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パレットクラブ日記 第10回・長崎訓子先生「架空の国の紙幣を描く」

※パレットクラブスクール「イラストコース」(23期)の授業内容の備忘録です。過去の授業内容はこちら

スクール第10回の講師は、イラストレーターの長崎訓子先生。前々から出されていた課題は、なかなかヘビーなものだった。

課題1手元にある紙幣を模写する(自分のタッチでアレンジするのではなく、色・形などに忠実に)。
課題2)架空の国の紙幣を描く。架空の国については、どんな国なのか話せるように準備しておき、必要なら補足のイラストも用意する。

お札の模写……当然ながら、やったことはない。ないけれども、大変そうなのは想像がついた。架空の国についてはノープランなので、模写をしながら考えることにする。
だが、いざ始めてみると、これが予想していた以上に大変だったのだ。

模写に選んだのは台湾の紙幣

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手元にあった紙幣の中から、描いていて楽しそうな台湾の紙幣を選択した。偉人とかじゃなくて、普通の子どもが描かれているのが親しみやすい。

しかし眺めているにつれ、絶望感が増してくる。お手元の紙幣を見てもらうとわかると思うが、お札のデザインって、よくよく見ると面で構成されているところが一つもなくて、全て細かい線で描かれているのだ……。色のグラデーション表現も、線、線、線。これ、いったい何日かかるの?


<模写を始めて1日目>

早くも弱音を吐いていくスタイル。


<2日目>

かなり端折っているとはいえ、デジタルなので細かいところまで描けてしまうのが辛い。夕方以降は目が効かず、まったく作業にならないということに気がつき、さらに絶望感が深まる。


<3日目>

さすがに課題2の方にも手を付けないとまずい。同時進行で作業を始めた。時間がないので、ゼロから架空の国を設定することはやめ、実在する場所をフィクションにスライドさせて考えることに。まずは架空の紙幣の方を仕上げて、模写は締め切りギリギリまで粘る作戦に出た。


完成した模写

なんとか完成。しかしルーペを使わなかったため、肉眼では追いきれない模様が何箇所かあり、面で塗ってしまった部分もある。
大変だったし、もうやりたくないとは思うけど、細かな模様で構成されたお札って、美しいものなんだなと感じた。


「架空の国の紙幣」も完成

床山は北海道出身ではないが、北海道を訪れるにつけ「国として独立できるのでは?」と常々感じていた。豊富な観光資源、高い食料自給率。日本の辺境としての位置付けより、デンマークのような、小国でものんびり豊かな国として存在する方が幸せなのではないかと、結構本気で思っている(地政学的に危険すぎて、現実的ではないけれど)。

北海道というと「酪農王国」「水産王国」「ムツゴロウ王国」……と、王国のイメージがあるので、象徴国王制を導入。北海道出身の有名人の中から、威厳と存在感のあるサブちゃんを初代国王とした。次期国王は大泉洋ちゃんのつもり。

通貨単位の「ばくり(箔里)」は、北海道弁の「ばくる(=交換する)」からとった。100箔里は10,000円相当の高額紙幣なので、さらに細かい単位として「ポックル」も密かに設定している(1箔里=100ポックル。ポックルは、アイヌの伝承に出てくる小人「コロポックル」から)。

授業前の反省

北海道王国の細々した設定を考えるのはとても楽しい作業だったが、肝心のお札はシンプルなものになってしまった。もう時間がないのがわかっていたので、単純な塗りで仕上げても違和感がないように、メインのサブちゃんは主線が太めのややポップな肖像にした。

でも、本当はアイヌの伝統文様などを折込みたかったし、裏面も描きたかった。別の額面のお札でアイヌの酋長の肖像を描いたりしてもよかったし、タンチョウや流氷、農作物など、盛り込みたいモチーフはいくらでもある。タイムアップが悔やまれた。


長崎訓子先生の講評

いよいよ、授業当日。長崎先生は、ハキハキとよく通る声でお話しされる、頭の回転が早く気配り上手な先生だった。黒で統一したファッションに、赤のカラータイツがとてもおしゃれ。

教室の壁面には、他の受講生たちの力作が並んだ。床山のも貼ってみるが、北海道の紙幣はどうにも色が薄く、目を引くとは言い難かった。色の検討がもっと必要だったなぁ……とまた反省。

長崎先生からも、指摘されたのは色のことだった。

・実際に教室に貼って見ると、画面で見るのと違って見えることがわかる。遠くからみても「あれ?」と思わせられるように、色をもっと思い切ってもよかった。
・せっかくサブちゃんを描いているのだから、サブちゃんが生き生き見える色にできるといい。
・明度・彩度が近い色を選んでしまっている。デジタルだと、筆のかすれなどで濃淡を表せないので、色の深さ・浅さをもっと表現できるようにしたい。自分のパレットを作れるといいね。

なるほど……!! 仕事でもデジタルでの制作を主としている私にとって、とてもためになるアドバイスだった。色の深さと浅さ、研究したい。仕事ではRGBカラーでの納品が多いため、印刷用の色味調整に苦手意識がある床山。Photoshopももっと勉強しなくちゃ!


先生は講評を通して、課題に取り組む心構えから、プレゼンテーションの仕方まで、総合的にアドバイスを下さっていた。
今回改めて思ったのは、課題=クライアントからの注文、というつもりで考えればいいのだということ。出題の意図を汲もうとしたり、丁寧に仕上げたりすることは、先生を喜ばせること=クライアントや、その先のお客様を喜ばせることにつながる。見る人に喜んでもらう姿勢を忘れずに、イラストを制作していきたいと思った。

最後に……北海道王国の紙幣・修正版

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アイヌの文様などを背景に追加した。色の構成にメリハリをつけ、印刷用に色味を整えた。全体に細かい模様を描き加えると、紙幣としての説得力が増すから面白い。

次の課題も頑張るぞー!

いただいたサポートで、少し美味しいおやつを買おうと思います。明日への活力です。