自分を手の中で転がす

少し前まで、物販の個人事業主をしていた。
今は契約社員で事務をしている。

10年間、いわゆる脱サラして夢を叶えていた。
今は世界の片隅でささやかに生を営んでいるミジンコみたいなものだと思っている。

あの頃は良かった、と思ったり思わなかったりする。
あの頃は自分の欲を全て抑えて影方に徹していた。
言いたいことも誰にも言えずに、「大衆と同一化しよう」としていたと思う。
結果、割と個性派だった私は少し私を無くしてしまい、今取り戻している最中だと思う。

私は面白くなくなった自覚がある。
隠居した、ともいえるのかもしれないけれど、
情熱を無くしてしまった感覚と、取り戻したい感覚と、
すこしその世界の裏側に辟易してしまった感覚とがないまぜになっている。
私はその世界に興味を失ったんだと思っていたけれども、
最近どうやらそうでもないような気もしてきていて
とても複雑な気持ちだったりする。

20代の若いころに、「何者か」だったころがあった。
世間で「何者」ではなかったのかもしれないけれど、
その頃は「何者」だという自覚、感覚があった。
誇らしくて、優越感で、「自分にしかない」と大きくなって、その発信が楽しかった。

あさはかで、とても愛おしく、憧れる。
歳をとってしまったのか、諦めてしまったのか、
なんなのか未だによくわからないのだけれど、
大きく感情を揺さぶられたあの感覚をもう感じることができない気がして、
とても悲しく、絶望的な気持ちにもなる。

これが歳をとるということなのか、失敗するということなのか、
なんなのか今はよくわからない。

ただ、今は堅実に現実的な貯金ができはじめている。
若く自信満々だったころは夢は大きくあったけれど、貯金はなかった。

正解はないけれど、「それでいいんだよ」と後押しは欲しい。

未だに闇の迷路の中から抜け出せない感覚がある。

あの、晴れやかな気持ちをまた
この手で取り戻したい。



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