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こどもに「本当にわかってほしいこと」があるのなら。

やってしまった。
はるくんが、ごはんを食べるときに
おさじをぽいっとなげるようになってしまった。

いや、「しまった」はそれじゃない。

「”ぽい” は ”ぶー” だよ」って
指で×をつくって伝えたら
ぽいっとなげては
おゆびで×をつくるようになってしまったのである。

なげて、おゆびでぶーをつくって
私をみあげて、にこ。

いや、わかってはいるように見えるけど
なげちゃあだめなんだよ、なげちゃ。
完全にこれがあそびになってしまった。


「ぽい、はだめだよ」と言うと
はるくんは泣いてしまった。
おててをぶんぶん振って
泣いて怒ってた。

でもね、これは
「ぽいを止められたこと」に
泣いて怒ってるわけじゃないんだ。


多分、最初にぽいってしたときに
私たちが笑いながら
「あれー?ぽいぽいしちゃったのー?」って
言っちゃったんだ。
それがはるくんにとって、楽しかったんだね。

私たちが笑っていたから
「これはみんながよろこんでくれることなんだ」って
思ったんだね。

だから、はるくんは混乱しているの。
さっきまではみんな笑ってたのに、どうして?
なんで「だめ」って言ってるの?って。


そう、「しまった」はこれ。

最初に笑ってしまった私たち大人がいけなかった。
おさじをなげることが
食事のマナーとして「だめ」と止めるなら
最初からそう伝えないといけなかった。

そうしたらはるくんは
「これをやっても楽しくないな」って
ちゃんとわかったのに。


しばらく「ぽい」と「ぶー」を繰り返したけど
これは伝わらない感じ。

さて、ここは私のふんばりどころ。

意地になっておなじことを続けて
「なんでわからないの」って怒るのは簡単だけれど
それは私の責任(伝え間違え)を
はるくんに転嫁してるのとおなじこと。

切り替えて、考えるんだ。
どうしたらはるくんが
「おさじをおさらにおく」をしたくなるか。


「ここにおいてね」って
おさじをおさらにおいて
にこーってして、ぱちぱちぱち。

はるくん、じーっとみてる。

「こうするの?」って
おさらにおさじをおくはるくん。

「そう!すてき!ありがとう!」
すかさずぱちぱち、いいこいいこ。
はるくん、にこーとうれしそう。
やった、伝わった!


それから「ぽい」はしなくなりました
…って言えたらいいんだけど
まだ時々します。

わざとぽいしては
「おかあさん、これはぶーなんだよね」って
私をみあげてにこっと笑うの。

でもこれはもう、この言葉どおり
「そうなんだよねー」って伝えたいから。
「ぼくもうわかってるよ」って伝えたいから。

あぁよかった。リカバリできたー。


まだこれだけちいさな子は
「わるいことしてやろう」っていう思いはない。
単純に、それがたのしいから
やってみたいからやっているだけ。

それどころか
今回のはるくんの一番奥にある本当の思いは
「いっしょに笑いたい」なんだ。

みんなといっしょに
「たのしいね」って笑いたかったんだよね。

それを、怒られてしまったら
本当に悲しい。

だからね、はるくんにとったら
おさじをぽいでも、おさらにおくでも
どっちでもよかったの。
本当の思いが叶ったから、受け入れてくれた。


もし、こどもに
「本当にわかってほしいこと」が
あるのなら。

大人がしてあげるのは
その子のそれをしてしまう
「本当の思い」が何なのかをみつけること。

そして、その本当の思いを
「こどもも、おとなもうれしいかたちで」
叶えるにはどうしたらいいのかをみつけること。

私はそう思っています。
いつもうまくいくわけじゃないし
ホント、こちら側の胆力を試されますが…

でも、そうやって
わかりあいながら
いっしょに歩んでいきたいなぁと思っているのです。



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