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シンカリオンCW第11話にみる、徹底的にキャラの不和を描くということ

日曜の朝、今日こそお絵かき練習するぜ!とはりきってたら、朝のアニメで色々情緒やられました
頭の中でぐるぐるしてる感想を整理して、吐き出さないと、集中で来なさそうなので感想とか考察とか吐き出しておきます
TVアニメ「シンカリオン チェンジ・ザ・ワールド」の11話ネタバレを含みまくってるのでご注意ください

”アンノウン”(未知のもの)と呼ばれている敵側のシンカリオンが登場し、その運転士(他のロボアニメにおけるパイロット、操縦者)が主人公タイセイの姉、イナであった事が判明し、戦えなかったタイセイ、タイセイには姉が敵側にいるのではないかという疑惑を以前から持っていて、それを仲間の運転士に打ち明けていなかった、敵を前に戦いを放棄したこと、姉の疑惑を相談しなかったことを仲間の運転士の二人に責められるという展開

この責めがもう「そこまで言わなくても」って思う程キツイし、八つ当たりがあるとも思うんだけど

タイセイが疑念を打ち明けられなかった理由も、リョータとアカネ、二人の運転士の責めが必要以上にキツイ理由も、その場にいる室長のカドミチがすぐ止めに入れない理由も、これまでのお話できちんと積み上げられている

これが制作側が一番描きたかった、物語の根幹に関わる部分なんだろうな、そのためにはこの解決したとしても、後々しこりが残りそうなほどの徹底的な不和が必要だったんだろうと思う

とはいえ、Xでちょこっと感想探してみたら「ふたりとも言いすぎ」「カドミチなんで止めないの」という言う意見が目立って、なんか腹がたったのもあって、自分の考察をまとめてみた、お前ら今まで何見とってん!

タイセイが姉の疑念を言えなかった理由

アンノウンが出現する場所が自分と姉の思い出の場所ばかりで、もしかしたら姉が何か関わっている可能性があるかもしれない、という疑惑をタイセイは早い段階で抱いて、カドミチ達には言ってたんですよね

でも「偶然では?」と言われてしまい、聞こえた声の話も「それらしいものが見当たらない」と言われてしまっている

アンノウンの出現場所は鉄道関連という共通点があり、タイセイ達の姉弟は鉄道好きの為、共通点が被っている、偶然だろうと判断されるのは仕方ないし、声に関しても後で削除の痕跡を見つけてもタイミング的にその話が出来なかった、そこにカドミチ達の落ち度はないと思う

一度、否定というほどではないけど伝わらなかった仮説や疑念を再び口にするのはためらうのは仕方ないし

カドミチ達エルダスタッフと、リョータ達運転士には大きく異なる事がある、それは大成イナとの面識があるか否か

元エルダのメンバーで、第一話のカドミチの心の声で「イナの弟なら適正率が高いのは必然かもしれない」類のセリフがある事を考えると、明言されていないがイナは運転士(しかも優秀な)だった可能性が高い

だからこそ、イナを良く知っている門道達にタイセイは相談したんだろうし、「イナがそんな事するわけない」と否定が欲しかったのもあるんだと思う、そしてその気持ちは彼女をよく知るカドミチ達にもあると思う

イナと面識のない運転士達(マイ含む)にそれを話して、もし可能性に考慮の余地があるという話になったらと思うと、怖くて話せないというのもあると思う

ただ運転士達はタイセイが悩んでる事に気がついているし、なぜ相談してくれないんだろうという思いがある

アカネがタイセイの姉依存を責める理由


アカネは上の兄弟に関しての感情で、タイセイとは対を成す人物であり、作中の登場人物で最もタイセイのシスコン(姉依存)を快く思っていない人物である

優秀な姉は全てにおいて正しいと思い、自身の考え方や行動理念、言葉にも姉の存在が裏に見えるタイセイに対し

優秀な兄と比較されながらも、自分も兄と同じ陸上を頑張っていたが、怪我をして、自分を見下さない優しい兄への劣等感を抱き、誰も自分に期待していないと絶望したアカネ

姉の失踪、自身の怪我で二人の時間は止まっていたけど、いち早く時計を動かしたのはアカネの方で、そのきっかけをくれたのがタイセイとリョータである

自分自身は劣等感や絶望と向き合い、自分なりの道を探し始め、時を進めることができたというのに、背中を押してくれた一人のタイセイが未だ姉に依存し、時を止めたままなのはアカネにとって悔しく、腹立たしい事であったと思う

8話ラストの「姉の受け売りばかり」発言は意外と人をよく見ているが、空気を読まない、容赦しないアカネらしい発言というより、多少の悪意があったように思う

皆が電車を降りようと歩く中、一人座ったままのタイセイ、この状況は「ただの悪気のない発言」では生まれない

この場にいた他の3人は人の心の機微に割と聡く、こういうフォローに長けているし、アカネが無理やり連れ出したように見えないので、皆がこの問題点に気が付き、判断した結果の行動だと思う

アカネは人をよく見ていて、タイセイの悩みが姉関連だという事に気がついていたと思う
そして自分達に何も相談してもらえなかった事、それらの不満が爆発した結果「あやつり人形」発言になったんだろうと思う

リョータが一番許せないこと

アカネは人をよく見ているが空気を読まない人物だが、逆に空気を読みすぎるのがリョータだと思う

腹がたっても、場の空気を考えて、笑ってごまかしてしまう、それは自分自身の気持ちに向き合うのが苦手、自他ともに悪意が苦手なのもあるんだろうけど、そんなリョータを時には本人以上に理解し、尻を叩き、励まし、諭すのが幼馴染のマイである

痴話喧嘩のような言い合いが多い二人だけど、リョータは彼女が自分にとってどれだけ大切で必要な存在かちゃんと知っている

そのマイが巻き込まれて怪我をした、それはタイセイがファントムに攻撃できなかったが故に起きた事故であり、状況が混乱し、彼女が緊急搬送された事しか分からない

本来こういう諍いをなだめてフォローすることに奔走しそうな、バランサーであるリョータが自身が苦手とする”悪意”をぶつける程に余裕と怒りを抱くのは仕方ないように思う

ただ、リョータは責任感がとても強く、タイセイにぶつけている以上の怒りを自分に抱いてると思う

リョータは第一話で「(行方不明の)イナが生きている」というタイセイの言葉を当たり前に信じ、自分の言葉を信じてくれたリョータへの信頼が、シンカリオンE5に乗るきっかけになった(最後の背中を押した”かっこいい人に”の思想に姉の言葉があるけれども)

出会って間もなかった二人の信頼関係で物語が始まったともいえる

二人の信頼関係はとても強いものだと思っていたからこそ、悩んでるのに、何も言ってくれないタイセイが腹立たしかっただろう、なんで俺達を信頼してくれないんだ、同時に彼の悩みに何も出来ない、何も話してもらえない、自分が情けなく、無力で悔しい

リョータはタイセイを責めながら、それ以上に自分を責めてるように思うのが辛い

カドミチが止めに入られなかった理由

タイセイが責められる場には大人であるカドミチもいたけど、本来真っ先に止めるべき彼が動けなかった理由

本当は止めるべきだとわかりながらも、彼自身、責任は自分にもあり、その自分が何を言っていいのかわからず、動けなかったのではと思う

カドミチ自身は以前にアンノウン出現場所とイナの関連について相談されていて「偶然では」と答えている

タイセイとカドミチとアガノは大成イナと親しく、彼女が敵に関わっていると信じたくないという思いを抱いている

それゆえにタイセイが相談したんだろうし、彼ら自身がこの疑惑を運転士達などと共有しなかったんだと思う

なぜ相談しなかった!という運転士たちの責めは、相談を受けていながら、共有しなかった自分にも責任がある

カドミチはエルダ東日本本部の室長であり、新開学園の教師であり、タイセイ達の担任教師である

タイセイの様子がおかしかったことにも気がついていた、あるいは気がつくことができたはず

Wワークの多忙さや自身の感傷もあり、仲間達がいれば大丈夫だろうと思った部分もあるんだろう、教育者として悩みを抱える生徒でもあるタイセイに出来ることがあったはずなのに、こんな状況になってしまった責任が自分にあると考えないわけがない

そんな自分がどんな言葉で彼らを止めれば良いのか、「全ての責任は自分にある」という言葉で収められるほど、彼らの怒りの理由が単純でない事はそばにいた自分は知っている

だからどうしていいか分からず呆然とししまったのだと思う

ビーナがイナの事をよく知らないという事

タイセイが二人に責められた後、励まそうとしたビーナにきつい言葉を返して、彼女にそっぽを向かれ、タイセイは一人になってしまう

ビーナ自身はナビプログラムにイナが手を加えて出来ているので、ある意味彼女にとってイナは親のような存在ではあるのだけど

アンノウンがイナとの思い出の場所に出現することに対して「イナさんと色んなところにいっているのね」なんて感想を抱くビーナはイナに関してあまり知らない、運転士達同様に彼女と面識がないように見える

最愛の、”崇拝”に近い感情を持った姉が敵に回ってショック冷めやらないタイセイをはげまそうとするビーナに、イナの裏切りによる混乱は無く、タイセイを励まそうとする言葉にイナについての言及が一切無い

ビーナは大成イナによって手を加えられ生み出されたAIだが、大成イナを知らない
だから誰よりタイセイの味方である彼女は、イナと敵対する彼の気持ちに真に寄り添うことができない

元々あったイナとのやり取りや記憶等のデータを削除されたか、自分が失踪してから起動するように仕掛けてあったのか

自分が人類の敵となり、タそれでイセイ達に何事かあっても自分の事を考慮せず、タイセイの味方であり続けて欲しいというイナの意図があったのだろうと邪推せずにいられない

イナ自身は「皆が動かなくても、私一人だけでも戦って見せる」という強い意志を持つ人で、考えに偏りは見えるけど、情はある人なので、自分自身の意思でアンノウン側に付いてると思われる

とはいえ、かつての仲間や家族への裏切り、そもそも前作のザガンと違い、脅迫や周りを巻き込む事を恐れた結果でないなら、失踪でなく、もっといい方法があっただろうに

そもそも20年も戦ってるのに、なんで”アンノウン”なのか、謎が多くて、気になることが多すぎる

個人的に言えば、今の展開、驚いたけど嫌いじゃない

前作のZの作中の人物が物語のための舞台装置のような都合の良い存在に思えて嫌だった

同じく大事な人が敵シンカリオンの運転士になる展開は同じだけど、前作は相棒が敵になって落ち込む主人公を仲間が励まし、戦うけど、彼に言葉が届かない、落ち込む主人公、励ます仲間の繰り返しが多く、主人公が成長した感じもあまりみられなかった

今回のCWは主人公の依存の危うさも、仲間の抱える問題や感情をしっかり積み重ねた上で、その理由を持って徹底的に、仲間達に起きる不和を描いてくれたと思う

これをきっかけに3人+カドミチがどう成長していくのが楽しみである

というかまさかアニメ感想で4000時以上書く自分にちょっと引いていたりする
てか、シンカリオンってキッズアニメじゃなかったっけ?




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