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エロマンガのすゝめ

2歳の時から絵を描くのが好きだったので、小学生の頃にはだいぶ描けていた方の人間だった。

しかも意識的にかわいい少女漫画的女の子を描こうとしていたので、周りの大人は無邪気に「大人になったらマンガ家さんになるんけ?」と聞いてきて、田舎ってもっと都会的じゃない?ってくらい限界の田舎に住んでいてマンガ本なんて目にしたこともない頃の私は、それがどんな職業かも分からず、とりあえず「うん」と答えていた。

そのうち、実はテレビで見るタイプのアレはマンガではなくアニメと言って別のものだという事を大体5,6年生頃に知り、当時の小学校(分校)に「マンガで見る歴史」みたいなシリーズがどどんと図書室に入ったことで「マンガっていうのはコマ割りしてあるんだな」程度の事が分かるようになった。

限界田舎では、月に2回変わる移動図書と民放2局しかないテレビ(出身地がばれる情報)以外にエンタメは自分で作らないと出てこないものだったので、当時歳の近い女の子児童の間では小説を書くことがブームになっていた。エッセイものを書いてる子、恋愛小説を書いている子、そして私は冒険に行くファンタジーの物語を描いていて、創作を当たり前にするという下地があった(こんな頃からファンタジー好きだったのを今思い出した)。

のだけど、マンガが描けるようになったなと思ったのはつい最近の事で。

いうてそんだけマンガを描く下地がある人間が、未だにマンガ家になれてないってのも不思議な話(他人事のように)(現在進行形)。

この間twitterでなんとなく思い出したことを呟いたんだけど、マンガが描けなかった原因はいくつかあって、それは私が度を越えた完璧主義なせいだったり、そのせいで小さい頃に無茶振りされたオーダーに振り回され基礎が身につかなかったせいだったり、ストーリーの作り方について解説された本をきちんと読んで実践していなかったせいだったり(大体そういう内容で実用的な本は洋書が多いのも功を奏してしまっている)なんだけど、まぁまぁそれらを乗り越えて、とある先生の元でアシスタントをしていた時の事。

先生は18禁の二次創作同人誌を出す予定があって、たまたまゲストしない?と誘っていただく機会があった。同人誌とはいえ原稿料を出してくださるという話であり半端なものを出しちゃいけないと思った私は、原作を即買いに行きアニメも繰り返し見て、当時先生に奨められていた「石ノ森章太郎のマンガの描き方」を出来る限り読み込んだ。たった8ページだけど、ほんと、自分の限界まで脳みそ使った。

その時に、エロマンガぱねぇなと思った。


エロマンガは、エロを読みたい人のためのマンガなので、求められるものがはっきりしている。マンガとしての優劣の起点が分かりやすく「エロいかどうか」に集約している。

男性向けエロは、女性から見るとそのエロページの多さに「ただヤッてるだけ」と評されがちだけど、それは違うと声を大にして言いたい。

女性はエロ本体よりその関係性に重きを置く、バランスの取れたコース料理のようなエロが好まれるけど、男性向けは、エロくて量が多ければいいという揚げたて唐揚げと千切りキャベツと米ドーン定食みたいなのが好きな人が多い。

ただし、エロだったら何でもいいというわけではなく、「そんだけエロかったけどマンガとしてちゃんと面白いかどうか」はかなり吟味される。

だから、ただヤッて終わりでは「で?なんやったんこれ」になってしまうので、きちんと導入とオチを盛り込む必要があり、そしてなるべくエロシーンに紙面を渡すためそれらを少ないコマに集約させる必要がある。ダラダラしたセリフ回しを廃し、情報をぎゅっと濃縮したり引き延ばしたりの使い分けをし、同じ構図が重なって退屈させないように気を使い、あとに残らない、あるいはめちゃくちゃ尾を引かせるようなオチを付け読後感を操作する。

そういう事をマンガ勉強ノートにまとめたりして、はっと気づいた。これって、エロに限らず、マンガの基礎文法じゃない?

たとえばこれ、エロの部分をアクションに置き換えても、やることは「いかにかっこいいアクションを描くか」以外は全部同じじゃない? 恋愛マンガでも実はそうなんじゃない? 

私はウォーターを得た(ヘレン・ケラー的表現)。

もしかしたら、アクションや恋愛に特化した漫画でも同じものが得られたかもしれない。ただ、一点それらと違うのは、エロって本当に求められるものが「エロ『だけ』」なので、読者に提供すべきものがすんごく分かりやすい、つまり初心者でも主題がブレずに描き切る事が出来るという所。あと、二次創作なのも幸いした。

ファンタジーが好きと前述したが、マンガでもそういうものが描きたいと常々思っていた。ただ、あまりにも漫画の初歩が分かってなかった私にとって、オリジナルのファンタジーはいきなり何の装備もせずに冬の富士山に登る行為に等しかった(ファンタジーは実はかなり力量が問われるジャンルで、持ち込み行く度に「初心者ほど描きたがるんですけど面白くないものばかりなんですよ」と言われまくったドチクショウ)。

マンガは自由で裾野が広い。だから私は、「マンガって何? マンガの基礎って何??」という核心の部分がずっと掴めずにいた。


エロマンガは、いいぞ。

本質がそこにある。

みんな、エロマンガを描こう。


(つかよくよく考えたら、今までいろんな画家や彫刻家が一度はエロチシズムに触れた作品を作るのはそういう意図があったせいなんじゃない!? 別に、私が特別奨めなくてもさ。)

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