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文書作成に必要な力

総合職としての会社生活では、文書作成の機会が多くあります。そこで文書作成能力を高めておくと、時間の有効活用も出来ますし、自分の能力を正しく認めて貰えます。そのためここで、文書作成に必要な力について、説明します。

1 文書全体の制御

1.1 目的と読み手の明確化

文書を作成するために、「何のために作成するか?」を明確にする必要があります。まず読 者と、彼の活躍する状況をキチンと想定します。同じ読者でも、目的によって要求する内容は異なります。 目的にあわせて、記述することで余分な情報を削減できます。 一方、技術報告などは、時代を超えて読まれる“生命を持つ文書”になる場合もあります。

後世に残す 情報は
「自分がその仕事を着手する前に読んで解るか?つまり、事前知識が無くても読めるか?」
と いう規準で判定します。 文書の読み手を明確にすれば、必要な情報が見えてきます。読み手を想定する場合に大切なことは、 読み手は、知識は無くても合理性はあることを認めることです。自分の考えでは、理に合わないと 思っても、相手の立場では合理的な理由があることが多いのです。

なお、東京工業大学名誉教授の川喜多二 郎氏は文化人類学の調査で、色々な動きの裏にある合理性を見出すために、 KJ 法を考え出しました。レヴィ ストロースも構造主義を考える時、観察対象者の合理性を前提としています。このような合理性は、求める 気持ちがないものには決して見出せません。 なお、複数の読み手が存在したり、想定がつかなかったりする場合にも、仮に読み手を想像して書 いてみることが有効です。書きながら、読み手がどう考えるか想像することは、読みやすい文章を 作る早道です。

このため、想像力を鍛えることが重要ですが、想像は限界があり、100 点 満点の読者像が作れるものではありません。ある程度想定できれば満足すべきです。時間をかければよい と言うものではありません。

1.2 主題の設定

目的とする課題の内、自分はどのよう部分に答えるのか、取り組みの焦点を絞ります。特に大きな課題 を与えられた場合には、副題を設定することが効果的です。

なお、主題は自分が書きやすいことよ り、『求められていること』を選ぶのが原則です。長期的な目的を胸におきながら、与えられた目 標を解決する手段を探る姿勢があると、脱線せずに骨太の文章ができます。 主題設定時には、自分なりの仮説を持っておくことが望ましいです。

仮説は、目標規定文にまとめるこべきです。仮説は調査目標を絞り、作業を効率化するが、思い込みによる見落としの危険性があ ります。自分の間違いの可能性を常に考慮し、柔軟に仮説を変更することも重要です。

2 情報の収集

この部分は、勉強の方法と共通するモノがあります。全体を上手に把握し、目的に合わせて必要な情報を得て納得することは、社会人として効果がある、勉強スキルです。

2.1 全体の把握

自分が書くべき内容の全貌を把握し、常識を持つことがまず重要です。そのような全体像を自分 で持たない限り、入手した情報を上手く据えることができません。

全体像を把握するためには、まず前例等を見て経験的に知る方法があります。直接の前例がない場合でも、類推を利かせて全貌の案を作るの も有効です。このためにも仮説を持つ必要があります。 全貌を掴むため、とりあえず自分が知っていることを、書き出します。自分の経験、使えそうな 理論、類似例などいろいろな分野から知識を総動員します。

しかし、全体がつかめない場合は、まず百科事典や辞書で全体を掴みます。さらに必要ならば、その分 野の標準的な教科書等を読むのも有効です。本の情報は周辺まで含むので、全貌を理解しやすくなります。特に、基本原理・原則での説明は、納得しやすく力があるので、何度も見直し理解する必要 があります。全体像が見えてきたら、もう一度自分の構想をまとめておくとよいでしょう。

2.2 個別情報の収集

現場の情報、現物の情報を優先させるのは原則ですが、現在はネットでの情報収集も補助手 段として有効です。しかしネット情報は玉石混交であり、評価して受け入れる必要があります。

情報収集には、自分の今までの知識・経験や思いつきも含まれています。これらは、書くことまたは パソコン等でデータ化することで明確になります。最初は断片的にしか出ない知識・経験・発想も多くを集 めると、新しいものや本質がまとまって見えてくる場合があります。

3 情報の加工

情報の加工を行うため、早い目に紙かパソコン等のデータ化で、表現するこべきです。頭の中にある情報を、 パソコン画面や紙の上に出力することで、議論が見えるようになります。これは最終的な提出物ではありませんが、記述したもの全体を見渡すことで、問題の詳細を追及したり、新しく発想したりすることが可能 になります。

この段階で原理原則を生かす、モデルを作ることができれば、文章としての説得力は一段と増えます。例えば
「人間は合理的に行動する。原則としてお互いに善意で行動する。一度始めた行動は 環境が変化しても持続するので、一件不合理な行動もある」
等です。

また、全体像ができた上で、議論の焦点に対してなぜの追求を繰り返し、真因を明確にすれば、検討漏れのない原因追究が出来るので、対策も効果的に成ります。このような検討は、100 点満点の全体像 が出来てから行うのではなく、早い目に着手し、修正を面倒がらずに行うことで、完成度の高い文書 を作成できます。

ある程度、満足できる情報が集まったら、今度は絞込みを考えます。情報は、必要なものを絞って、必要十分な記述にすることで、使えるようになります。

特に、自分が記述したものを使って、 頭の中と記述したものでシミュレーションします。シミュレーションを行うと、不備なものが見え てくるし、客観的な批判も出来ます。不十分な記述の場合は、動かすことができなく、欠点 も見えないことが多いです。

逆に総合的に評価して、不要なものを除去することも大切です。このよう にほどの良い記述が理解を助けます。 また、この段階で他人に見てもらうのも効果があります。きめ細かなフィードバックにより修正すると、精度を上げることができます。 なお会社の文書では、問題点と解決案は同時に示すことが、口先だけの評論家と言う、悪評を避ける ためにも大切です。

4 情報の出力

関連する事項を上手にまとめ、紙面に配置し、各項目の関連を流れが良くなるように表示する、い わゆる清書の段階です。読む人の印象を考え、まず掴みその後スムーズに展開するように考えます。 自分の主張したいことをまとめて、理解しやすいように配置します。

なお、有限の紙面を考えて、重要 な事項を絞り込む必要があります。目的手段の階層がしっかりしていれば、どこできるという判断 ができます。また表現に基本パターンを持つのが有効です。自分のパターンを確立すると、迷わず に書けます。

パソコン等で電子化した文書は、修正が容易です。従って見直し修正を重ねることで、文章作成能力お よび文書としての完成度を、向上させます。凝りすぎはいけないが、修正は積極的にお こない、能力向上に努めましょう。

なお、表現において、論理的を意識することは重要ですが、完全な論理に乗る文章は意味がなくなる危険性があります。 それより隙が少ない緻密な表現を考えることが重要です。

まとめ

文書作成に必要な能力

#ビジネス部門


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