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日本的根本主義?

山本七平の代表作の一つ『「空気」の研究』の最終章に

日本的根本主義(ファンダメンタリズム)について

があります。今までも、「空気」や「水」についての解説は、色々とありましたが、この「根本主義」について、理解すると、日本文明の特異性が、よくわかると思います。

さて、山本七平は、この章を

敗戦時の捕虜収容所で(親切な)アメリカ将校が
「日本人には進化論を教える必要がある」

と試みる話から始めます。ここで、アメリカ人将校の考えは

日本人は知識がないから
「天皇を現人神と信じて
(神がかり的な)無謀な戦争をした。」
このマインドコントロールを解くため進化論を教える

という善意からの発想でした。しかしながら、山本七平たち日本の捕虜は

進化論など学校で習っている

とこれを笑っています。

そこで、米軍将校との議論で

天皇が神でなく「進化論」も知っている日本人が
あのような無謀な戦争をしたのはなぜか?

という問題に、両者がわからなくなってしまいました。

さて、この議論を本当に理解するためには

キリスト教の根本主義
キリスト教根本主義 - Wikipedia

の理解が必要です。彼らは

聖書の教えは絶対
学校で進化論を教えるべきでないと裁判

と言う風な行動をしました。なお、日本のメディアはイスラムの場合には、ファンダメンタリズムを「イスラム原理主義」と訳しています。

こうした

宗教の教えが絶対
政治にも影響

と言うのが、根本主義です。アメリカでは現在も

中絶反対

等に、宗教的な政治信念への介入が、見え隠れします。

こうした、科学などの合理性の暴走を押さえる、聖書を絶対とする非合理性の力が、アメリカ文明にはあります。

ここで日本を振り返ると、伊藤博文は

憲法調査のために西欧をまわって
「キリスト教伝統と西欧の憲法が
分かちがたく結合したものであることを知った」

合理性だけ「分離して、
日本にもって帰ることを可能と考え、
その方法を探求した」

と言う、アメリカ人から見れば、天才的な対応をします。

しかし、これは日本文明の流れを考えると

和魂漢才
和魂洋才

に見える

自分の魂を維持しながら
新知識を吸収し使う

と言うお家芸です。

さて、上で指摘した

合理性の暴走を押さえるモノ

日本文明では何か?

と言う観点で考えます。

なお、ここからは私独自の見解が、多くなります。

ここで、日本文明の基本の

和魂漢才

を、もう一度見直すと

漢才の合理性の暴走を
押さえ込む
和魂の世界

の働きが見えてきます。これは

日本書紀の論理性
古事記の豊かなイメージ世界

から、伝統です。これは、法による裁きのように、合理性の世界でも

北条泰時の御成敗式目にも
「あるべきようは」の納得
それを伝える
大岡裁きの人情話

があります。

しかしながら、明治維新の後から

和魂洋才

になります。ここで大事なことは

漢才は再度解釈が必要
洋才はそのまま使える

の違いです。例えば、蒸気機関や西洋医学は

海外のモノを輸入するか
海外で学んできてそのまま使う

方法で、入ってきました。しかも

海外の実績あるモノを入れる

ことが多くなって

自分で疑う力がなくてもできる

状況が多くなります。また明治以降の教育では

教科書と先生は疑うな!
と言う
教育勅語精神

での教育が進みます。これらが

昭和の「空気」暴走

に繋がりました。

さて、山本七平の問うた

日本的根本主義

について、私の答えは

大乗仏教の教え
特に
皆に仏の性がある

です。これがあるから

皆が納得するまで待つ

と言う手順が必要になります。これは、西洋文明の

リーダーしか理解できない
従って皆は従え

発想と大きく違いますが、意識している人は少ないように思います。

#山本七平 #空気 #根本主義

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