイランから非合法脱出させるため国境までドライヴに出るのだ。大人たちはどこかでなにかをしくじったならば、全員命を失ってしまうことをわかっている。しかし6歳ていどの男の子(次男)だけはなにも知らされていなくって、まるでピクニックにでも行くようにはしゃいでいるのだ。荒々しい岩山に囲まれたイランの風景が車窓の外を流れてゆく。


そりゃ誰だってあの映画を観れば胸が締めつけられることでしょう。なぜって、心ある大人ならば誰だって、どんな国にも心優しい人びとがいてその国の政治に傷つけられ苦しめられているだろうことを想像できるから。それが北朝鮮であろうが、ロシアであろうが、そしてイランであろうとも。心ある人ならばたとえその国の政治を憎もうとも、しかしけっしてその国の人を憎まない。ぼくもまたそういう態度に大いに共感する。



しかし、多くの日本人はイランの政治的狂暴性をなにひとつ知らず、ともすれば世間知らずでお人良しなので、情緒に流され、保持すべき政治的警戒さえ解いてしまう。とても危ない。岸田総理がこの映画をご覧になったかどうかは知らないけれど、いずれにせよお人良しにもほどがある。敬愛するイスラム思想研究者の飯山陽(いいやま・あかり)さんの解説を伺ってみましょう。


オバマ元大統領がなにもかも承知の上でこの映画(『君は行く先を知らない』英語タイトル Hit the Road)を推薦してみせるのとはわけが違う。

イラン映画Panah Panahi監督『君は行先を知らない』(2021年)、ぼくは新宿武蔵野館で観た。

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