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インドの春、老若男女が色彩まみれ、踊って叫んで陽気にはしゃぐ。

ヒンドゥー教徒の代表的な祭は年間おおよそ8つほどあるけれど。世界的に有名なものは春祭のHoliと秋祭のDiwaliでしょう。Diwaliは父親が家族に、そして恋人同士がお互いに、キラキラの包装紙に包んだ贈り物を贈るという意味で欧米のクリスマスに似ています。


他方、春祭Holiは老若男女みんな揃ってコドモに戻って無邪気にはしゃぐもの。いいえ、そういうふうにまとめてはやや誤解誘発的かしらん。実はHoliは夜明けまえのHolika dahan(焚火の夜)から始まります。こんな神話に基づいているそうな。神話上の女Holikaは火よりも強い魔法のマントを着ています。そこでHolikaは自分の霊力を甥っ子を殺すために、かれと焚火の中心へ踏み込んだ。ところがそのとき神はHolikaの邪悪な心をよろこばず、Holikaの体から魔法のマントを奪い去り、そのマントで甥っ子の体を覆った。その瞬間Holikaは全身大火傷を負い、甥っ子の命は助かった。ヒンドゥー教徒はこの神話を〈悪に対する善の勝利〉の象徴として大事にしていて、夜明けまえみんなで焚火を囲み、Holikaをかたどった人形を燃やす。そしてたがいの健康と幸福を祈ります。

Holika 人形の作り方。


さて、そんな夜が明けるといよいよHoli本番です。家族、友達はもちろん道行く知らない人であっても、たがいの顔や衣服を華やかな色彩をなすりつけあう。色水を詰めた水鉄砲も大活躍。インド人は心得たもので、この日は汚れてかまわない服を身につけたり、あるいはあえて白いシャツを着てカラフルな汚れを楽しむ。合言葉は Happy Holli! 


なお、Holi は愛の季節の到来のお祝いでもあって。Holiには過去のいさかいを忘れて許し合い、壊れていた関係を修復する日でもあって。これまで喧嘩していた同士が、色粉まみれの顔を合わせて仲直りをできる。そしてみんなごちそうを食べて、そしてみんなで集まってDJの音楽のなかで踊って叫んで陽気にはしゃぐ。合言葉は Happy Holli! もっとも、この日ばかりはスケベ男どもが道行く美女に抱きついても許されるゆえ、美女は警戒が必要な日でもあります。



ぼくは日本人ながらお祭り大好きなのでHoliを大好き。今年2023年のHoliはたいてい3月8日ながら、しかし、曜日の関係で(日本1のインド人タウン)東京江戸川西葛西ではきょう3月11日(土)怪獣公園でホリ・フェスティヴァルがおこなわれた。在東京インド人大集合なわけですが、インド好きの日本人の姿もちらほらあって。ぼくもまた熱狂的ダンスパーティに混ざてもらいました。いやぁ、インド人ってダンス大好きですね。みんな頬を紅潮させてダンスを愉しむ。こういうときにヒロインになるのはもちろんダンスの巧い美女で、彼女たちはダンスパターンが豊富で攻めたダンスを踊る。また、アホな男はダンスで笑いを取ろうとする。なかにはTシャツを脱いで半裸になるアホ男もいる。ほぼすべてムーヴィーソングでインド人は映画大好き。ひとつひとつの曲に歌詞があって、たいてい愛のメッセージゆえ、男も女もキャーキャーはしゃぐ。ぼくは異教徒の日本人ゆえ賛助会員ながら同じ境遇のシーク教徒のアホアホインド男とダンスバトルをして、まわりのインド人たちの笑いをとった。また金髪の英国人男性(?)のように見える中年男性は奥様のインド女性同伴で祭に来てらして、カラフルな顔でちょっと恥ずかしそうに照れていた。耽美系の日本人青年がいつのまにかインド人たちに混じって熱狂していた姿も微笑ましかった。いまみたいな不安材料の多い時期にはなおさらに、みんなで集まって陽気にダンスしてたくさんの人たちが一体感を得ることはかけがえのないこと。どんなセラピーにも勝る幸福感が得られます。


ぼくの贔屓の西葛西のインドレストラン、タージパレスはフェスティヴァルへの出店はしなかったものの、恒例の土曜ランチブッフェのメニューのなかで、チャナ・マサラ、アル・ベイガン、ララ・チキン、ジーラライスの他に、2つの料理でHoliらしさを演出した。一品は、Gujiya(ココナツ風味のナッツそのほかを具材にした揚げ餃子、スウィーツ仕立て)。もう一品は、Vegetable Sesame Toast (食パンにキャロトピュレを塗って白胡麻を振りかけ、食パンを縦長に五等分して、高温の油で揚げたもの。外側カリッ、内側しっとりです)。


インドには伝統音楽、料理、そして祭りがいまなお熱狂的に生きていて。ぼくはヒンドゥーの祭のたびに、ますますインド人を好きになる。


Eat for health, performance and esthetic
http://tabelog.com/rvwr/000436613/

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