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読書感想文『修羅の家』我孫子武丸・著


『修羅の家』我孫子武丸・著

Kindleで読了。
以下はAmazonの内容紹介より引用。

『殺戮にいたる病』を凌ぐ驚愕作!

この家は悪魔に乗っ取られた。
恐怖、嫌悪、衝撃。
そこは地獄。初恋の女性を救い出せるのか。

女の毒が体内に入り、蝕まれていく――
   
簡易宿泊所で暮らす晴男はレイプ現場を中年女性・優子に目撃され、彼女の家につれていかれる。
そこには同じ格好をした十名ほどが「家族」として暮らしていた。
おぞましい儀式を経て一員となった晴男は、居住者は優子に虐待されていることを知る。
一方、区役所で働く北島は、中学時代の初恋相手だった愛香と再会し「家族」での窮状をきく。
北島は愛香を救い出す可能性を探るが、“悪魔”が立ちはだかる。

Amazon

何故この作品を読み始めたのだ? と思わずにはいられなかった。最初の一行から既に後悔は始まっていた。それでもあっという間に読了してしまったのは、まったくもって救いのないストーリーがどう決着するのか、とても気になったからだ。

晴男という男の一人称で進むこの作品、彼がレイプの犯行現場を優子という悪魔のような女に目撃されるところから始まる。この時晴男は被害女性・まどかを誤って殺した(ということになっている)。
優子の家に連れて行かれた晴男が出会った優子の「家族」は、たちの悪い洗脳を施されているような印象だ。恐怖で縛られた人間というのは、そこから抜け出すことを考えられなくなるのかも知れない。フィクションとわかっていてもキツイ描写が多くて、正直精神に来た。

読み進めるうちに、ヒロインである愛香を慕う中学時代の同級生・北島が出てくる。おや、一人称が北島くんにチェンジしたぞ。視点が交差して進んでいくのだな。しかしこれにもちゃんと意味がある。
ところで私には気になっていることがひとつあった。それは冒頭で殺されたまどかの存在だ。まどかは晴男にとってどういう存在だったのか? わざわざネーミングする必要があったか? 気にするところじゃないか? などぐるぐると考えていたら、ああそう来たかと。

晴男と愛香、そして北島。最初嫌悪感しか抱かなかった晴男に感情移入し応援するとは予想だにできなかった。
胸糞描写を乗り越えた先にあるラスト。けしてハッピーエンドとは言えないし、もっとすっきりさせてくれても良かったのでは? という心残りもあったりはするのだけど、これはこれできっと良いのだ。
そういう作品なのだ。
読めとは言えないが、面白かった。

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