見出し画像

ダンロンファンがレインコードをプレイした感想(※ネタバレあり)


はじめに…

 この記事を書いた人間はメインストーリーをクリアしただけで、サブクエストやキャラクターエピソードには全くと言っていいほど手をつけていません。

 また、ストーリーに関する大量のネタバレが含まれるため、「ダンロンファンで購入を検討しているけど、極力ネタバレは避けたいな…」という方はまとめの部分にはネタバレを入れていないのでそこだけに目をお通しください。


面白かったとこ

ファンサービス

 私はレインコードの情報をnintendo directで入手したのですが、「ダンガンロンパ制作陣が送る」という宣伝文句で即購入を決定する程度にはダンガンロンパのファンをやっています。制作側もその点を踏まえているため、いくつかのダンロンファンへのファンサービスが入れ込んでありました。

第0章 アマテラス急行殺人事件
第0章 アマテラス急行殺人事件

 「うぷぷ」「絶望的」といったこのセリフ。ダンガンロンパに登場したモノクマこと江ノ島盾子の代表的なセリフと言っていいものでしょう。私はダンガンロンパの推しが盾子ちゃんなので、テンションが上がり思わずスクショを撮っています。
 そしてこれだけではありません。このスクショを撮っている第0章、「焼死体」「犯人も被害者として死亡したと思い込ませる」「共通点(刺し傷)を持つ2つの死体」「身元が分からなくなるぐらいに焼け焦げた死体を再利用する」といった要素が織り込まれていましたが、この要素は初代ダンガンロンパで江ノ島盾子が姉である戦刃むくろの死体を利用した物語終盤のトリックです。そのため、ダンガンロンパから流れてきたプレイヤーほど簡単なトリックとなったことでしょう。

 このように、チュートリアルの第0章はダンガンロンパファンへのファンサービスのような章となっていたので、楽しく捜査ができました。

  その他にも、tipsで「モノミ」の名前が出てきたりなど、所々でファンサービスが散りばめられていました。やり込み要素として探すのもいいかもしれませんね。


ダンガンロンパでは難しかった要素

 ダンガンロンパは最高に面白いシナリオを誇るゲームですが、その一方で「(2人以上の)連続殺人」といった推理モノの定番が設定上使いづらい舞台となっていました。なんたって、被害者となり加害者となりうるキャラクターは物語開始の時点で全員提示しなければならず、一度の章で基本的に最低でも2人が死ぬことになるルール上、キャラを殺しすぎるとその後が成り立ちません。

 ですが、今作はたくさんのモブもいれば登場人物の途中参加が可能で人数制限もありません。縛りから解放され、コナンの世界のような一般的な推理モノの舞台を手に入れたスタッフは何をしてくるでしょうか?





 そう、手始めに第0章で登場した4人の超探偵を皆殺しにします





 思い切りすぎです。

 ビジュアルも作りこまれ、声優も大物を起用し、中身もかなり濃そうな面々でこれから始まる彼らとの物語に思いをはせたプレイヤーを嘲笑うかのように主人公以外が全員死ぬというとんでもない展開。これは先述したダンロンにおける設定上の縛りを先入観として持っていたプレイヤーほど衝撃的な展開だったことでしょう。なんたって魅力的なキャラクターを皆殺しにされたんです。盾子ちゃんもびっくりです。絶望的な状況に大喜びです。

 私は無意識に先述したダンガンロンパにおける先入観を持っていたため、まんまとスタッフに嘲笑われたプレイヤーの一人となりました。いやぁ~びっくりした。

 しかしながらこの第0章でダンガンロンパにはできなかったミステリーが始まる予感を与えられたため、チュートリアルに持ってくるには良いシナリオだと思いました。

 そしてその後の「クギ男事件」でも全身に釘を打ち付けられた猟奇殺人の被害者に現場は密室という、いわば定番ともいえる事件が起こります。この“釘で磔”というような猟奇殺人もレインコードだからこそできる殺人方法です。
 ダンガンロンパは劇場型犯罪のような猟奇殺人もできなくはないですが、そもそも希望ヶ峰学園の彼らはクギ男の釘のように思想に基づいた演出のためだけに殺人現場を飾る理由がありませんしね。本物の快楽殺人鬼を差し置いて面白がって飾るアホはいましたが。

 このように、序盤はダンガンロンパでは難しかった定番のミステリーを推理していくこととなり、ある意味新鮮な楽しさがありました。


ダンロンファンだからこそ騙された最高の演出

 ※ここからは物語終盤における重大なネタバレが含まれます※

 ↓


 ↓


 ↓


 「ダンガンロンパと言えば?」な表現の一つとして、"血がピンク色"はゲーマーの中ではプレイしていない人でもイメージくらいは持っているかもしれませんね。私はダンガンロンパのアニメが放送されていた時期にダンロンに出会いましたが、当時は血の出る作品を得意としていませんでした。ですが、ダンガンロンパは血がピンクのため生々しさが減り、そのおかげであの素晴らしいシナリオを最後まで体験することができたのです。

 しかしダンガンロンパではあくまで表現であり、そこにシナリオ上での意味はありませんでした。

 そんなダンガンロンパファンを騙しにきたのがレインコードです。最終章となる第5章で死体がピンク色の血を流すのは、死体となった彼らが全員ホムンクルスであり、人ならざる者たちだったからだと判明します。このレインコードの世界を生きる人間に流れる血は、ちゃんと「赤」なのです。
 ストーリー上の最大の秘密を解き明かす局面で判明するこちらの設定ですが、実はカナイ区に向かう第0章の時点で「この世界の人間の血は赤である」という情報はプレイヤーに公開されています。

第0章 アマテラス急行殺人事件
スライド錠に付着したユーマの血痕

 最初の事件の時にユーマはガラスで手を怪我し出血をしています。その際に触ったスライド錠に血が付着したことが解鍵として与えられますが、彼の血はちゃんと「赤」で描かれています。

 レインコードはダンガンロンパ製作スタッフが開発した作品です。そのため、血のピンク色はその表現を引き継いでいるものと完全に思い込み、ユーマの血の色を完全にスルーし何の違和感もなく受け入れていました。
 ですが、当然ながらユーマは違います。血を流した死体を見て、人形ではないかと疑ったり、死に神ちゃんに「なんとも思わないのか」と問いかけます。しかしながらこのシーン、ユーマが臆病な少年ということもありプレイヤーにはただビビり散らしているだけにしか見えず、死に神ちゃんも死神らしく興味があるのは"死"であり血の色なんて全く気にしていません。そして主人公や他の超探偵も血の色の謎についてプレイヤーの見えない部分で自分の中に折り合いをつけてしまい、以降、謎として扱われることはなくなります。
 先入観って怖いですね。こんな小さい解鍵が伏線なんて思ってなかったので見事にはめられました。悔しい〜〜!!!

 この設定の判明と同時に第0章で死んだ超探偵たちが「焼死」だったことも、ファンサービスのために死因が焼死にされたわけではないことが分かります。なんたって第0章で死んだ彼らはジルチの偽物以外全員、赤い血が流れるれっきとした本物の人間です。大量の血を流してしまえば、流石にプレイヤーを騙せなくなってしまいます。「焼死」という死因は、血が流れない上にダンガンロンパのシナリオになぞらえたトリックに使えるなんとも素晴らしい死因だったのでした。

 購入するターゲット層がダンガンロンパファンを想定されていたからこそのこの設定はかなり上手く騙されました。このピンク色の血が無意味なものではないと知らされた瞬間が、レインコードをプレイしている中で一番興奮した瞬間かもしれません。


物足りなかった・気になった部分

ミステリー作品としては初心者向け

 私は今までダンガンロンパの他ゲームに限らず、いくつかのミステリー作品に触れています。そのため、ある程度の定番は何となくの予測を立てることが出来ますが、これができる人間が満足できるほどの推理要素がレインコードにはあまりありませんでした。

 一章ごとの容疑者は最大でも4人までとなっており少なめです。そしてシロのキャラクターは捜査パートの頃から犯行現場との矛盾が結構ハッキリとしており、記憶にある例を挙げるならば

・犯行現場は密室で脱出口となり得るのは狭い通路か縄などを利用しなければ降りれない窓
→容疑者の4人中、1人は太っており、1人は片腕を怪我している

・自殺にみせかけられた被害者は左利き
→容疑者の4人中、1人は左利きを確実に知っている

と、上記のように推理パートに入る前から容疑者から弾かれる人が出てしまい、犯人への意外性にはかなり欠けます。また、第2章での容疑者全員の共犯関係や第4章の利き腕のトリックのように、悪く言えば“ベタ”な展開が多くあったため、たくさんの推理モノ作品に触れている人ほど容易に犯人の予測がついてしまう仕様になっています。

 経験を詰んで色んなパターンを知ってしまっているプレイヤーは、主人公と共に犯人を導き出すというよりは「はよ進め〜!」と主人公を犯人の元へ押していくような感覚でプレイをすることになり、推理パート中の「そうか、分かった!」というような推理自体の爽快感は少ないかと思われます。

 しかしその分、推理パートはしっかり考えるというよりはQTEなどのアクションゲームの要素が強くなっているため、この点についてはゲームシステムも考慮したバランス調整で難易度が下げられたのかな?とも解釈できました。

キャラクターの行動や違和感

 所々で気になっていた部分でしたが、終盤になるにつれ何度も何度も気になってしまうともう無視しづらくなりちょっとしたストレスになってしまった部分。それが、キャラクターの行動や心境でした。

 一番気になった瞬間は第5章の捜査パート部分です。

 まず超探偵たちには特殊能力があり、主人公は自分自身は未熟ながらも他者のそれを共有する(借りる)ことができます。そのため、他者の能力を借りた時に「すごい!こんなことが出来るなんて!」となる反応は当然でしょう。これは通常の捜査パートであればなんの問題もありません。
 しかしながら第5章でこのシーンが行われたのは、ヤコウ所長が重症を負い一刻を争う場面です。それなのにヴィヴィアの能力を借りて幽体離脱をした後、すぐに行動を開始せず死に神ちゃんと戯れるというのは、さっきまでヤコウ所長のピンチに一緒に焦っていたはずの主人公にプレイヤーは「のんきすぎやしないか!!!???」と流石に困惑をしてしまいます。慕っている人が大量に血を流して死にかけている時にそんな悠長にしている場合か!?走れ!!??死に物狂いで解鍵集めてこい!!??
 この描写を省けとはいいませんが、移動操作中にキャラクター同士の会話をさせることができるのですから、その会話はせめて移動操作中に入れるということはできなかったのか?もしくは現実の時間が止まる謎迷宮内で入れ込むのではダメだったのか?と疑問に思ってしまいました。

 また、その他にも気になる部分はありました。

 死に神ちゃんの能力はただ謎迷宮に入るだけではありません。謎迷宮の謎を解き明かすことで、最終的に現実の犯人は死亡します。
 この設定についての違和感が2つありました。ここから先に関しては私が描写を見逃している可能性も考慮してご覧ください。

 まず1つ目がユーマの心境です。
 ユーマは善性の人間であり「人を殺してはいけません」という倫理観を当たり前に持っている少年です。そんな少年が探偵として謎を解き明かすことで犯人を死にいたらしめる死に神ちゃんの能力に葛藤をするのは当たり前です。そこはいいんです、知性を持つ人間として当然の葛藤です。
 問題はその葛藤の最終地点。私には少なくともメインストーリー上で彼がその能力の特性に折り合いをつけられたようには思えませんでした。必要悪への覚悟を決めるなり、能力を使わないようにするなり、何かしら彼の中での結論が出るのを楽しみにしていたのですが、「犯人が死ぬのは嫌だ」「謎は解き明かさなければならない」「みんなを幸せにするために未解決事件をなくす」などの意見はいくつかあれど、"自分のせいで犯人が死ぬ"という点において彼の中での折り合いがついたようには見えませんでした。

 そして2つ目は保安部の行動です。
 彼らは警察のような役目ですが、実際の彼らには法も倫理も関係ありません。そんな奴らが、犯人が死ねど、事件が解決すれど、そう何度も見逃してくれるものでしょうか?
 特に第3章では、犯人は超探偵たちに確保されている状態で死亡していますし、死に神ちゃんによる自白もありませんでした。あまりにも雑な捜査やほんの少しの証拠だけで犯人を決めつけてくる保安部が、殺人の証拠が無いとはいえそんな状況で超探偵たちを見逃してくれるものでしょうか?個人的にもうちょっと凝ってほしかったなぁと思った部分でした。

テンポが悪い

 これは見出しのままです。
 前の項目でもあげたように、一部急ぐべき状況で悠長に会話をするシーンが何度かあります。その分、物語の緩急や緊迫感が曖昧になっているため、正直飽きてきます。
 また、死体を見つけたり何かあったときに主人公のポエムが長く「とりあえず捜査しない?」となってしまいました。まあこれは私がせっかちなだけかとは思いますが。


まとめ

 全体的なストーリーは一部物足りないところはありつつも面白く、ダンガンロンパに引き続きクセのあるキャラクターたちはみんなとても魅力的です。
 ですが、「ダンガンロンパ制作陣が送る」という宣伝文句から、ダンロンと同じクオリティの推理ゲームを求めて遊ぶとすこし肩透かしをくらう程度には、要素としては「推理 << アクション」ゲームだったな~といった感想です。



 ・・・ですが。

おまけ

意味わからんぐらいかわいい右手

 こちらはハララ・ナイトメア。今回の推しです。
 泣きそうなぐらい可愛く強くいい子なので、さんざん不満言いましたが、最終的にはこのハララ・ナイトメアを浴びるためだけにレインコードを買ってほしいくらいには大好きになりました。
 是非!レインコードで!ハララ・ナイトメアに出会っていただきたい!!!!
 ご検討よろしくお願いいたします!!!!!!!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?