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「ぼく、ひとりでいきたいんだ」

いつもの公園であそんでいると
はるくんが少しせまいところへ
入ろうとしていた。
大きな道具を入れる倉庫の後ろが
気になるみたい。

私はいつものように
はるくんの3歩うしろくらいを歩いていて
いつものように
ついていこうとしたのだけれど。


細い道に私も入ろうとしたその時
はるくんがくるりとふりむいて
私のことを、じっと見て。

そして、手をぶんぶんと横に振ってきた。

これは
「ちがうよ」とか
「いらないよ」のサイン。

そう、はるくんは
「おかあさん、こなくていいよ」って言ってる。

「ぼく、ひとりでいきたいんだ」って。


「そっか、はるくんが行くのね」
「いってらっしゃい」
とバイバイしたら、にっこり。
当たりだ。
やっぱりひとりで行きたいんだ。

はるくんはにこにこしながらバイバイして
くるんと向きを変え
ひとりで奥へとすすんでいった。

一番奥まで歩いて
倉庫のうしろへ入り
ひょこっと顔を出す。

「おーい」と手を振ると
はるくんも手を振り返してくれた。
にこにこ、とってもうれしそう。

そして
「ぼく、やったよ」と
満足そうに戻ってきました。


この距離、1.5m。

私だったら、5歩もあれば行ける距離。
すぐそこに見える距離。

でも、手は届かないこの距離。

はるくんには、この1.5mは
おかあさんの手から離れて
ひとりで踏み出すぼうけんなんだ。


だっこ大好き
あまえんぼさんのはるくんが
初めて伝えてきた「ひとりでいくね」

こんなにちいさいのに
こんなにちいさいのに

もうひとりで行っちゃうの?


この距離は1.5m。
すぐに側に行けるし
その姿はすぐ近くに見える。

でも、はるくんのこころには
私からはなれて「ひとりで歩く」1.5m。

まだまだできないことはいっぱいあるし
あまえんぼさんには変わらないけれど

はるくんはもう
自分の力で歩くことを、始めてる。


それは、はるくんが
心も身体もしっかりと育ってきている証拠。
とってもうれしいこと。

…なんだけど。

いつか巣立つ時が必ず来ること
その日のための一歩を
もう踏み出していること

そのことを痛感して
さみしくもあるのです。


今のはるくんと会えるのは、今だけ。

いっぱいだっこして
いっぱいぎゅってしよう。



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