このバトル描写がすごい! 2019(上期)

by このバト文庫

第1位:魔法少女育成計画breakdown


 『魔法少女育成計画breakdown』(以降,『breakdown』)とは,宝島社「このマンガがすごい!」編集部が運営する情報サイトで現在連載中 (http://konomanga.jp/manga/breakdown) のライトノベル作品である.本作は,同社から出版されたライトノベル『魔法少女育成計画』シリーズ(以降,『まほいく』シリーズ)の外伝作品となる… … というのは割と嘘で,ファンから見れば実質本編となる.


 『まほいく』シリーズの第一作である『魔法少女育成計画』は,魔法の国に選ばれた16人の可憐な魔法少女たちが生き残りをかけたデスゲームに挑むといった作品で,2016年にアニメ化も果たした.この説明だけ聞くと,「典型的なまどマギ後継作品か?」と顔をしかめる読者もあるかもしれない.しかし,それは誤りである.アニメ化された第一作の影響で誤解されがちだが,『まほいく』シリーズの売りは,デスゲーム特有のグロテスクな描写や,ライトノベル特有のエロ描写にはない.『まほいく』シリーズ最大の売りは,特徴的なキャラクターと,その心情描写・魔法バトル描写にある.事実として,公式の内容紹介でもマジカルサスペンスバトルとして『まほいく』シリーズは称されている.これらの売りは筆者の妄想ではなく,世に広く受け入れられている.その結果,現在『まほいく』シリーズは累計60万部を突破している.このことからも,『まほいく』シリーズは,国民的人気という,ある種の「格」を備えた作品であるといっても過言ではないだろう. 『まほいく』シリーズの出版物として,本編最新作は『魔法少女育成計画QUEENS』(以降,『QUEENS』)であり,上下巻を1作とカウントし短編集を除くと,『QUEENS』を含め本編作品は6作ある.その中でも,なぜ,『breakdown』を選んだか? 以降,理由を述べていく.
 一つは,『breakdown』が実質的な本編最新作であり,Webで無料公開されているためだ.是非ともWebで検索して読んでいただきたい.シリーズを知らなくても読めるので,多分……どうかぜひ……そして『まほいく』シリーズを買いましょう……
 二つ目は,『breakdown』が特殊な企画作品だからである.『breakdown』は実は読者との連携企画であり,一部の登場魔法少女は読者の応募によって考案・採用されたものとなる.ここで,『まほいく』シリーズ著者である遠藤浅蜊先生の立場に自分がなったと考えてみてほしい.読者から応募のあったキャラを「魅力的に」描写することが,貴方はできるだろうか? どこかで日和らない自信がありますか?? 編集からの圧,労働のストレス,将来への不安などに負けず,読者から応募のあった大事な魔法少女たちを魅力たっぷりに描くことができますか??? 筆者は多分できないです…….そう,この点で『breakdown』はとてつもない傑作といえる.とっても魅力的に描写され,読者応募キャラとは思えないほどに本編に馴染んでいるので,ぜひぜひ御一読を.そして本編購入をぜひ……本編についてはAudibleもあるから…….
 最後の理由はもちろんバトル描写である.究極的には「読めば分かる」の一言に集約される.しかし,極力ネタバレを避けて,その魅力の一端を説明する.あえて詳細は述べないが,今回の敵(の一部?)は,いわゆる「学習するタイプ・戦いを通して成長するタイプの敵」である.能力バトルにありがちだが,主人公や仲間の能力をコピーしたり学習したりしながら,次第に強くなり,手がつけられなくなるタイプのキャラが『breakdown』には登場する.もちろん,典型的なキャラとは異なる味付けもなされているが,それは是非とも読んで確かめてほしい.このような無尽蔵に強くなる敵に対し,作中の登場人物たちの行動が描かれるわけだが,各キャラの努力やこれまでの経験が滲み出る描写がひたすらに素晴らしい.キャラの背景を別としても,たとえば,フィギュアスケートになぞらえるかのような戦闘描写や,強者同士の独特の間の表現,戦闘前での日常パートで置かれた伏線を回収しながらの戦闘描写が挙げられる.これらはキャラが好きになれなくとも,原作者である遠藤先生の筆力が感じられる描写なので,文芸好きには是非一読されたい.
 余談だが, 『まほいく』シリーズは電子書籍化も決定している.「シリーズを集めようとすると結構スペースとるし,ラノベは本棚に置きたくない」という方にも優しい采配といえよう.みんなもこの機会にシリーズを一気買い・一気読みしよう!
(最近,新刊も出ました.この波に乗るっきゃない!)


第2位:呪術廻戦

呪術廻戦とは,週刊少年ジャンプで現在連載中の作品である.つまり,漫画作品となる.呪術廻戦については,素晴らしいプレゼン資料(https://www.slideshare.net/takahirokubo7792/2018124-121187336z)がすでに先行研究として存在するため,気になる読者は先にそちらをチェックしても良いかもしれない.はっきり言って,この先行研究は非常に優れている.この項目で新しく何かを説明する必要がないレベルである.それでもあえて述べるなら,能力バトルが好きな人,BLEACHやジョジョ,HUNTER×HUNTERが好きな人は,間違いなく読むべき作品だということだ.これだけ書いておけば,読むべき読者・適合する読者には十分である.適合した人は,いますぐ全巻買いましょう.

第3位:Spider-Man: Far From Home

 Spider-Man: Far From Home(以降,FFH)とは,マーベル・コミックの実写映画を扱うMarvel Cinematic Universe (MCU) におけるフェーズ3の最終作である.邦題は『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』となる.FFHを楽しむには『アヴェンジャーズ:エンドゲーム』(以降,エンドゲーム)の視聴が欠かせないが,今回は可能な限りFFHや,スパイダーマンとしての前作である『スパイダーマン:ホームカミング』(以降,ホームカミング)のみに言及しエンドゲームには言及しないこととする.
 


FFHは前作のホームカミングと同じく,トム・ホランドが演じる高校生,ピーター・パーカーが主人公である.エンドゲームで宇宙規模の戦いがあり,その戦いによって世界にもたらされた傷が癒えつつある状態がFFHの舞台となる.FFHはファー・フロム・ホームとあるように,ピーターの地元を離れての物語だ.要は修学旅行でヨーロッパに行き,諸々の事情で,ヨーロッパの様々な国で敵と戦うことになる.
 本作の敵については,かなりのネタバレになるので詳細には触れない.しかし,戦闘における映像美はなかなかのものだ.筆者は同じくMCU作品である『ドクター・ストレンジ』も見たことがあるが,『ドクター・ストレンジ』とは異なり,FFHでは敵の特徴を踏まえた映像演出がなされており,非常に面白かった.本ランキングを作成した理由でも述べたが,映像だからといって戦闘描写が簡単になったり,良くなったりするとは限らない.たとえば,筆者としては『ドクター・ストレンジ』の戦闘描写は苦痛だった.たしかに映像美はすごいのだが,魔法のなんでもありな感じと,「これ,製作者が見せたいだけだな」と感じてしまうようなチグハグ感があり,のめり込むことができなかった.
 また,エンドゲーム後の作品であるということも踏まえてFFHを見ると,小ネタにくすり,と笑うことができる.MCU作品の有名キャラであるキャプテン・アメリカやマイティ・ソーを思い出させるシーンが戦闘中にもあるためだ.こういった「遊び」も優れた戦闘描写には欠かせないと,筆者は思う.
 最後に,読者らにFFHの視聴を勧めたい.勧めたいが,エンドゲームを見てからにしましょう.そしてエンドゲームを楽しむには他のMCU作品をある程度見る必要があるので,それらも全部見てからにしましょう.全23作くらいみることになるけど,頑張って見ましょう.筆者は『アイアンマン』シリーズと『アベンジャーズ』作品,あとホームカミングくらいしか見ていなかったがそれでもエンドゲームは十分楽しめた.楽しめたが,せっかくなので読者の皆さんはMCUマラソンをして,万全の状態でFFHをぜひ…….ネタバレを避けようとすると,本当にFFHは何も書けないので,ぜひ皆さんの目で確かめて見てください…….

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