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光を師と心得よ

たまたま通りかかった
小さなギャラリーカフェで
年配の絵描きさんと知り合った。

「最近、絵を描き始めたばかりなんです。光を上手く表現できなくて、悩んでいます。」
そういって飾ってある絵をガン見していたら
絵描きさんがアドバイスしてくれた。

「光を先生だと思えばいいのです。」
「え?」
「北側の窓から光が差す部屋で、りんごをお描きなさい。よく見て描くのですよ。どこに光が当たっているのか、影の部分の色は黒でも灰色でもありません。影の色もよく見るのです。三年くらいは、りんごをお描きなさい。」

そう言って、そこにあった紙ナプキンに、ペンでりんごを書きながら影の描き方を教えてくれた。

そんなに本格的に絵を描くつもりはなかったのだけど、その日は早速スーパーでりんごを買って帰った。

夜に描くりんごには
真上から蛍光灯の光があたって、なんだか
あちこちが白く光っていた。

「いつか、また個展を開くから、その時はまた見にいらっしゃい。その時にりんごの絵を持ってくるんだよ。」
そう言って、ニコニコと見送ってくれた親切な絵描きさん。

とりあえずこれが人生で1枚目の
りんごの絵。
とりあえず、はじめの一歩。

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