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「花束みたいな恋をした」観た

恋が始まるときの、客観的に見たら恥ずかしいテンション
どうでもいいことを言いたくなる高揚感
(白いジーンズ穿いてる男は苦手、とか、UNOで「今UNOって言わなかったー!」って言う女が苦手、とか)
そういうの観てモゾモゾする感覚がよかった。
絹ちゃんが麦くん家に初めて行くシーンで、
あの狭さの部屋、あの距離に異性がいる緊張感に冷や汗が出そうになった。
陰キャっぽい感想だ。
部屋狭そう、って思ったのは、2人の距離感の濃密さもあったのかな。
新規ハイみたいな。恋人できましたハイみたいな。
ボタン押して切り替わったみたいに世界が変わって見える、恋人ができた直後の全能感。
前半の2人は全能感に満ち溢れてて、キラキラしててよかった。

後半、麦くんが就職したあと
初期の麦くんの優しさは、好きなことをしてて、お金の心配もしなくて良いっていう、心と経済の余裕からきてたものだったってことがわかって、やたら傷ついた。
男の人がわざとに甘い態度つくってるときってなんか気持ちわるい。
初期のふたりの、甘い雰囲気は可愛らしくて幸せそうで、あーいいなーって思ったけど、
後半の麦くんを観てから前半思い出すと、キモッてなる。
親から仕送り貰ってて好きなこと好きなだけやってたらそりゃあ人に優しくできるよね。
あと喧嘩のシーンとか、後輩にキレてるシーンの麦くん本気でこわい。
殴られそうって思った。
菅田将暉くんの演技うますぎてマジでビビる。

絹ちゃんは絹ちゃんで努力して就職したり転職活動したりして、そのうえで
「楽しいことしかしたくない」って言ってるんだから、きちんと現実見て、頑張ってると思ったんだけど、わたしの考えも甘いのだろうか。
一年未満(くらいだよね?)の勉強で簿記二級取ってるのすごいし。
仕事しながら人脈広げて自分の好きな仕事についたのもすごくない??
なんか、麦くんは、勝手に一人で抱え込んで爆発してキレちゃう迷惑な上司みたいに見えた。

そして二人はモノローグで思ってることをちゃんと話し合え!!!!
とも思ったけど
それができないのが現実だよね・・・
就職後麦くんの人の話聞かなさそうなオーラすごいし。
学生時代は絹ちゃんが電話越しに泣いてることに気づいた瞬間部屋着のまま電車に乗って駆けつけて抱きしめてあげるくらい思いやりのあった麦くんがあんな風になるなんて誰が予想できただろう・・・つら。

ラストまで観て、絹ちゃんのクールさにしびれた。
さわやかのハンバーグを食べたことに罪悪感抱えていた麦くんの方がちゃんと真剣だったのかなって思ってちょっと麦くん不憫になったけど、女の人が強い方がいい。
木綿のハンカチーフみたいな構造の描かれ方してたから、絹ちゃんかわいそうって何度か思ったけど、絹ちゃんは絹ちゃんでクールに自分の人生を生きていたんだ。

最初じゃなく最高でもない恋が最後の恋になることもあるってGLAYがホワイトロードで言ってたけど
この2人もそうなんだろう、最高の恋ではあったけど最後の恋ではなかった、心の中にいつもあのホワイトロード。
でもあの2人、カルチャーの相性が奇跡みたいに合っていただけで、人間的な相性はそんなにあってなかったのでは・・・???と思った。

そしてわたしは映画観た翌日に今村夏子のピクニックを読んだ。
これを読んでなにも感じなさそうな人間を思い浮かべてしまった。
読後にジワジワ侵食してくる悪意がおそろしい、ぴえんぴえん。

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