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今の私にしか描けないものがある

ふと、クラウドフォルダを漁っていたら、四年前に書いた小説が出てきた。公開していない未発表の作品だ。読んでみたら、面白かった。今より、断然、荒くて、未熟で、表現もまだまだなんだけど、とにかく、文章に乗っているエネルギーがすごい。ある程度書くことに慣れてしまったらもう見えなくなる、真っ直ぐで強い、初心のころのエネルギー。それを、強く感じた。

この作品はもう、今の私には描けないな――と、ふと、思った。

アイディアというのは水物で、取り逃がしてしまえばそれは簡単に流れていってしまう。そして、月日を重ねるごとに自分の経験値や見える景色も変わるから、作風やキャラに乗せたい価値観も変化していく。(事実、ここ一年で作風がかなり変わった)

だから、同じ作品はもう二度と、書けない。同じキャラを出して、同じ展開を作っていったとしても、それはきっと違う作品になってしまうだろう。

そう考えると、ここ一年ほどで作った小説たちもそうだ。どれもこれも、今の私には絶対にかけないものたちばかり。

そう、いつも『そのときの私にしか描けないもの』を、わたしは紡いでいる。今、書きかけの小説もそう。きっと、三ヶ月後には、もう、書けない。

そう考えると、今この瞬間にしか出てこないアイディアやキャラクターや、ストーリー、それらは全てかけがけのないものなのだと、実感するほか、ない。

だからこそ、今この瞬間を――なにより、大切にしたい。だって、今を逃したらもう二度と描けない小説が、目の前で作られているのだから。

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